日本を代表するレーシングコンストラクター『モリワキ』が、2014年に創立40周年を迎えた。長きに渡り日本のレース界を支え、数多くの高性能パーツを世に送り出し、カスタムシーンを盛り上げてきた同社が、アニバーサリーイヤーに合わせて1台のカスタムマシンを製作した。それが、ホンダCB1100をベースにカフェレーサーイメージにモディファイした『CB1100 Cafe』だ。
CB1100 Cafeの実車をイベントなどで目にした人も多いだろう。モリワキと言えば、日本を代表するレーシングコンストラクター。そのモリワキがテイスト重視のカスタムマシンを発表したことで、大きな話題となったことは記憶に新しい。だが、注目を集めた理由は意外性だけではなく、CB1100 Cafe自体の完成度の高さにあったと言えるだろう。一流は、何をやっても一流。そういうことなのだ。
そのCB1100 Cafeに装着されていたのが、ショートタイプの4本出しマフラーだ。往年のレーシングマシンを思わせるフォルムが実に魅力的で、こんなマフラーが欲しい! というユーザーの声がモリワキに殺到した。
「弊社としても、CB1100 Cafeのマフラーを製品化したいと考えていましたし、お客様からのご要望は心強かったですね」
そう語るのは、モリワキの妻鹿 輝樹(めが てるき)さん。同社でマフラー開発を統括するエンジニアだ。妻鹿さんは、こう続ける。

モリワキ40周年を記念して製作されたコンセプトカスタムCB1100 Cafe。モリワキの若手スタッフが中心となって製作されたもの。レースだけではなく、広く深くバイクを知るモリワキならではの作。新作マフラーのRC Fourは、このマシンから始まった。
「CB1100 Cafeのマフラーをそのまま市販するのは、さすがに難しい。主に問題となるのが排気音量と走りのパフォーマンスです。ですが、特徴であるショートフォルムは絶対に崩したくなかった。ファッションだけのパーツではなく、マフラーとしてしっかりと機能させること。そこを両立させるために、開発には時間がかかりました」
開発は2014年の11月にスタート。完成までには1年以上の時間が費やされたという。理想のデザイン、求めるパフォーマンスを実現するまでには、数々の障害が立ち塞がった。
「例えば排気音です。4本のマフラーを独立させたままでは、単気筒エンジン4台分が回っているような音になってしまうんです。4本出しマフラー特有の、ドロドロッとした迫力あるサウンドにはなりません。バイパスパイプの位置をいくつも試して、4本出しらしいサウンドを追求しました。
パワー特性に関しては、最初からピークパワーは狙っていません。全体的にパワーの上乗せはしていますが、重視したのは常用域。高速道路で加速したい時、シフトダウンしなくてもスロットル操作だけで十分な加速力を得られるはずです。ラクに、気持ち良く走れる。どんなシチュエーションでも、余裕を持って走ることが出来るマフラーです」
また、ストリート用マフラーとしては、法規制に適合させることも大切。その点でも開発は困難を極めたという。ネックとなったのが排気ガス規制だ。現代のマフラーは触媒を内蔵し、排気ガスを浄化しているものが一般的。だが、触媒が機能するためには、ある程度の排気温度が必要で、4本出しでは排気の経路が4本に分散するため、排気温度が上がり難い。構造上不利な要素があったのだが、それもモリワキならではの高い技術力で克服している。
「始めはサイレンサーの近くに触媒を配置したのですが、それだと法規制に適合するまで排気ガスが浄化されず、性能も出ませんでした。いろいろと試した結果、ようやく満足いく性能が得られました。CB1100は、2013年モデルまでと2014年モデル以降で型式認定が異なります。アフターマフラーも政府認証を取得するため、別々に試験を受けて独自に認証を得なければなりません。苦労して開発した甲斐があって、マフラー本体は全く同じものですが、両方の型式で政府認証を取得出来ました」
こうした苦労を経ていよいよリリースが決定したのが、CB1100用のRC Fourだ。ノスタルジックなスタイリングに込められたモリワキの最新テクノロジー。歴史や実績に胡座をかくことなく、常に進歩を求めるモリワキ。その姿勢が結実したとも言える新しいコンセプトのマフラー、それがRC Fourなのだ。

妻鹿 輝樹(めが てるき)さん
1969年生まれ。4輪の部品メーカーでの開発者として活躍た後、2000年にモリワキに入社。レース用、ストリート用を問わずマフラー開発を担当。現在は開発部責任者という立場から、モリワキ製パーツの開発を統括する。