取材協力/KEINZ  取材・撮影・文/モリヤン  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
    掲載日/2013年9月18日
自分のバイクをカスタマイズする上で大切なのは、パーツの質感だ
性能を追求する目的と、その結果向上する質感は、正比例の関係である。

INTERVIEW

最高のカスタムバイクは
最高のパーツで構成されるべきだ

KEINZの代表である梅津幸治さんは、自身をデザイナーと名乗る。それは単純にパーツデザインという意味合いだけではなく、バイクパフォーマンスの一役を担うという広い意味での肩書きだ。バイクという乗り物は、ただ数字で表されるデータでは表現しきれない体感性能やニュアンスというものが豊富にあって、そのすべてが乗り味に直結している。カラダで感じる乗り物。それだけに、作り出すパーツのクオリティに大きなこだわりがあるのだという。

 

「元々は普通のバイク好きな少年ですよ。乗ることもイジることも大好きなバイク野郎です。それで素直にバイクショップ務めを始めたんだけど、 その頃、普通のショップって “バイクを売る” ことが商売で、“バイクを直す” ということにはあまり積極的ではなかったと思います。そこに深い違和感を持ちました。バイク大好き少年としては。」

 

ショップ務めは3年で辞めて単身オーストラリアに渡る。ワーキングホリデーの制度を利用して日本人の居ない場所で仕事を探すと、シドニーでバイクショップがメカニックを募集していた。そこでの半年は、梅津さんの人生観を決定付ける濃厚な時間となったようだ。

 

「彼らは徹底的に直すんですよ。エンジンの分解整備はあたりまえ。大切なバイクは買い換えないで長く使う。そしてシェイプアップやチューニングは日常的な仕事でした。僕はハンマーで頭を殴られたような衝撃を受けて、一心不乱に働きました。そして確信したんです。きっと日本にも、こんなショップを望んでいるライダーは居るはずだ、と。」

 

帰国した梅津さんは、KEINZ を立ち上げた。コンセプトは “1台のバイクを一生乗り続けるためのサービス&チューンナップ” というもの。時代はおりしもバイクブームでスポーツバイクが溢れていたが、どれも乗りっぱなしで本調子のものが少なく、梅津さんのメニューはユーザーの心を捉えた。しかし、チューニングやセットアップをする上で必要になる細かいパーツは自分で作るしかない時代。量産車に高級パーツを取り付けたり、性能や効率アップのためのワンオフパーツの製作で、てんてこ舞いの日々が続いたという。

 

「バイクユーザーと直接やりとりしているよりも、自分で考えたスペシャルパーツを徹底的に洗練させて送り出すという方向にスイッチしました。たぶん僕の性分ですね。本当にやりたいことは、バイク屋さんではなく、クオリティの高いパーツを制作することだったんです。それが、ユーザーが一生乗れるバイクを製作する上で大切なことだと思ってね。」

 

現在のファクトリーには、大型の NC 旋盤をはじめ大きな工作機械が数多くセッティングされている。しかし、最後の仕上げは人間の手作業だ。そのノウハウは簡単には語れないと梅津さんは言う。フルオートメーションかと思う大型機械でさえ、その日の気温や湿度でも素材の変化があり、金属の性質や機械のクセを細かく把握していないと、本当の意味での良質なパーツは生み出すことができないのだ。それは長年こだわりのパーツ製作を続けている KEINZ だからこその厳しいチェックポイントであり、生みだされるパーツには独特の個性が表現されているのである。それは言わば「男の作る料理」と梅津さんは表現する。素材や加工方法には徹底的なノウハウをつぎ込み、仕上げの手作業でも腕を振るう。まさに男の料理方法で仕上がったパーツは、珠玉の輝きを放つことになるのだ。

 

長く使っても輝きを失わない良質な性能。KEINZ が付き合うのはユーザーだけではなく、カスタムを得意とするバイクショップである。その高い品質は多くのリピーターを生み、その結果、ユーザーは “一生乗り続けられるバイク” を手に入れることになるのである。

