
「マフラーを変えてから、どうもバイクの調子が良くないような……」そんな悩みを持つライダーは意外と多い。
それはきっと排気を変えたことで、吸気、フューエルインジェクション、排気のバランスが取れていないから。
そんな場合は、まず自分の愛車の状態を知ることが不満解決の第一歩である。
マフラー変えてルックスアップ!
しかしトルク感が薄くなった?
ミラーやサスペンションを変える、ライトをHIDにするなど、愛車を自分好みにカスタムする手法はいろいろとあるが、カスタムの第一歩と言えばマフラー交換だろう。ルックスと排気音が大幅に変わるマフラー交換は、満足度が高く、誰もが最初に考えること。
ところが新しいマフラーに変え、さっそくツーリングに行ってみたところ「上のほうはパワフルになったが、下のほうがついてこない」とか、「低速でのピックアップがイマイチだなぁ」という話をわりと耳にする。
それもそのはず、バイクは基本的にノーマル状態でセッティングされているもの。マフラーという大きな排気パーツを変えれば、吸気とのバランスが取れなくなってしまい、不調になることもしばしば。キャブレターなら自分である程度調整することも可能だが、現在はフューエルインジェクション(以下 F.I.)が主流だ。F.I.がバイクの燃料噴出量を調整しているため、容易に調整することは、ほぼ不可能に近いわけだ。
自分でF.I.調整ができなければ身近なショップに調整を依頼することになるが、このF.I.調整というのは、おおがかりなシャーシダイナモと呼ばれる出力測定器と、F.I.を調整するコンピュータのシステムが必要となるため、ショップから専門の業者に依頼することも多い。
そこで今回は、そんなF.I.チューニングのスペシャリストであるダイノマン野口商会でF.I.の調整について聞いてみた。
マフラーを変えた直後のツーリングでエンジンの不具合を感じたら、それは吸排気とF.I.のバランスが取れていないのが原因だ。
ライター プロフィール
櫻井 伸樹
ツーリングマガジン『アウトライダー』元副編集長。長年にわたり国内や海外を取材してきた経験を持つ。現在はフリーライターとして活動中。
ダイノマン 野口商会
テクニカルマネージャー
坂口 真一 氏
ハーレーのプロメカニックを目指して渡米し、専門の養成学校を卒業。ダイノマンではテクニカルマネージャーとしてハーレーだけでなく、あらゆるバイクのチューニングを手がける。愛車はFXDだが、「最近は乗れていない」とのこと。
「サブコンを調整すると、単気筒とか2気筒は、より顕著に乗り味が変わってグっと良くなりますよ」と坂口さん。
まずは今の状態を知ること
出力計測は愛車の健康診断
話をうかがったのは、ダイノマン野口商会でテクニカルマネージャーを勤める坂口真一さん。坂口さんはF.I.調整についてこう語る。
「まず、どんなバイクでもそうですけど、自分のバイクの現状を知ることが大切なんです。とくにマフラーを変えたバイクは、回転の上のほうでパワーが上がることも多いですが、ツーリングや街乗りで多用する低中速域では昨今の厳しい排ガス規制の影響もあり、逆にノーマル状態よりもギクシャクしてしまったり扱いにくくなったりすることが多発するのです。だから、どうも乗りにくいという方は、シャーシダイナモに乗せてチェックし、現状がどうなっているのか把握することが大切だと思いますよ。人間同様、バイクも健康診断って大事だと思うんですよね。パワーチェックって言うとおおげさな感じですが、出力を計測するだけだし、料金も手頃ですから、もっと気軽にやってもらいたいですね」
では、チェックしてみて状態が芳しくなかった場合はどうすればいいのだろうか。
「その場合は、F.I.を制御するコンピュータを調整して燃料の濃さを変えるんですが、車体のコンピュータはほぼ手が入れられないので、サブコンピュータを挿入してサブコンそのものを調整するんです。常用域で扱いやすいセッティングにするだけで、場合によっては約30%も低中速域のトルクとパワーが上がることもあります。そうなると、もう乗った感じはぜんぜん違うバイクですよね」
