Report:浅川邦夫 Photo&Text:石橋知也 記事提供:ROADRIDER編集部

掲載日/2014年4月24日


ミシュラン最新作はスポーツツーリングタイヤのパイロットロード4。
ハンドリングも乗り心地もウェット性も、すべてが好バランスで、さすがフランスのエスプリが効いた秀作だ。
Impression

サイプは排水性だけでなく乗りやすさも生む

「まず、ハンドリングが軽快で、それでいて接地感がしっかりあるというのが第一印象。タイヤの自重も軽いしね。想像していたよりもずっといいね。独特のトレッドパターンも、この接地感の良さや温まりの早さに効いているんじゃないかな」

 

これが、浅川邦夫さんが自分で組んで初試走した直後のコメントだ。ミシュラン独特の細溝サイプが目を惹くトレッドパターンが、ウェット性だけでなく、乗りやすさも生んでいるようだ。そして試乗が進むと、その印象はさらに強くなった。

 

「安全運転中央研究所内のテストコース(ワインディング・ウェット。オーバル)や一般路・高速道路など、様々な路面・速度域でテストしたが、どんな状況でも、しなやかさが失われない。接地感はハイグリップ系とは違う感じだけど把握しやすい。直進ブレーキング時のフロントの安定感が高い。そこから寝かせていくときも素直で、これなら誰もが違和感なしに扱えるんじゃないかな」

 

フロントセンターの接地面積を大きく取っている、設計通りのフィーリングだ。サイプの大きな狙いである排水性の高さは、ウェット路面でのブレーキングで証明された。テストコースで指定されたタウンスピードからのフルブレーキングでは、「これぐらいならドライと変わらないよ。接地感も変わらずに普通に止まれてしまう。雨には強いよ」

 

中間バンクで使う部分も排水性の高い設計で、これならツーリング中の雨でも安心して走れるだろう。サイプを除けば前作のロード3よりグルーブが短く、その分接地面は広くトレッド剛性が高い。また、ケーシング剛性も高い割に、しなやかさもあるというバランスの良さも特長。

 

「高速域での直進安定性も十分。基本的にどんな速度域でも安定感としなやかさがあって、それは妙に変化しないから安心だよね。乗り心地が上質なのもツーリングや街乗りでは嬉しいね。ギャップ吸収性が良い」

 

スポーツツーリングタイヤというからには、ワインディングロードでの楽しさはどうなのだろう?

 

「このタイヤの特性を生かすには、ブレーキングも加速も、丁寧に行うことだよ。そうすれば十分に楽しめるし、安定感もグリップ感も持続する。旋回性は自然なもので、この特性は交差点でも、スポーツ的なコーナリングでも変わらない。もちろんハイグリップ系ではないから、さすがにハヤブサでフルバンク付近からフル加速するような、サーキット的走りをすると、トレッドが動き過ぎているような挙動が出るけど、一般路ではそういうコトはしないから」

 

ロード4に限ったことではないが、あくまで公道用のスポーツツーリングタイヤであることを忘れずに、だ。何よりこのカテゴリーのタイヤは、単なるグリップ力とか旋回性の高さだけではなく、ウェット性、乗り心地、耐摩耗性、扱いやすさなどを含めたトータルバランスが重要だ。

 

「そういう意味ではバランスが良いタイヤ。たぶんミドルクラスにも向くんじゃないかな。それにハヤブサよりフレーム剛性が低いネイキッドなどにもマッチすると思う」

 

このテスト後に空気圧をいろいろ試したが、軽量化してあるR/Rハヤブサでは、冷間時前後2.5(kg/cm3)がいいみたいだ。リヤはOEM標準値まで上げてしまうと、温間でちょっとハネっぽくなって、独特のしなやかさが落ちる感じ。最適値は車重によっても変わるが、大型車は標準値と前後2.5を目安に調整すればいい(内圧依存度は低いので難しくはない)。そうすれば誰にでも、この上質感が味わえるはずだ。

Impressioner

浅川 邦夫

今回もタイヤの装着から試乗まで担当。試乗会では丁寧にといいながら、やっぱり豪快で速かった。「ミシュランらしいタイヤで、その力の入れ方が嬉しかったよ。昔、レースでお世話になったメーカーだからね」

幅広い車種に対応する全天候万能型!

試乗はR/Rファクトリー連載中のBUSAに標準タイプのPILOTROAD4、F:120/70ZR17、R:190/50ZR17(リム幅はF:3.50、R:6.00)で行った。GTは大型ツアラー向き、ほかにアドベンシャーモデル向けオンロード用として、PILOT ROAD4 TRAILもある。前作ロード3からは耐摩耗性は20%向上。ミドルクラスとのマッチングも良い。ウェット性の高さはグルーブだけでなく、コンパウンドの良さも要因だろう

※PILOT ROAD4 GTは2AT テクノロジーでツーリングバッグに荷物を満載するGTクラスのタンデムツーリングに対応するモデル

 

ミシュランの最新テクノロジーを凝縮

NEWトレッドはバンク角によって接地面積を最適化したバリアブル・グルービングレシオだ。センターはフロントがブレーキング時の安定性・グリップを高めるために、リヤは加速/運動性能、耐摩耗性を主眼に接地面積を大きく取る。中間バンク付近はウェット性重視で溝が多め、エッジ部はグリップ重視でスリックライクという具合だ。カーカスにはレーヨンの剛性とナイロンの耐久性を兼ね備えた高弾性低収縮ポリエステル(HMLS)を採用。ベルトは前後アラミド0°

大型ツアラー向けGTモデルのリヤに採用したのが2AT(デュアル・アングル・テクノロジー)。通常のラジアルカーカスにバイアス構造の良さを加味した特殊な構造を採り、ロード3から15%も剛性アップしながら上質な乗り心地を実現した。2カーカス+1ベルトは標準モデルと同じ


前後とも2CT(2コンパウンド)を採用。新開発のシリカ配合コンパウンドで適応路面温度は-5~+45℃と広い。サイプは従来からのXST(Xサイプ・テクノロジー)をリヤに、新開発のXST+(プラス)をフロントに採用。XST+はサイプと貯水ホールを一体化してウェット性を高めたもので、さらにサイプのエッジを面取りして、摩耗が進んでもハンドリング特性が変化しづらい構造なのだ

協力:日本ミシュランタイヤ
〒163-1073
東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー13F
電話/0276-25-4411(お客様相談室)