モリワキエンジニアリングが作るZ1000/Ninja1000用スリップオンツインサイレンサー
取材協力/モリワキエンジニアリング  取材・文/淺倉 恵介  写真/木村 圭吾  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2015年5月22日

性能の優秀さはもちろん、優れた品質とデザイン性の高さで、多くのライダーから絶大な支持を得ているモリワキから、人気のハイパーネイキッド、カワサキ Z1000/Ninja1000用のスリップオンツインサイレンサーが登場した。日本のレース界を代表する技術者集団が生み出した至高のマフラー、その開発にまつわるエピソードを聞き、物作りのフィロソフィーに触れる。

INTERVIEW

古豪にして今も最先端を行く
モリワキの高性能スリップオンマフラー

国内2輪レースの創世記から活躍し、現在もトップコンストラクターとしてその名を轟かせるモリワキエンジニアリング。そのモリワキが新たにラインナップに加えたZ1000/Ninja1000用のスリップオンマフラーは、如何にして生み出されたのか? 開発部の責任者であるエンジニア妻鹿(めが)さんに、開発に関わるエピソードを訊ねた。

 

「Z1000とNinja1000は、非常に完成度の高いバイクだと思います。兄弟車でありながら、ちゃんとキャラクターが違うところもいい。マフラーを開発するにあたり、ノーマルの状態を様々な面から解析してみたのですが、パワー特性についても修正すべきネガティブな部分は見当たりませんでした。下からしっかりとトルクが出ていますし、高回転まで気持ちよく回りきります。そこで、全域でパワーとトルクを上乗せする方向で開発コンセプトが決まりました。

 

時間をかけた部分はZ1000とNinja1000に似合うスタイリングの作り込み、そして排気音の音色ですね。簡単とは言いませんが、パワーとトルクを上げることに問題はありませんでしたから」

 

ここで、聞き逃してはいけないのが“パワーとトルクを上げることに問題はなかった”というコメント。国内バイクメーカーの技術力は非常に高い。純正マフラー自体かなりの高性能パーツであり、その性能を超えるのは至難の技だ。しかも、日本のマフラーに関する法規制は世界一厳しいと言われ、アフターマフラーの開発は実に難易度が高いのだ。それを、アッサリとやっけのけるモリワキエンジニアリングの技術力、恐るべしである。

 

妻鹿 輝樹(めが てるき)さん

1969年生まれ。4輪の部品メーカーで開発業務に携わった後、好きなバイクに関わる仕事を志し2000年にモリワキエンジニアリング入社。以来、主にマフラーの開発に従事。現在は同社の開発部責任者として、レース専用部品から市販カスタムパーツまで、モリワキパーツの開発を統括する立場にある。

ホンダでのレース活動のイメージが強いモリワキだが、そのルーツはカワサキにある。モリワキの名を世界に知らしめたのは1981年の鈴鹿8耐。カワサキZ1000のエンジンを、独自開発のアルミフレームに搭載したモリワキ・モンスターで参戦。ワインガードナーが駆り、脅威のラップタイムでポールポジションを獲得。

「モリワキには、マフラーで出力を向上させるノウハウがありますから。ですが、パワーが出たからと言って、楽しく走れるマフラーになるとは限りません。開発時にはシャシーダイナモで、データも取りますが、最後は実際に走ってみて人間が判断します。このバイクに関しては、自分自身かなり走り込みました」

 

また、排気音の音色は本当に難しいものだと妻鹿さんは語る。

 

「排気音は、マフラー交換の重要な要素ですよね。ですから、音質にはこだわりました。テーマは“ビッグバイクらしい太い音”です。金属的な高音は耳障りですから、まろやかで迫力ある音質を目指しました。ですが、開発には手間取りましたね。近接排気音量と加速騒音は、法規制値内に収めなければいけませんから、その兼ね合いが難しい。苦労した分、満足いくサウンドに仕上がったと考えています。」

 

また、このマフラーの魅力は、パワーやサウンドだけではない。工業製品でありながら、そのディティールは工芸品を思わせる輝きを放つ。精緻な作り込みには圧倒されるばかりだ。

 

「せっかく御購入いただいたマフラーですから、長く使っていただきたい。そのためには、耐久性は重要視している要素のひとつです。たとえば、このサイレンサーはシェルはチタンですが、前後のピースやパンチングにはステンレスを採用しています。これも、耐久性を考えてのことです」

