Fg(エフ・ジー)はイタリアのバイクパーツメーカーで、創業者であるフランコ・グッベリーニ氏はサスペンションのスペシャリスト。社名の「Fg」とはグッベリーニ氏の頭文字をそのままとったものだ。創業は1980年代初頭、当初はバイク用サスペンション専門のエンジニアリングカンパニーとして、レーシングチームや一般ライダーを対象に、サスペンションのメンテナンスやセットアップを請け負っていた。ほどなくバイク用レーシングスタンドの製造も始め、その使い勝手の良さと耐久性に優れるFgのスタンドは、ヨーロッパのライダーたちに瞬く間に拡がることとなった。ドゥカティの純正アクセサリーに採用されるなど、現在もFgの主力製品のひとつとなっている。
ショックユニットの生産を開始したのは1990年代。グッベリーニ氏が長年にわたって研究を続けてきたサスペンション理論が、ようやく具現化されたのだ。“ハイドローリックピストン”のワールドパテントも取得。これは今までにないスムーズな作動と、理想的なダンピング特性を実現するFgだけの特殊技術である。現在は、リアショックユニットやフロントフォーク、フロントフォーク用のダンパーキットなどのサスペンションパーツのほか、レーシングスタンドやサスペンションのメンテナンス用特殊工具も手がけている。また、サスペンションのエンジニアリング業務も継続しており、モトGPをはじめWSBKやWSSといった、世界トップレベルのレースにエンジニアを派遣している。Fgが開発した世界初の後付けトランクションコントロールユニット『GRIP-ONE』は、モトGPで培った技術から生み出されたものだ。
ショックユニットからトラクションコントロールまで、バイクの足周りに関する総合メーカー、それがFgなのだ。
モトGPでの経験を活かし、Fgが世界で初めて開発に成功した後付けトラクションコントロールシステム。あらゆる車種へ装着が可能で、主要モデルにはカプラーオンの専用ハーネスも用意されている。
派手なドリフト走法でモトGPを沸かしたギャリー・マッコイ選手は、Fg製サスペンションを装着するマシンでWSSを戦った。Fgは創業時から現在まで、常にレースシーンと関わり続けてきた。極限性能を求められる世界選手権レベルで磨かれた本物のテクノロジーを持ったサスペンションなのだ。
【左】左側の青いシャツを着た人物が、Fgの創業者にして代表を務めるフランコ・グッベリーニ氏。現在もレースの現場に赴き、製品開発の先頭に立つ現役エンジニアでもある。バイク先進国イタリアを代表する、サスペンションのスペシャリストである。【右】イタリア北部の中心、学園都市ボローニャにほど近いフォンターニャにあるFgのファクトリー。近代的な設備が整えられてはいるが、サスペンションの組み立ては基本的に手作業。熟練の職人の手でFgサスペンションは作られているのだ。
このFgツインサスペンションは、Fgがモノショックで培ってきた技術力が全て注ぎ込まれている。当然フルアジャスタブルタイプで、プリロード、伸/圧ダンピング、車高調整が可能。そしてFgツインサスペンション最大の特徴が、“ストロークエンドスプリング”の採用だ。
ストロークエンドスプリングは、一般的に“リバウンドスプリング”や“トップアウトスプリング”と呼ばれる構造。フロントフォークやモノショックでは一般的になりつつあるメカニズムだが、市販ツインショックに採用された例は極めて稀。その理由は高いコストと性能確保の難しさにあるが、Fgは困難な課題を克服し、市販化に成功した。メインスプリングと逆の方向に働くストロークエンドスプリングは、圧縮時のスムーズな動き出しと、伸び切り時のしなやかな作動性が特徴。スポーティなだけでなく、今までにないコンフォータブルな乗り味を実現している。
ストロークエンドスプリングは、ダンパーピストンの下側に設けられておりボディ外側のメインスプリングとは逆の動きをする。サスペンション全体が縮むコンプレッション時には伸びる方向に動くため、スムーズなサスペンションの圧縮を助け、初期動作が良好という特性を持つ。また、サスペンションが伸びるリバウンド時にはバンプラバー的な役割を果たし、サスペンションが伸び切った時にダンパーとボディの接触によって発生するショックを軽減する。
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もともと、ZRX1200 DAEGのリアショックは出来が良い。ノーマルパーツとしてはかなり高性能でセッティングも良好だ。「これならリアサスペンションを社外品に換える必要は無いのでは?」と感じていたのが正直なところ。だが、Fgに交換して、その認識が間違っていたことに気付かされた。走り出してすぐに感じられたのが、動きの良さだ。初期からスムーズで、フリクションの小ささが伝わってくる。そしてダンピングの制御が実に細やかで、乗り心地がとても上質だ。例え話になるのだが、仮にリアショックが段階的に動くものだとしよう。そしてノーマルショックは5mm毎にクリックがあり、「カチンカチン」と沈んでいくとする。そこでサスペンションが30mmストロークすると、ノーマルショックは6回クリックすることになる。それがFgの場合はクリック幅が狭い。ノーマルのクリックが5mmだとすれば、Fgは3mm。制御が細かく、サスペンションの動き自体が圧倒的にスムーズなのだ。秒針が「カチ、カチ…」と一秒毎に停止する安いクォーツ式のアナログ時計と、「スーッ…」と動く高級な機械巻き時計の違い、とでも言おうか。