坂口さんによると、ここ数年でF.I.の調整に関する意識が非常に高まっており、ダイノマン野口商会にマシンを持ち込むライダーも増えているとか。もちろんそこまでやらずとも、今、自分のバイクがどんな状態にあるのか? ということをチェックするのはとても重要なこと。実施すれば出力以外に、例えばクラッチの滑りなど、普段使わない回転域での不具合なども判明させられるという。マシンに致命的なダメージが出る前に、問題を見つけることが可能なのだ。
こうしてバイクの後輪を駆動させながら、各ギアごとに数値を図り、適正値に調整していく。知識と経験がものを言う作業だ。
青い線がノーマルのグラフで、赤線がチューニング後のもの。トルクもパワーも全域で上がり、しかも振動も減っているのがわかる。
こちらがサブコンピュータ『パワーコマンダー』が接続された外部コンピュータの画面。数値の打ち込みにより細かい設定が可能だ。
全世界で数百車種に対応可能なインジェクションコントローラー『パワーコマンダー』。
出力測定やF.I.チューンは、このようにダイノジェットという測定機械に乗せ、実際に後輪を駆動して行なう。測定だけなら4,000円(2014年1月22日現在)だ!
どんなバイクでも計測可能
愛車の潜在能力をフルに引き出すべし
ダイノマンでは50ccの原付から1800cc超の大型車までどんなバイクでも診断が可能。サブコンを搭載してF.I.をチューニングするとなると、平均して約10万円ほどの費用がかかってしまうことになるが、一度装着してしまえば、その後、新たに吸排気系を変更しても簡単にF.I.の調整が可能となるため、最良のコンディションを求める多くのライダーがサブコンを装着するそうだ。もちろん出力を計測する「バイク健康診断」だけなら4,000円という手頃な価格で可能。あなたもF.I.チューンのスペシャリスト ダイノマン野口商会で、愛車のチェックや潜在能力をフルに引き出してもらってはどうだろうか。
※記事内に記載している金額は税抜価格(2014年1月現在)
今回のBMW R 1200 GSを用いての診断で出た数値結果がこちら。左側はスロットルを全開(100%)にした際のパワー/トルク/空燃比の比較データで、右側はスロットル10%と15%で特に変化が大きかった部分のパワー/空燃比の比較グラフである。
マフラー交換をしたオーナーには知ってもらいたい
見違えるようなエンジン本来のパワー感!
今回この出力測定を通してまず感じたのは、燃料が薄めのバイクが多いということ。とくに国産車の場合は、環境対策としての排気規制や、燃費を向上させるためノーマル状態であえて薄めのセッティングが施されているバイクも多いとか。燃料の濃さによって、エンジンの特性はかなり変わるもの。自分のバイクの燃料がどうなっているか知ることはかなり重要であると感じた。
BMWの場合だと、F.I.はもちろん、サスペンションやブレーキなどあらゆる装置に電子制御を採用しているため、コンピュータはブラックボックス化され、「チューニングなどとてもできない」と思っているユーザーが多い。しかしダイノマン野口商会では、BMWの正規ディーラーなどざまざまなショップからF.I.チューニングの依頼を受けることも多いという。つまり最新モデルでも問題なくF.I.チューニングが可能なので、特にマフラーを変えたユーザーには一度相談してみることをお勧めしたい。きっと見違えるような、そのエンジン本来のパワー感を得ることができるゾ!
BRAND INFORMATION
ダイノマン野口商会は、そのエンジン性能を確認するためアクセルを全開にするという業務が軸なだけに、大阪・大東市の郊外にひっそりと佇んでいる。周囲はスペースに余裕があり、車やバイクで訪れても大丈夫だ。気軽に相談してみよう!
住所/大阪府大東市御領3-15-43
電話/072-380-8936
ファックス/072-380-0466
営業/10:00~19:00
定休/イベント・レース日
ウェブサイト/http://www.dynoman.jp/