 

性能、ルックス、サウンド、全てに妥協を許さないモリワキの物造りの哲学が、このマフラーには注ぎ込まれている。インタビューを終えて、妻鹿さんから「マフラーの音を聴いてみませんか?」との申し出があった。アイドリングではビッグバイクらしさ満点の、低く太いサウンドが実に気持ち良く、スロットルを煽るとツブの揃った上質で迫力あるエキゾーストノートが響き渡る。バイクを停めたままであったのが、なんとも惜しい。実際に走って自分に届く音は、さぞや甘美なものだろう。さすがモリワキ、そう思わせるマフラーだ。

奥のマシンはCBR600RRベースのモリワキ製レーシングマシン。ブルーとイエローのカラーリングは、いつの時代もライダーの憧れだ。2014年は全日本ロードレース選手権J-GP2クラスに、オリジナルフレームマシンMD600で参戦。高橋裕紀選手のライディングでチャンピオンを獲得している。

PICKUP PRODUCTS

これがモリワキのプライド
こだわり抜いた作り込みに驚かされる

モリワキエンジニアリングの製品は、性能やデザインへのこだわりもさることながら、安全性への配慮が並外れている。構造を考え抜き、素材を吟味し尽くしたマフラーは過剰品質と言って差し支えないものだ。なぜそこまでするのか? それはユーザーに対する責任感と物造りに対するポリシー、モリワキブランドへのプライドが成せる業なのだろう。Z1000/Ninja1000用マフラーのディティールから、その一端に触れてみて欲しい。

※表示はすべて税込価格です(2015年4月現在)

MXR WT Twin S/O 価格15万円(税抜)
仕様 ■重量=5.0kg ■音量=91db(Ninja1000)/92db(Z1000) ■サイレンサー=チタン製 ■テールパイプ=チタン製 ■装着状態でドレンボルト、オイルフィルターの交換が可能 ■政府認証マフラー(東南アジア仕様2014年モデルに対応)

新開発のMXRサイレンサーを採用。ノーマルに比べ、大幅に軽量化を実現。ショートタイプで、マスの集中化にも貢献する。

MXRサイレンサーだけの新装備であるテールピース。Ninja1000/Z1000のスタイリングに合わせて新たに製作されたもので、実にスタイリッシュ。

MXRサイレンサーの特徴のひとつである、異形三角形の断面形状。バンク角を犠牲にすることなく、十分なサイレンサー容量を確保している。

サイレンサー取り付けステーは固定式。強度の高い肉厚ステンレス製で耐久性には十分な配慮がなされており、装着も簡単。

JMCA認定のプレートが取り付けられる、安心の政府認証マフラー。付属する排気ガス証明書は、車検の時に必要なので大切に保管すること。

これが構成パーツの全て。取り付けに必要なガスケットや液体ガスケット、スプリング装着用の工具までパッキングされた親切設計。丁寧な取扱説明書も付属する。

シックなブラックサイレンサー仕様の『MXR BP Slip-on Twin』もラインナップ。サイレンサーの素材がステンレス製で重量が5.7kgということ以外スペックに変わりはない。価格も同じ15万円(税抜)。

万が一の転倒時に、車体のダメージを軽減するZ1000用のフレームスライダー『SKID PAD for Z1000』もラインナップ。スライダー部のカラーが選択可能で、ブラックとホワイトは9,800円(税抜)、蓄光タイプのスターライトは1万2,000円(税抜)。取り付けは東南アジア仕様2014年モデルで確認済。

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BRAND INFORMATION

株式会社 モリワキエンジニアリング

住所/三重県鈴鹿市住吉町6656-5
電話/059-370-0090(代表)
FAX/059-370-0152(代表)
営業時間/09:00-18:00
定休日/土曜、日曜

1973年創業。マフラーやステップといったパーツだけでなく、エンジンチューニングパーツやオリジナルフレームまでラインナップする総合パーツメーカー。代表を務める森脇護氏は、チューナーとしての高い評価はもちろん、ライダーを見る目も確かで、世界GP500ccクラスチャンピオン、ワイン・ガードナーをはじめ多くの名ライダーを見い出している。