
フォルスデザインは、カーボンとF.R.P.を用いた外装パーツメーカーだ。自社ブランドとして展開を始めたのは2009年と、この分野では後発の部類になるが、だからこそ細部にまで作り手の想いを込めた、精度の高い製品を届けることを第一に考えており、そのための研究にも余念がない。
代表の小田薫さんは、以前は4輪の板金工場に勤めていた経歴を持つ。国産車は元より、フェラーリをはじめとした高級外車も頻繁に入庫してくるような所だった。おのずと仕上がりに対する要求は高く、それに応えられるショップでもあったのだ。小田さんはそこで板金技術と塗装、そしてF.R.P.の成形といった、現在の製品作りのベースとも言える技術を学び、そのノウハウを蓄積していったのである。
フォルスデザインの外装パーツはストリートユースを主体とし、その上で必要なビジュアルの形成と軽さを追求している。大きくルックスを変えるような奇抜な造形は、あえて行わない。知らない人が見たら純正と思われるような “さり気なさ” と、それでいて所有者には “ノーマルとは違う” という満足感を与えている。
「軽さを追求」と言っても、無闇な軽量化では決してない。それよりも製品の “面” がしっかり出ていることが重要だと小田さんは考えている。軽量化を意識するあまり、闇雲に本体を薄くすると、表面が波打ち、ペイントのムラにもなってしまうからである。
製品の精度も重要なファクターだ。純正パーツ同様 “無調整で取り付けが可能” であったり、装着した際に車体とのクリアランスを可能な限り詰めたり、と、言えば簡単に聞こえるかもしれないが、製作工程(とくに乾燥後)における縮みや歪みを計算する必要があり、また車体にも個体差があり、そのあたりの “さじ加減” が、フォルスデザイン独自のノウハウなのである。
フォルスデザインのもうひとつの柱がペイントだ。それも純正色の再現には自信を持っている。4輪であればメーカーから調色のデータが得られるが、バイクの世界では限られている。塗りたい色は作り出すしかないのだ。どの色をどのくらいで混ぜたら良いか? というのは、ペインターの特殊技能と言える。小田さんはその技法を4輪板金工場勤務時代に積み重ねており、調色に必要な “色を読み取る目” を持っているのだ。余談だが、同一メーカー、同一車種の同じカラーリングであっても、年式によっては微妙に異なっていることもあり、また経年変化もあるので「純正色にペイントする」と一口に言っても実は奥が深いのだ。
つまりフォルスデザイン最大の強みは、外装パーツメーカーでありながら塗装も可能な点にある。逆に言えば、塗装を前提とした外装パーツ作りを行っている、ということなのだ。
パーツの素材であるカーボン(ウェット)とF.R.P. は、型から外す作業(離型)を容易にするため、表面にワックスを塗布する。これは絶対的に必要な工程だが、塗装の際はこのワックスが塗料を弾く原因となってしまい、具合がよろしくない。そこでフォルスデザインでは、離型のためのワックスの使用は最小限に抑え、さらに塗装の前には徹底的にワックスを除去して下地作りをし、ペイントの仕上がりに影響を与えないようにしている。また製品そのものも塗装ムラの原因となる表面の波打ちが無いよう考慮され、外装パーツの製作段階からペイントの仕上がりまで、トータルで考えているのである。
また、外装パーツは車体に取り付けてしまえば見えなくなってしまう部分もあるが、そこにまで気が配られているのも特筆すべき点だ。ペイント作業も防塵、エアの除湿など、環境が整えられている。その品質の高さから、リピーターとなって同じパーツを購入し、着せ替え感覚で楽しんでいるユーザーも少なくない。
このように、お湯を掛ければ直ぐ出来るようなインスタント食品とは異なり、小田さんを始めとした少人数で細部にまで気を配りながらコツコツと仕上げていくため、なかなか在庫するまでに至らない。「欲しい!」と思って注文しても、手に届くまでには少々時間を有する。仕方がない部分ではあるが、そこは “楽しみの期間” として待ってていただければ幸いである。
フォルスデザイン代表の小田薫さん。高い技術とノウハウを持った四輪の板金工場で経験を積み独立してフォルスデザインを設立。将来的にはペイントを活かしたバイクのプロデュースを手掛けてみたいそうだ。
