80年代のカワサキワークスタイプサスを蘇らせたアドバンテージKYB
取材協力・写真/株式会社アドバンテージ  取材・撮影・文/木村 圭吾  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2016年3月2日

1980年代にAMAに参戦していたカワサキのワークスマシンに採用されていたリアショックユニットを参考に開発されたのが『アドバンテージ KYB カワサキ80s ワークスタイプリアサスペンション』だ。ブラックのスチールボディに、2種類のスプリングを組み合わせて当時のレース仕様を再現しながらも、現代までに進化した部分は積極的に取り入れた、旧車ファン待望の逸品というにふさわしい仕上がりとなっている。

INTERVIEW

当時のルックスを再現しながらも
現代のテクノロジーも取り込んだサス

カワサキ空冷Z系、ゼファー系のモデルに向けて送り出されたのが『アドバンテージ KYB カワサキ80s ワークスタイプリアサスペンション』だ。名前からもわかるように、足回りのスペシャリストであるアドバンテージからリリースされている。

 

「製品化のきっかけは、雑誌『モトメンテナンス』田口編集長からの提案なんですよ」と語るのはアドバンテージ代表の中西 昇さん。

 

「その提案というのは、Z1やZ2、Mk2やZ1000Rなどに似合うリアショックユニットが欲しいというものでした。イメージのベースになったのは、1980年代のレーサー、アメリカのAMAを走っていたワークスマシンですね。その頃はワークス体制で参戦していたのでサスの中身はスペシャルなものですが、外観的には市販車に近いスタイルだったんです。そんなワークスマシンに装着されていたリアショックユニットならば、ベース車両の雰囲気をキープしながら、パーツとしてのサスの存在感も出せる、だから最近の主流になっているスタンダードルックのカスタム車にもマッチすると思いました」。

 

「ただし、ワークスマシンのリアショックユニットの復刻版ではありません。30年の間にはさまざまな部分が進化をしています。例えば、ロッドが太くなっていたりしていますが、それによって『安全率』が高まっており、ピストンの径も大きくなっていたりなどです。ですので、スタイルは往年ですが、性能的には現代のレベルに仕上がっています。製品化に至るまでは、何十セットの試作品を経ています。主に細かい部分の煮詰めでしたが、外観的な部分を少し修正すると、内部の変更も必要になったりといった具合です。時間が経っている車両ですから、より個体差も考慮する必要があります。そういった苦労はありましたが、その甲斐あって、いい物に仕上がったという自信はありますね。なお、想定したステージはストリートからワインディングです。幅広いユーザーさんに、乗って、眺めて、楽しめる製品と言えるでしょう」。

 

アドバンテージ代表の中西 昇さん。KYBを始めとした一流メーカーとコラボレートし、OEMではなくアドバンテージのエッセンスを注ぎ込んだオリジナルカスタムパーツとしての開発・販売を行っている。

雑誌『モトメンテナンス』編集長の田口勝己さん。旧車への思い入れと造詣が深く、アドバンテージ KYB カワサキ80s ワークスタイプリアサスペンション誕生のきっかけとなった人物である。

ここで製品化の発端にもなった、モトメンテナンス編集長の田口勝己氏に登場願おう。

 

「趣味要素が強い旧車ファンが増えいく一方で、なかなか納得できるリアショックが見つからないのが現実でした。絶対性能を求めるならば、最新のものを装着すれば良いのですが、旧車らしい雰囲気を重視しながら高性能化を望むなら、やはりデザインにはこだわりたい。そんな話を中西さんにして生まれたのが、アドバンテージKYBカワサキ80sワークスタイプリアサスペンションです」

 

田口編集長が個人的に要望したのは以下の3点だという。

 

「まず70~80年代初頭に活躍したブラック鉄ボディのカヤバレーシングツインショックのデザインの再現。そしてあくまでスリムであること。さらに2段レート1本バネではなく『2種類』のバネを組み合わせた当時のレース仕様の再現です」。

 

70年代当時のリアショックを現在の眼で評価したときに、圧倒的に頑丈かつ高性能なKYB製。旧車のレストアを生業とするエンジニアも高く評価するKYBの伝統を受け継いでいるからこそ、飽きることなく末永く使かえる逸品だと田口編集長は語ってくれた。

 

アドバンテージ製品は、メーカーとのコラボが多い。しかも、どのメーカーも一流どころばかりだ。今回の『アドバンテージKYB カワサキ80s ワークスタイプリアサスペンション』でタッグを組んだ相手は一目瞭然、KYBである。当時のワークスマシンのサスペンションを手掛け、現代においても二輪・四輪の純正部品で高いシェアを占める世界トップクラスのメーカーである。

