取材協力/モリワキエンジニアリング  取材・文/淺倉 恵介  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2016年8月10日

日本を代表するレーシングコンストラクターにして、高性能アフターパーツメーカーとして知らない者のない絶対的存在と言えるモリワキエンジニアリング。モリワキは、なぜこれほどまでに熱狂的にライダーから支持されるのか? その理由は、やはり常にレースの最前線で磨き上げてきた技術力にこそあるのだろう。モリワキの歴史と現在に触れ、その魅力に迫る。

FEATURE

戦いの舞台は世界
モリワキの実力はワールドクラスだ

人は誰しも“本物”を求めるもの。それが、愛するバイクに関わることであれば尚更だ。あなたがバイクのカスタマイズやチューニングに興味があるのなら、モリワキエンジニアリングの名前を覚えておいて損はない。モリワキこそが、数少ない“本物”そのものであるからだ。

モリワキが産声をあげたのは1973年。創業40年を超える、老舗中の老舗だ。そして誕生してから現在に至るまで、常にシーンのトップを走り続けてきた。こんなメーカーはそうそうない。開業当初からマシンのチューニングやパーツ開発を手がけ、カワサキZをベースにしたオリジナルフレームのレーシングマシン『モリワキ・モンスター』の存在は、現在に至るまで多くの人の心を惹きつけてやまない。

1981年の鈴鹿8耐を走ったモリワキ・モンスター。他に先駆け、オリジナル開発のアルミフレームを採用していた。後のWGP500クラスチャンピオン、ワイン・ガードナーのライディングで、2分14秒76という当時としては驚異的としか言いようのないタイムを叩き出してポールポジションを獲得。当然コースレコードだった。

国内外のレースで、数々の成果を打ち立ててきたモリワキ。とくに、近年は海外での活躍が目覚ましい。中でもその存在を忘れてはならないのが、バイクレースの世界最高峰であるMotoGPへの挑戦だろう。2003年から2005年の3年間、モリワキ製のオリジナルシャシーに、ホンダから供給されたV5エンジンを搭載したMD211VFでMotoGPクラスにエントリー。スポット参戦ではあったが、好成績を収めている。

MotoGPは、バイクメーカーが威信をかけて作り上げたワークスマシン同士が競い合う世界。そこに、モリワキのようなコンストラクターが割って入ること自体が異例。そもそもホンダが、機密のかたまりであるMotoGPマシン用エンジンを、第三者であるモリワキに供給したこと自体が驚くべき事態なのだ。それほどまでに、モリワキの実力が高く評価されているということなのだ。

ホンダからMotoGPマシンRC211Vのエンジン供給を受け、モリワキ製オリジナルフレームに搭載したMD211VF。写真のライダーは宇川徹選手。宇川選手はMD211VFの開発ライダーを務め、MotoGPにスポット参戦も果たした。

その後のMotoGPでは、エンジンがワンメイクでオリジナルフレームのマシンで争われるMoto2クラスに、シャシーコンストラクターとして参戦。そのマシン『MD600』で、同クラスの初代チャンピオンを獲得している。MD600のプロジェクトは戦いの舞台を日本に移し、現在も開発が継続中。2014年、2015年の2年連続で全日本J-GP2クラスのチャンピオンを獲得している。2016年には最速クラスの全日本JSB1000に復帰。それも2017年の鈴鹿8耐参戦を見越してのものというから、実に楽しみだ。

Moto2クラスで高い戦績を誇ったオリジナルマシンMD600を引っさげ、全日本復帰を果たしたモリワキ。ライダーは世界で活躍した高橋裕紀選手を起用し、J-GP2クラスで2014年、2015年の2年連続チャンピオンを獲得している。2016年シーズンからはJSB1000クラスを戦っているモリワキは、2017年の鈴鹿8耐で上位進出を目標としている。

駆け足でモリワキのレースの歴史を振り返ってみたが、そこには常にオリジナルシャシーの存在があることがわかる。いまでは当たり前のアルミフレームを、バイクメーカーに先駆けてレースの世界に持ち込んだのもモリワキ。モリワキの車体設計と製造技術は世界有数のもの。ホンダがMotoGPマシンをベースにして公道走行を可能にしたマシンとして、世界中で大きな話題を呼んだRC213V-Sのフレーム生産は、モリワキが担当しているという事実も、その実力の一端を証明していると言えるだろう。

ここまでで、モリワキは常にレースと共にあったことが解るだろう。だが、一般人とは縁遠い「レース屋」ではなく、ストリート用のカスタムパーツメーカーとしてもトップブランドの地位を築き上げている。バイク乗りであれば、レースでの実績は知らなくても、モリワキエンジニアリングのパーツの存在は知っているはずだ。

モリワキのパーツは、マフラーやステップ、車体関連のパーツなど多岐に渡るが、その全てに共通するのが、過剰品質とも言うべき品質の高さ。耐久性を重視し、これでもか!? と言いたくなるほど強度が持たされたパーツ達。ストリートでの使用を前提に、速さだけでなく扱いやすさも考慮しての設計には唸らされるばかりだ。

