取材協力/ギルドデザイン 取材・文・写真/淺倉恵介 構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2015年5月29日

ZRX1200DAEGやゼファー1100のスイングアームに「しなり効果」をプラス

アフターパーツのスイングアームは、カスタムフリークであれば誰もが憧れるカスタムパーツのひとつの頂点。スペシャル感溢れるルックスは大きな魅力だし、高性能なスイングアームは車体の安定性を向上させ、旋回性を引き上げて運動性を向上させる車体チューニングの重要パーツなのだ。そのスイングアームに、実に魅力的なニューカマーが登場した。その名はGストライカー、マフラーやステップの人気ブランドであるストライカーと、優れた金属加工技術を誇り車体周りのパーツを数多くラインナップするギルドデザインのコラボレーションによって誕生した、生まれながらにして銘品という血筋確かなパーツである。

INTERVIEW

一流パーツメーカーがタッグを組み
理想を追い求めて誕生

GILD DESIGN
寺井健二さん
1981年生まれ、2001年ギルドデザイン入社。物造りの現場で加工技術を学んだ後、開発業務に携わりパーツの設計を担当。現在は、同社のオートバイ事業部責任者として、カスタムパーツを統括する立場にある。趣味はミニバイクレースで、時間を見つけてはレースに参戦中。最近はYZF-R25を手に入れ、こちらでもレース参戦を考えているという根っからのバイク好き。

バイクカスタムに詳しい人ならば、ギルドデザインと聞いて「おやっ?」と思ったかもしれない。そう、ギルドデザインはフレームやスイングアームといったミニバイクの車体周りのパーツで、圧倒的な支持を得ているブランド、Gクラフトを展開するメーカーだ。ミニバイクカスタムの雄が、いよいよビッグバイクの世界に打って出たか……と、いうのは勘違い。ギルドデザインはビッグバイク用カスタムパーツも数多くラインナップしているのだ。

 

「ギルドデザインはゼファー750用のスイングアームの開発からスタートしました。その後もZ系やゼファー1100用のスイングアーム、ステムキットなどを開発してラインナップを継続的に増やしています。また、毎年鈴鹿8時間耐久用のレーシングパーツのサポートも行っていて、実戦から得られたノウハウを、ギルドデザインやGクラフトの商品にフィードバックさせているんですよ」

 

そう語るのは、ギルドデザインでオートバイ事業部の責任者を務める寺井健二さん。同社のバイクパーツを統括する人物だ。

 

「ギルドデザインとしても、もっとビッグバイクに力を入れたい。そう考えていた時に、ストライカーの新代表から『理想のビッグバイク用スイングアームを作りたい』というお話しをいただいたんです」

カラーズインターナショナル
代表 新 辰朗さん
プロレーシングライダーとして、全日本スーパーバイクやGP500といったトップカテゴリーのレースで活躍。現役引退後にパーツブランドのストライカーを立ち上げ、マフラーやステップは高い評価を得ている。現在もイベントレースではトップコンテンダー。Gストライカー・スイングアーム開発のきっかけとなった、ゼファー1100レーサーを駆り数々の勝利を収めている。

ここで、ストライカーブランドを展開するカラーズインターナショナルの新 辰朗(あらた・たつろう)代表にご登場願おう。

 

「自分は、ゼファー1100で長くレースをしています。スイングアームもいろいろ試したのですが、理想とするものに出会えなかったんですね。ビッグネイキッドに関しては、剛性が高過ぎるとネガな部分が出る。自分がサーキットで攻め込んで、そう感じるのですからストリートカスタムなら尚更です。そうして、適度にしなって旋回性を高めるスイングアームこそが、ビッグネイキッドには最適だとの考えに辿り着きました。そこで、ギルドデザインさんに、そういったスイングアームを作って欲しい、とお願いしたんです」

 

再び、寺井さん。

 

「ご要望を基に検討を重ねた結果、新さんのコンセプトを実現したスイングアームを作るためには、既存の材料では不可能という結論に至りました。メインの部材は、当社のオリジナル素材で『トリプルスクエア』と名付けた異形目の字断面パイプです。形状自体はミニバイク用スイングアームでも使用しているもので、当社のアイデンティティともいえるデザインです。パイプの太さと厚みにもこだわりました。高さ95mm、厚さ40mm、肉厚は2.5mm。試作を繰り返して決定した、ベストと考えるサイズと形状です。十分な剛性に加え、適度にしなる特性を持たせ、安定性とコーナリング性能を両立しています」

ギルドデザインの、ビッグバイク用パーツラインナップのひとつがステムキット。カワサキZ系、ゼファー系などを中心に対応車種は幅広い。写真はカワサキの名車Z1-R用ステムキット。ビキニカウル装着用カウルステーまでもが削り出しで製作される凝った作りが、同社の技術力の高さを証明している。フォーク径やオフセット量、フォークピッチが異なる数タイプが用意されている。

そうして完成したスイングアームは、ストライカーに送られサーキットでテストされた。新さんによる、インプレッションはこうだ。

 