 

そんなKYBとコラボが可能なのは、アドバンテージがコレまで生み出してきた数々のコラボ製品の高い信頼性によるところが大きい。性能はもちろん、ライダーの嗜好に寄り添う製品開発には比類ない実績がある。そんな「アドバンテージKYB」が生んだ今回のサスペンションボディの素材はスチール。理由は、当時のワークスマシンがそうだったからに他ならない。それも基本的には削り出しで(一部は溶接で組み合わせ)作られている。生産ロッドを考えれば(スペシャル部品のため)製作コストは嵩むが、妥協できなかった部分でもある。表面は耐久性にも優れた高クロームメッキ仕上げとなっており、質感の高さもポイントのひとつだ。

 

スプリングはレートの異なる物が2つ組み込まれている。路面の凹凸などの低い加重と、コーナリングなどの高い荷重を、それぞれのスプリングで受け止めるためであり、これもワークスマシンのサスを倣ってのことだ。ツインショックが主流だった当時ならではの仕様を見事に再現しているのである。

 

絶版車にフィットする当時の面影を残しながらも、当時の性能を凌駕する性能の『アドバンテージKYB カワサキ80s ワークスタイプリアサスペンション』。旧車愛がうみだした、こだわりの仕上がりで税抜き6万8,000円は、バーゲンプライスと言ってもいいだろう。

PICKUP PRODUCTS

『アドバンテージKYB カワサキ80s ワークスタイプリアサスペンション』で、重視されたのはスタイルだ。イメージベースは、1980年代に参戦していたカワサキのワークスマシンのリアショックユニット。それは「細身」であることが外観的な特色だ。再現にあたりロッドが太くなり、ピストン径が大きくなってはいるが、シルエットは最大限に再現されている。

 

サスペンションのフリー長は350mm、ストローク量は80mm、イニシャルは無段階に調整が可能であり、伸び側の減衰力は10段階。対応車種はZ1系(Z1/Z2/KZ900/KZ750FX1/Z750FX2/FX3)、Z400系(Z400FX/Z400J/Z500/Z550FX/Z550D1/ZEPHYR400/ZEPHYR400/χ)、Z1000J系(Z1000J/Z1000R/Z1100J/Z1100GP)、Z650、ゼファー1100、ゼファー750となっている。

 

ほぼノーマル状態のZ1000Rへの装着例。スタイリングに大きな影響を与えることはないが、白く塗られたスプリングがカスタムパーツとしての存在を主張している。

ショックユニットは正立でも倒立でも使用可能。サスペンションフリー長は350mm、ストロークは80mmだ。車両によっては個体差などで、チェーンケースやドライブチェーンなどの干渉する場合がある。

ボディはスチールの削り出しをベースにしており、一部を溶接で結合。表面はブラックの高クロームメッキ仕上げ。KYBの文字が赤く入れられている。

イニシャルはダブルナット方式で、無段階に調整が可能になっている。

伸び側の減衰力は10段階に設定が可能(出荷時は5段目)。ピストン径は80年代から比べると遥かに大径化されており、そのぶん減衰特性も向上している。

レートの異なるダブルスプリングシステムが採用されており、高荷重を受け止めるレートの高い方はホワイトにペイントされており、装着時のアクセントにもなっている。

Z1000Rへの装着状態のアップ画像。車両に溶け込みながらも、それでいて主張があって埋没することはない、きわめて絶妙なバランスとなっている。

Z1000Mk2への装着画像。サスペンションは主張しすぎず、車両が持つ時代感を見事にまとめあげている。

スイングアームまでカスタムされた車両だが、それら屈強なパーツに囲まれても見劣りすることはない。さりげなく、しかし強い存在感がある。

BRAND INFORMATION

株式会社アドバンテージ

住所/兵庫県尼崎市昭和通9丁目-324
TEL/06-6412-6145
営業時間/10:00~18:00
定休日/毎週水曜、イベント・レース日

代表・中西氏のスズキグループでの経験をもとに、常に最高を目指すフットワークパーツとカスタムバイクのプロショップが 「ADVANTAGE」だ。SHOWA/KYB/NISSIN/F.C.C./NHK/D.I.D./XAMなど一流メーカーとコラボし、OEMではなくアドバンテージのエッセンスを注ぎ込んだオリジナルカスタムパーツとして、開発・販売を行う。レース向けに開発したパーツを世界標準とする事を目的とし、AMA/FIMが主催する世界最高峰のモータースポーツに、一石を投じ続けている。