Report:中村友彦  Photo:柴田直行/木立 治  記事提供:ROADRIDER編集部
    掲載日/2013年5月15日
今春、発売されたタイプGP1Sは、ゲイルスピード製アルミ鍛造ホイールの頂点モデル。
レースの技術を活かして生まれたこの製品は、ZX-14Rにどんな変化をもたらしたのだろうか。

Impression

14Rの優れた資質を最大限に引き出す

2012年の初頭に登場したZX-14Rは、久々にノーマル状態でもカワサキ製フラッグシップならではの力強さが満喫できる、素晴らしいバイクである。ただし、峠道やサーキットをある程度以上のペースで走るとなると、僕個人としては車体の重さが気にならないでもなかった。

 

もちろん、カワサキはそうしたユーザーに対して、ZX-10Rやニンジャ1000などを準備しているものの、やっぱりカワサキ好きなら最高峰のフラッグシップで、動力性能を追求してみたいではないか。そんな印象を抱いた僕は、実は初試乗時から、ホイールやマフラーを軽量化した14Rに乗ってみたいと考えていたのだが……。その気持ちが通じたのか、アクティブさんのご好意で、ゲイルスピードホイールの最新作であるタイプGP1Sを筆頭に、数々のカスタムパーツを装着した14Rに試乗させてもらえることとなった。

 

今春から販売が始まったGP1Sは、2011年にレース専用としてデビューしたGP1のストリート仕様である。5本スポークのデザインは昨今のレース界のトレンドを取り入れた放射状だが、あえて湾曲させたスポーク内部のリブはゲイルスピードならではで、これはハイスピードコーナーやハードブレーキング時の安定感を重視した結果だと言う。

 

気になる重量は、14Rの純正ホイールがF:5.15kg/R:8.95kgであるのに対して、GP1SはF:3.55kg/R:6.05kgだから(既存のゲイルスピード製アルミ鍛造ホイールより前後で1?2kgほど軽い)、単純にこのホイールを装着すれば、4.5kgもの軽量化が図れるわけだ。

 

などと書くと、装備重量265kgの車体が4.5kg軽くなったくらいじゃ、実際に乗ってのフィーリングは大差ないだろうと思う人がいるかもしれない。かく言う僕も、当初はちょっと不安を感じていたけれど、試乗開始からわずか5分で、その不安は見事に吹き飛ぶこととなった。

 

誠にありきたりな表現で恐縮だが、この14Rはすべての動きが軽いのである。コーナリングや押し引きが軽いのは言うまでもないが、停止状態からの発進も、不意に飛び出してきた4輪を避けるための車線変更も、とにかくすべてが軽い。しかも単純に軽くなっただけではなく、スロットル/ブレーキ操作や体重移動に対する反応が、しっとり&分かりやすくなっているから、安定感すら高まっているように感じられる(ホイールの軽量化はジャイロ効果の減少につながるから、本来はわずかに安定成分が失われるはずなのだが)。

Impressioner

中村友彦

2輪雑誌業界17年目のフリーランス。R/Rファクトリーで連載中のZRX1200DAEGにタイプSを装着し、ゲイルスピードの美点は熟知していたものの、今回の試乗ではすっかりタイプGP1Sの魅力に驚かされた模様だった

 

もっとも、そういった印象には左右で5.7kgの軽量化を実現するアクラポビッチ製スリップオンマフラーや、ハイパープロ製フロントフォークスプリング/リヤショックなども貢献しているのだけれど、ホイールの軽量化なくして、現状のハンドリングは実現できないはずだ。

 

なお、今回の試乗では一般公道に加えてサーキットも走ったのだが、本気で飛ばすには前後ショックの設定がラグジュアリーな気がしたので、モノは試しと、伸び側ダンパーを前後とも5ノッチ強め、リヤのプリロードを+5mmとしたところ……。

 

予想以上にハンドリングが激変。姿勢変化を抑えつつ、やや前下がりの車体姿勢を作った結果、旋回性能が明らかに向上し(特にコーナー入り口の1次旋回が鋭くなった)、マシン全体がコンパクトに感じられるようになったのである。かなり安直にいじっただけに、この変貌ぶりには我ながらビックリしたものの、前後サスセッティングをスポーティな方向に振ったことが、GP1Sの美点をさらに引き立たせたのは事実だ。逆に言うなら軽量ホイールの魅力を本当の意味で味わうためには、サスセッティングの見直しが必要なのだなと、僕は改めて思ったのだった。

アクティブが所有するパーツ開発車

アクティブのデモ車として活躍するZX-14Rには、自社で取り扱うさまざまなパーツが装着されている。ダブルバブルタイプのスクリーンはゼログラビティで、ドライカーボン製バックミラーカバーはネクスレイ。LED式ナンバー灯を含めたフェンダーレスKITは同社オリジナル品

既存のゲイルスピード製アルミ鍛造ホイールに対して、約1?2kgの軽量化を実現したGP1Sだが、8000tの高圧プレスで熱間鍛造が行われる点や、1年間の無償品質保証制度が設定される点は、既存製品と同様。サイズはフロントが3.50-17、リヤが5.50-17と6.00-17の2種で、'90年代中盤以降に生産されたミドル?ビッグバイクに幅広く対応する。標準色は、パールホワイト、ブラックメタリック、ゴールドの3色だが、オプションとしてアルマイトカラーオーダーシステムも準備

GP1Sの基本価格は、F:9万7650円、R:13万1250円。ストリート用として仕様変更を行い、JWL規格を取得しているのに、レース専用のGP1とまったく同じ価格に抑えられているのだ(ただし、GP1のマグネシウム鍛造モデルは、F:15万7500円、R:17万8500円)

ノーマルの重量が左右で14.4kgであるのに対して、アクラポビッチ製スリップオンマフラーは左右で8.7kg。ウェーブタイプの前後ブレーキディスクはガルファーで、タイヤはブリヂストンS20を履く


ノーマルの重量が左右で14.4kgであるのに対して、アクラポビッチ製スリップオンマフラーは左右で8.7kg。ウェーブタイプの前後ブレーキディスクはガルファーで、タイヤはブリヂストンS20を履く

良好なタッチを示したラジアルポンプ式ブレーキ/クラッチマスターはゲイルスピード。EVOの名称が与えられたスロットルキットはアクティブ製で、14R用の巻き取り径はφ40/42mmに設定される

良好なタッチを示したラジアルポンプ式ブレーキ/クラッチマスターはゲイルスピード。EVOの名称が与えられたスロットルキットはアクティブ製で、14R用の巻き取り径はφ40/42mmに設定される