
塗装は素材を保護するために不可欠であり、その方法は多岐に及ぶ。パウダーコート塗装は、従来ガードレールや道路標識に施された方法で、塗装面が強いことからバイクのフレーム等にも普及した。しかし不満な点は、塗装面が厚く、耐薬品性も弱いという盲点があったのだ。
耐衝撃性が強いことで、普及しているパウダーコート。元々はブラックやホワイト等の単色のみが定番で、フレームやホイールの塗装に適していると言われている。しかし最大の弱点は、塗装面が厚く繊細な仕上がりに対応できないこと。つまり、ビレットパーツなどの塗装には不向きという塗装方法だったのだ。
ホイールやフレーム等は走行中の飛び石などに直接さらされる部分なので、ボディーを仕上げるようなウレタン塗装やラッカー塗装などはできない。アルミ素材の場合は、アルマイト処理という方法もあるが、素材によってムラが生じるという難点があった。
そんなスイングアーム製作メーカーからの開発依頼もあり、パウダーコートやアルマイトでは対応出来ないパーツへ施工する事を前提に開発したのがメタルコーティングランナーのRXコートだ。代表の中尾信也さんは福岡県のこの場所で創業してから10年。焼き付け塗装のみを引き受ける塗装職人であり技術者なのだ。
「アルミのビレットパーツは、その表面のエッジが効いた仕上がりが美しいものですが、従来のパウダーコートだと、素材の良さを生かした塗装はできませんでした。耐薬品性などにも問題がありました。パウダーコートは基本的にポリエステル樹脂系塗料なので、パーツクリーナー等の溶剤には弱いです。またアルマイトですと耐熱性や紫外線による色抜けがある為、エンジンパーツにも向かない。そのネガの部分を克服したのが新開発のRXコートなのです」
中尾さんは、少年時代からのバイクフリークで、当初はメカニックとして大型バイクショップのスタッフとして働いていた。その後、ヨーロッパ製のクルマを扱う板金塗装会社に転職。そこで、塗装のノウハウを学び、日本車とヨーロッパ車では塗料の概念が違うことを実感したという。在職中に国内外の塗料のほとんどを扱う機会にも恵まれた。そして10年前に現在のファクトリーを構えることとなった。
実際の塗装現場は非公開のため紹介は出来ないが、塗装が終わったアルミスイングアームやホイール等を見ると、確かにその仕上がりはパウダーコートとはまったく違うものである。最も違いが分かるのは、素材を削った時に表現された加工部分の仕上がりだ。塗装面がとても薄く繊細なディテールをスポイルすることのないフィニッシュとなっている。
「オートバイパーツのアルミ製品への施工を前提としていますので紫外線や溶剤にも強いです、バイクを使用中にもしキズが入ったとしても、そこから連鎖剥離を起こしません。スイングアームの先端にあるチェーン引きブロックの箇所にも塗装できます。そして様々な色を選べることも特徴ですね。艶の調整から、塗色はソリッドカラーやメタリック系、キャンディー系も可能です。色を調合することもできるので、表現に幅が広がります」
コーティング塗装の分野で、新たに加わったRXコートという選択。より素材の質感を表現できるタイプSと、パウダーコートと同等の膜厚があるタイプGをラインナップする。今後は足周りパーツの定番塗装となっていくのかもしれない。
ステンレスに対しても強力に密着出来るゆえ、ボルトのヘッドにも塗装を施すことが可能である。工具をかけることが前提のボルトヘッドに塗装することなど、従来では考えられなかったものだ。その他、素材に適合した様々な塗装を組み合わせて、カスタムを完成させる。