ストリート用パーツには、ストリートユースに特化した作り込みが与えられている。だが、その基礎となっているレース直系のテクノロジーが垣間見える瞬間がある。世界最高峰のレースで鍛え上げてきた技術を、ストリートパーツにもフィードバック。それこそが、モリワキの真骨頂だと言えるだろう。

PICKUP PRODUCTS

レーシングテクノロジーが注ぎ込まれた
本物の高性能ストリートパーツ

レースのイメージが強いモリワキだが、ストリート用カスタムパーツは、ストリートでの使い勝手をしっかりと考慮して作られている。例えばマフラーでは、ピークパワーだけを追いかけるようなことはなく、扱いやすくパワーを引き出しやすい特性が基本。その上で、スロットルを開ける楽しさや、心地よいサウンドまで計算に入れて設計される。もちろん、JMCA認定の政府認証マフラーで、公道での使用に完全対応。

転倒時にマシンを守るフレームスライダーは、現在では一般的なパーツとなっているが、モリワキの発明品と言われている。万が一の転倒時に、エンジンが致命的な損傷を受けないようにと考え出されたものだが、実は下手な設計では逆にマシンのダメージを大きくしてしまうこともある。モリワキでは樹脂製のスライダー部とアルミ削り出し製のベースプレート、純正品と同等の強度を持つマウントボルトを使用。マシンへの衝撃を逃す最適な形、絶妙な剛性と強度を与えられているのだ。このように、モリワキ製パーツは全てが理詰めで作り込まれている。

マフラーは創業当初からモリワキの看板パーツ。写真はモリワキ製マフラーのトップモデル『REDLINE』シリーズのCB1300SF対応品。徹底的に磨き込まれた手曲げチタンエキゾーストパイプに、モリワキの最新デザインMXサイレンサーを組み合わせる。ジョイントは全て削り出しパーツという豪華さだ。

削り出し製品のパフォーマンスの高さも、他の追従を許さない。その代表的な存在であるステップは、節度ある操作感と剛性の高さから、多くのユーザーから絶賛を浴びている逸品。写真はカワサキの誇る驚速スポーツバイクH2用のステップ。精緻な肉抜き、造形の巧みさにはため息が出る。まるで工芸品のようだ。

数々の先進的技術を世に送り出してきた、モリワキの発明品のひとつとして知られているスキッドパッド。転倒時にマシンのダメージを軽減するための装備だが、単純にスライダーを装着しても逆にダメージが増加することもある。モリワキのスキッドパッドは構造を熟慮し、最大の効果を生むように設計される。

優れた削り出し加工技術を活かして製作されたパーツのひとつであるオイルフィラーキャップ。デザイン性の高さは見ての通り。愛車をシックに、ハイテックにドレスアップしてくれる。モリワキにはこうした手の届きやすい価格の商品もラインナップされており、手軽に世界最高レベルの技術に触れることが出来る。価格は4,500円(税抜き)から。

モリワキは常にレースと共にあるメーカー。このマシンはモリワキが市販した、日本独自のカテゴリー、GP-MONO専用レーサー『MD250』。専用レーサーを安価に供給することで、GP-MONOクラスの隆盛に大きく貢献した。モリワキは自らのレース活動だけでなく、レース界の発展にも寄与してきたのだ。

モリワキフリークなら見逃せない、待望のファンアイテムが新たに登場。それが『モリワキ・チタンタンブラー』だ。得意とするチタン加工技術をフルに活かして作られたもので、虹色に輝くチタンならではの発色が美しい。右の「大」は1万2,000円、左の「小」は8,000円だ(税抜き)。

モリワキ・チタンタンブラーには、限定品の鈴鹿バージョンも存在する。鈴鹿8耐とのコラボレーションモデルで、限定品だけのロゴマークが刻まれている。サイズは「中」で、価格は税抜き1万円。2016年の鈴鹿8耐から1年間の限定販売。購入は鈴鹿サーキットで。

モリワキが発明し、今も人気が高いモナカサイレンサー。そのサイレンサーをモチーフに、実際にお菓子にしてしまったのが『モリワキ最中』で、モリワキで販売中。ジョークアイテムとして人気の品だが、性能追求には手抜きのないモリワキだけに、食味の面でも妥協は許されない。美味しいと評判なのだ。

BRAND INFORMATION

株式会社
モリワキエンジニアリング
住所/三重県鈴鹿市住吉町6656-5
電話/059-370-0090(営業)
FAX/059-370-0152(営業)
営業時間/09:00-18:00
定休日/土曜、日曜
1973年創業。マフラーやステップといったパーツだけでなく、エンジンチューニングパーツやオリジナルフレームまでラインナップする総合パーツメーカー。レース活動にも積極的で、2014年、2015年は全日本ロードレース選手権J-GP2クラスで2年連続のチャンピオンを獲得。代表の森脇護氏は名伯楽として知られ、世界GP500ccクラスチャンピオンのワイン・ガードナーをはじめ、多くの優秀なライダーを育ててきた。