高水準化されながら
全く尖っていない
僕自身、アクティブが作ったカスタムバイクには、久々の試乗である。ここ、富士スピードウェイのショートコースで行われたアクティブ主催の走行会イベントの中で、試乗のチャンスを得たダエグ。オランダのハイパープロからはエンジニアのペーター・ヴァン・デン・ボガードさんが来日しており、新作のフロントフォークが、今回のカスタム車の大きな注目ポイントである。
と、そのつもりだったのだが、試乗前にマシンを見て、内心、ちょっと困ったと思った。ノーマル状態から変更が可能と思われる箇所のありとあらゆるところが、アフターパーツに換装されているのである。
前後ハイパープロであるのはともかく、ハイグリップタイヤに軽量アルミ鍛造ホイール、高剛性なスイングアームに上下の三ツ叉、フレームには補強メンバーが取り付けられ、ブレーキも強化。ライディングポジションまわりも変更され、マフラーは4-1になっている。車両に全面的に手が入っているのだから、フロントフォークについて適切な評価をするのは難しいんじゃないだろうか。
ましてや、ここまで変更点が多いと、全てをマッチングさせ、完成形とするには、相当な走行テストも必要である。しかもフロントフォークは、ペーター自身がオランダから持ち込んだものを組み込んだばかりの状態なのだ(彼が手押しと簡単な走行チェックを行っているが)。
その上、跨ってみると、ステップの位置が、僕にとっては後ろ過ぎで高過ぎだ。当初は、これについては触れないつもりでいたが、自分の走りの写真を見て唖然。ご覧のように、明らかに足の位置が不自然である。もっとも、このステップは、このデモバイクのために、ギルズツーリングの他車用製品を改造して取り付けた暫定品、とのことである。
そんなわけで、恐る恐る走り出したアクティブのダエグ。それが何と、違和感もなく、素直に走らせることができるではないか! しかも、このショートサーキットに自然に馴染んでいくし、明らかにノーマルよりもサーキット性能が高まっている。
走り、曲がり、止まることを高水準にこなせ、安定性も高まっている。メッツラーのレーステックによってグリップ性能と運動性が高まり、軽量ホイールが、ハンドリングに軽快なレスポンスを与えてくれる。そしてそれに合わせて、車体が高剛性化され、バランスよく走りのポテンシャルが高まっているのだ。
スイングアーム、三ツ叉、フレームの補強、これらのマッチングも悪くない。試乗後に気付いたのだが、これら3点は全て、宮崎のウイリー製。それなりにマッチングが図られているのかもしれない。左右のマスターシリンダーがゲイルスピード製となっていることで、レバータッチは軽快で上質感もある。
エンジンも、高回転域の吹け上がりが元気になっており、このマフラーレイアウトで出がちな中速域の谷も気にならない。車両キャラクターともマッチングしているのだ。
和歌山利宏
ハイパープロのペーター・ヴァン・デン・ボガードさんと。以前、日本で会ったのは、リヤショックが登場した7年前だが、毎年のようにミラノかケルンなどヨーロッパのショーで顔を合わせており、「やあ、しばらく」という感じかな。
気になるのは、(くどいようだが)ステップ位置ぐらいのもの。それと、あえて言えばフロントブレーキは効き過ぎのきらいもあって、マスターシリンダーを大径仕様品として、レバー比を下げると、よりコントローラブルになるかもしれない。
さて、注目すべきフロントフォークだが、停止時に動きを渋く感じても、走っていて固さはなく、姿勢変化を適切にコントロールしながら、車輪は路面をしなやかにトレースしていく。応答性の良い減衰力特性や作動性など、世界の最高水準にあると言って差し支えない。まだ完成したばかりで、ペーターにしてみれば改良したい点もあるだろうに、これには素晴らしい素性がある。
詳しくは、解説覧を見てもらいたいが、それは偶然にできたものではなく、しっかり作り込まれたものであって、そうした特徴はリヤショックにも通じるものがある。また、特徴的なライジングレートスプリングは、常に前後輪への荷重感、ひいては接地感をダイレクトに伝えることに、一役も二役も買っていると思う。これも素晴らしい持ち味だ。
一見、単なるカスタムパーツ満載のバイクに映って見えた、このアクティブ製ダエグ・カスタムだが、全てのパーツの機能がバランスし、サスペンションがそれらを昇華させているのが、印象的だった。
アクティブでは、このダエグの開発コンセプトを快適高速クルージングの実現と設定。高速走行の快適性と足まわりの性能不足を補うカスタムメニューを投入している。また外装は、ノーマルのグラフィックを基調に、ベースカラーを変更、飽きのこない渋い外観としている。