こちらはCB1300だが、この車両に限らず車体とのクリアランスを最小限にするのが小田さんの追求している部分のひとつ。簡単なようだが、車体の個体差もあって実現には高度な技術が必要である。また純正パーツっぽくありたいというのがテーマであり、このCB1300のビキニカウルでは、純正のタンクに合ったデザインバランスで自然なフィット感を持ち、さらにスクリーンがカウルの下になっている。これには裏側の面の平面性が求められ、見えなくなってしまう部分にまで手が掛けられていることの証だろう。
車両に装着してしまえば、施されたペイントを含め純正パーツのような違和感の全くないフィッティングを見せるフォルスデザインの外装パーツ。
それには高い技術力があるがゆえであることはもちろんだが、そのための環境作りにも抜かりは無いのだ。
フォルスデザインのパーツが装着された車両を見ると、それがストック(純正・新車)状態かと思ってしまうほど違和感が無い。塗装面の仕上がりは純正色同等のクオリティで、もちろん密接する部位に干渉することも無く、それどころか限りなく狭い隙間を残してピタリと納まる精度の高さには目を見張るものがある。
単に技術力だけで言えばフォルスデザインの実力だが、車両に装着した際の完成度の高さを追求した結果の高品質と言うと、そこには小田社長だけでなく、ホンダ車両の正規販売店が関係していることがわかる。
ホンダドリーム東大阪店の岡本店長は、フォルスデザインの小田さんとは長い付き合い。小田さんが以前勤めていた会社から独立すると聞き、何か一緒に出来ないか? と思って声をかけたのが、フォルスデザインの製品が生まれたきっかけだと言う。
「もともとはウチのお店で販売する車両に、プラスアルファで他店とは違う売り方をしたかったんです。それがオリジナルパーツを装着して販売するという発想で、小田さんの技術が確かなのは以前から知っていたし、彼が独立すると聞いてオリジナルパーツ製作の企画を持ちかけたんです。」
岡本店長は日々バイクユーザーと接しているなかで、認めてもらうにはハンパなものではいけないことを知っている。その反面、品質は妥協せず手の届く価格帯も重要、それこそ “自分が欲しいパーツを作る” ことを念頭に、違和感無く、精度は高く、もちろん無加工で装着可能という注文を小田さんに投げた。試作を繰り返しながら、クリアランス、カラーリング、トータルデザインなど、価格とのバランスを納得の範疇に落とし込んでいったのだ。
そうしてホンダドリーム東大阪店の “オリジナルカスタム” 車が完成し、店頭に並べたところお客さんの反応もよく、手応えを感じたと言う。
「小田さんのところも1ヵ月に造れる製品には数量に限度がありますし、ウチだけのオリジナルカスタムとして出来る分だけ出していく、というつもりでした。ところがしばらくして、同じホンダドリーム系列店から製品についての問い合わせがあって、おそらくどこかでウチのオリジナルカスタム車両を見たお客さんに聞かれたんでしょうね、当然断る理由も無いので、ウチが窓口になってフォルスデザインのパーツを販売するようになりました。」
パーツの開発には当然のことながらベース(開発)車両が必要となるが、そのためだけに車両を購入するほどの資金は、独立したばかりの小田さんには無い。毎年ニューモデルが登場するたびに車両を入れ替えるようなことは、そもそもビジネスとして一般的ではない。そこをホンダドリーム東大阪店の協力により、店頭展示車両で補填することによって開発は進んだ。
岡本店長からはバイクユーザーに一番近いところから新製品の企画が上がり、それをフォルスデザインがカタチにする。1モデルに対してたくさんのパーツが揃うのも、また、どのモデルのパーツを製品化すべきかという判断も、ユーザーのニーズによるものだ。
現在ではホンダ10車種以上の適合パーツをラインナップし、今後もニューモデルが登場するたびに、新製品も増え続けていくことだろう。
住所/大阪府枚方市出屋敷元町1丁目4-6
電話/072-898-1184
FAX/072-898-1184
営業時間/10:00-18:00
定休日/火曜・日曜
メインとなっている商品はカーボンとF.R.P.を用いた外装パーツで、ルックスやフィット性は純正のようなマッ チングを持っており、さらに 装着してしま えば見えなくなる部分も考慮して製作されている。ペイント技術、 特に純正色の再現には自信があり、リリースされている商品も、塗装のことまで を考えて仕上 げられている。