「試作品から、ほぼ完璧といえる出来でしたね。自分の考える『しならせて曲がる』特性が実現できていた。ストリート用パーツとして販売するために愛知県のしゃぼん玉さんにアドバイスを頂き、何ヵ所か手直しはお願いしました。開発は思った以上に順調に進み、おかげでレースでもデビューウィンが飾れましたしね(笑)」

 

一流同士が手を携え合い、本気で開発したGストライカーのスイングアーム。これは、試す価値のあるパーツだ。

PICKUP PRODUCTS

目を見張る精緻な作り込み
Gストライカーの魅力に迫る

Gストライカー・スイングアームの対応車種は現在のところ、カワサキZRX1100/1200/1200DAEGとゼファー1100/750の5モデル。ビッグネイキッドの中でも、特にカスタム人気の高い車種を押さえている。なお、今後はニンジャ900やホンダCB1300、ヤマハXJR1200/1300などもラインナップに加わる予定だという。オーダー時には各種オプションも選択可能、チェーンカバーステー追加加工、ブレーキホースクランプ加工、スタンドフック仕様などが有料オプションとして用意されている。中でも注目なのが、新しい表面処理として大注目のセラコート。銃器用のコーティングが発祥の新技術で、素材にセラミックの微粉末が混入され従来のコーティングとは比較にならない圧倒的な耐久性を誇る。密着性に優れた塗膜は、薄い上に剥がれ難く、柔軟で薬剤にも強いという、スイングアームに最適なコーティングだ。

Gストライカー・スイングアームで現在ラインナップするZRX系用、ゼファー1100用の価格は全て15万0000円(税別)。バフ仕上げが基本仕様で、セラコート仕様はプラス3万0000円(税別)の追加となる。スイングアーム長の変更やワイドタイヤ対応のアクスル幅の変更、オイルキャッチタンク加工も有料オプションで変更可能。

ZRX1200DAEGへの装着例。ZRX系で要チェックなポイントが、シート下の小物入れの加工が不要で装着可能なこと。サスマウント位置はノーマルのディメンションを保つように設計されており、有料オプションで位置の変更も可能。

ピポットは高い精度を出すために同軸加工後にベアリングが打ち込まれる。ボールベアリングとニードルローラーベアリングを併用するレーサーレベルの構造を採用している。

チェーン引きは、精度と強度に優れるOWタイプ。セッティング幅を拡げるため、純正の基準位置から前方に20mm(旋回性重視)、後方に40mm(直進安定性重視)の広い調整幅が持たせられる。チェーン引きはブラック、レッド、ハードアルマイトの3色から、追加料金無しで選択可能。

リヤブレーキのトルクロッド受けは、無しやノーマル位置がオーダー時に選べ、有料オプションで位置変更も可能。溶接のビードの美しさにも注目、熟練した職人の手により1本1本が仕上げられている。

メインパイプに溶接される前のチェーン引き。5軸加工機によって高精度で切削された造形は、強度と剛性が計算し尽くされ、機能美というに相応しい精緻な仕上がりをみせる。高い削り出し技術は、ギルドデザインが長年をかけて培ってきたものだ。

これが、メイン部材の『トリプルスクエア』構造パイプ。素材は7N01アルミ合金。アルミ材は溶接すると強度が落ちるが、7N01材は溶接しても時効硬化と呼ばれる作用で、溶接前と同レベルまで強度が戻るスイングアームに最適な素材。手前の小サイズのパイプはミニバイク用のトリプルスクエアパイプ。

手前はGストライカー・スイングアームに使用されているトリプルスクエアパイプ。奥の2つは、設計段階で試作されたパイプサイズのテストピースでアルミ総削り出し製。自社で高い加工技術を有しているからこそ、自由度の高い設計や複雑な構造を持つパーツ開発が可能なのだ。

これはギルドデザインの従来型のスイングアーム。特徴的なリブ付きのメインパイプや精緻な削り出しパーツ、美しい溶接ビードなど、見事な仕上がりは流石という他ない。Gストライカーのスイングアームは、こうしたギルドデザインの高い技術力を基に生み出されたものだ。

BRAND INFORMATION

有限会社ギルドデザイン
住所/〒519-0212 三重県亀山市能褒野町13-2
電話/0595-85-3608
URL/http://g-craft.com/gild-design/

削り出しパーツから溶接ものまで、アルミの加工なら何でも得意とする技術者集団。性能の高さはもちろんのこと、優れた品質とデザインセンスにも定評がある。ビッグバイク、ミニバイクといったジャンルやカテゴリーを問わず、バイクの車体周りカスタムパーツの総合メーカー。

 

SPECIAL THANKS

有限会社カラーズインターナショナル
住所/〒224-0001 神奈川県横浜市都筑区中川1-22-5
電話/045-914-6882
URL/http://www.striker.co.jp/

大人気カスタムパーツブランド、ストライカーを展開。主力パーツであるマフラーの、パフォーマンスの高さは折り紙付き。ビッグバイクからミニバイク、レース専用品など豊富なラインナップを誇る。ステップや外装パーツも大きな支持を得ている、総合カスタムパーツメーカー。