好印象な部分はそこだけではない。Fgで最も気に入ったのはトラクションの高さだ。ストローク感が高く、サスペンションがしっかりと仕事をしていることが乗り手に伝わってくるし、サスペンションが入ったところでしっかりと踏ん張り、マシンを前へ前へと進めてくれるのだ。ご存知の通り、バイクはスロットルを開けてトラクションをかけている状態が最も安定する。トラクションがかかっている状態を体感しやすいFgならば、スロットルをさらに開けやすいので、相乗効果的にトラクションが高まり、より速く、安心して走りを楽しむことができるだろう。ダンピングの効き方も上質で、レスポンスはかなり俊敏。ギャップを越えたとき、挙動の乱れが収束するまでの時間はノーマルに比べて圧倒的に早いし、挙動の乱れ自体が小さい。
そしてコーナリングが面白い。ノーマルではコーナーでの速度を上げていくと、フロントタイヤの接地感が薄まっていく傾向がある。Fgはリアの伸び方が絶妙なので、しっかりとフロントタイヤを押し付けてくれる。接地感をしっかりと感じられるので、思い切って攻め込んでいける。個人的に、リアサスペンションは縮むときより伸びる時の動きを重視しているのだが、その点でFgは相当にハイレベル。
安心して攻められる高いスポーツ性能があり、乗り心地も良好。ルックスの美しさもなかなか。Fgツインサスペンション、かなり強力なニューフェイスが現れたものだ。
高田選手はFgのダンピング調整機能も高く評価。「ダンピング調整の段数が多いのは良いですね。精密なセッティングができそうです。ユーザーの皆さんも、是非いろいろなセッティングを試して、サスペンションセッティングの面白さを味わって欲しいです」
国際ライダー。全日本選手権をはじめ、数々のレースを戦ってきたベテラン。ここ数年はBMW S1000RRを駆り、鈴鹿8耐を中心にレース活動を行っている。MFJ公認インストラクターで、各サーキットで講師としても活躍。ジャーナリスト活動も行っており、ライディングテクニックはもとより、メカニックにも造詣が深い。バイクのタイヤとメンテナンスのショップ『8810R』(TEL/047-710-0615)代表。
![]() | Fg TWIN Suspension CKB02 価格/11万2,350円(本体価格10万7,000円)
今回紹介しているフルスペックモデルの他に、スタンダードモデルも近々ラインナップに追加される。ピギーバックを持たないモノチューブタイプで、プリロード調整とリバウンド側ダンピング調整が可能。一部機能を省くことで、リーズナブルな価格を実現している。対応車種は、まず現行ネイキッドモデルから展開される予定。シンプルな造形は旧車にも似合いそうなので、ラインナップの拡大を期待したいところだ。
【対応車種】 CB1300 (2003-) CB1100 (2010-) XJR1200 (ALL) XJR1300 (ALL) ZRX1100 (ALL)ZRX1200 (ALL)ZRX1200 DAEG (ALL)
画像の商品は試作品です。外観、仕様、対応車種、価格等は、変更される可能性があります。 |
Fgでは、全てのサスペンション製品についてカスタマイズに対応。体格やライディングスタイルに合わせて、ユーザー1人ひとりの専用サスペンションが製作可能だ。しかもオーダー時のカスタマイズによる仕様変更については無料。追加料金無しで自分だけのサスペンションが手に入る。オーダーは簡単で、Fgの日本総代理店であるデビルテクニカのWEBサイトにあるオーダーシートをダウンロード。体格やライディングスタイルなど、簡単な質問事項を記入するだけだ。
devil technica 公式サイトから
カスタマイズフォームを見る(日本語)>>
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GRIP-ONE
8万2,740円(消費税込)
世界初の後付けトラクションコントロールシステム。スリップ感度8段階、介入度合い8段階の計64パターンの中からセッティン選択が可能。
ヨーロッパから様々な高性能バイク用パーツを日本に紹介している。devil社製品をはじめ、ブレーキパーツのBERINGER社製品、サスペンション関連総合メーカーのFg社製品、アフターパーツとしては世界初となるトラクションコントロールシステムGRIP ONEの総輸入元。
住所/大阪市西区西本町1-13-9-303
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