PICK-UP PRODUCTS

大量生産品にはない
宝石のような機能美がここにある

KEINZの代表的なパーツと言えば、キャブレターのエアーファンネルであろう。『パワーファンネル』 と命名されたアルミ削り出しのパーツは、長年の経験から生み出された複合曲面を持つ独特のファンネル形状であり、そのフィニッシュワークは「美しい」の一言に尽きるものだ。長さは様々に取り揃えられ、高回転型エンジン特性に最適なショートから、低速トルク重視のロングまで、数多くラインナップされている。主にカワサキのゼファー750やゼファー1100、ZRX1100、ZRX1200、それに Z1 や Z2 といった車種用を多数ラインナップしている。

 

その他にもブレーキのキャリパーブラケットやトルクロッド、ヘッドライトステー等、リクエストの多い機能パーツを自社工場で数多く生産してい る。“100%メイドインジャパン”というこだわりも強い。

 

代表的なラインナップ。どれもがアルミ合金から削り出したビレッドパーツである。その他、カラーやスペーサーなどのワンオフ製作も引き受けるなど、細かい注文にも答える柔軟性がKEINZの魅力だ。

アルミ合金CP2000という素材から削り出され、アルマイト処理を施したソリッドメタルアルマイトファンネル。FCR用35mm(手前)と50mm(奥)。

CP2000は耐腐食性能に優れ、内部応力が少ないために、ファンネルとして微妙な形状の加工に向いているアルミ合金である。ソリッドメタルは少し青みがかった外観が特徴だ。

35mmのハーフポリッシュ仕上げのパワーファンネル。素材を磨き込んだ繊細な仕上げが特徴で、人気商品である。FCR用φ28~41用をラインナップしている。

ビレッドパーツであること。その上に徹底的な磨き込みを行うKEINZならではの高級な仕上げは、腐食に強い合金の素材で長く輝きを維持できる。

強度と高級な質感にこだわったアルミ合金製のヘッドライトブラケット。写真はブラックアルマイトの140mm。ブラケットの厚みは8mmと、剛性の高さは充分のパーツ。

同じブラケットでハーフポリッシュ仕上げ。素材のアルミ合金はA2017。マシニング加工で高級な仕上がりだ。正立&倒立フォーク用として、数多くのサイズを揃える。

仕上げが美しく強度も充分なブラケットは、ステンレスのボルト4本でフォークに固定される。ウインカー取り付け用のカラーも、ラインナップされている。

ブレンボ用のリアブレーキキャリパーブラケット。写真はソリッドシルバーのアルマイト加工が施されたもの。素材は高強度2017アルミ合金で、マシニング製作されたパーツだ。

10こちらはソリッドブラックアルマイトを施されたパーツ。対応ディスク径は9種類。アクスルシャフトは4サイズのラインナップ。

11アップで見ると、その加工精度と仕上がりの美しさを再認識させられる。削り出されたKEINZの文字が誇らしげだ。腐食に耐え、15mmもの厚みは安定した性能を約束する。

12トルクロッドもラインナップされている。両端に長さが調整できるボールジョイントを装備したきめ細かいパーツである。ネジは左右で逆になっているので、長さ調整は簡単だ。

13繊細な加工精度が確認できるシャフト本体。ロッドセンターは16mmで、両端は18mmとして高強度を確保。長さは豊富にラインナップしている。

BRAND INFORMATION

KEINZ

住所/福岡県糸島市志摩桜井8-13
電話/092-327-3502
営業時間/10:00-17:30
定休日/日曜、祭日

福岡市内から少し離れた自然豊かな場所にあるファクトリー。糸島という場所は数々のアーティストが居を構え、糸島ブランドとしての個性を発進しているエリアでもある。そのファクトリーから生み出される数々のパーツは、常に高品質で個性的な輝きを失わないのである。