“段付き”の先駆的な存在 バイク用スクリーン専門メーカー アクリポイント
    取材協力/アクリポイント  取材・撮影・文/木村 圭吾  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
    掲載日/2013年4月3日
アクリル樹脂の特色を活かした2輪用スクリーンの専門メーカー

スーパースポーツ系やツアラーなどのバイクには欠かせない存在となっているカウリング。その構成素材の一部となっているのがスクリーンだ。空力性や防風性などに関する機能パーツでありながら、ルックスの変化も楽しめるドレスアップ効果という要素も併せ持っている。

 

今回フィーチャーするのは、鈴鹿に本拠地を置くバイク用スクリーンの専門メーカー、『ACRY-Point(アクリポイント)』だ。社名から察しがつくとおり、素材にはアクリル樹脂が用いられている。ノーマルスクリーンの大半に用いられている素材はポリカーボネートだが、これは大量生産に向いている反面、製作のための設備投資が大きく(スクリーンの種類ごとに“金型”を用意する必要があり、それ自体が高価)、少量、多品種を求められるカスタムパーツには向いていない。

 

結果的に、商品価格としてユーザーが負担するコスト面の低減という理由もあるが、アクリポイントがポリカーボネートではなく、アクリル樹脂を用いているのには理由がある。それは透明度の高さだ。例として水族館の巨大水槽が挙げられる。これは大判のアクリル板を貼り合わせて作られており、高い水圧にも耐えられるだけの厚みを持たせながら、中を泳ぎ回っている魚たちの姿は損なわれない、という相反性を両立させているのだ。さらに歪みの少なさもアクリル素材の特筆すべきポイントで、前述の透明度の高さと相まって、スクリーン越しに前方を見る場合でも、スクリーンの歪みによるライダーへの視覚的ストレスは極めて少ないと言える。

 

後述するが、アクリポイントでの製造工程はほとんど“手作り”に近い。もちろんすべて日本製だ。素材の特色を活かした高品質な製品は、サーキットユースからストリートまで高い支持を得ている。また、1枚の板に“異なる曲率”を組み合わせて中央部分を盛り上げる、“段付きスクリーン”の先駆けとなったのも、じつはアクリポントなのだ。

 

純正品のリプレイスとしてもカスタムパーツとしても

経年劣化した純正品のリプレイスとしてはもちろんのこと、防風性能などの機能性の向上や外観的なイメージチェンジも図れる。車両に装着されている画像のスクリーンは、現在開発中のミラースクリーン。表側にミラー加工が施された物で、周りの景色の映り込みと、見る角度によって異なる色合いを見せるため注目度は高い。その他の現行ラインナップにおける共通したディテールは画像を参照。

 

高い透明度と歪みの少なさ

アクリル自体は透明度が高く、また歪みが少ない特徴を持っている。そのためライディング中にスクリーン越しで見る視界も、非常に良好だ。

車検にも対応

スクリーンの縁には安全性確保のためにシリコン素材のモールが被せられている。アクリポイントのスクリーンならば、車検の際は装着したままで可。

ハンドメイドに近い製造工程にはスペシャル工具による手作業も

アクリポイントのスクリーンができるまで、工作機械は導入されているもののほとんどハンドメイドに近い。
その工程を見てみよう。

 

01
素材はアクリル板

元になるアクリル板は1,380×1,120mmの大きさで、これを3等分にして用いる。湿気が加工時に悪影響を与えてしまうため、カットする前の保管には画面中央の除湿器を稼働。

02
電気炉で加熱

3分割されたアクリル板は1枚1枚電気炉に入れて加熱される。280℃に設定された電気炉で約10分間過熱することで素材が柔らかくなり、成形加工が可能な状態に。

03
加工台にセット

加熱されたアクリル板を素早く成形するための台にセットし、その上から挟み込むように型を置いて締め付ける。この1枚から2枚のスクリーンを取り出すことができる。

04
圧空成形

台にセットしたら下から空気を送り、アクリル板を膨らませる。この方法は「圧空成形」と言われる。ちなみに板をセットする前に台も加熱されている。

05
木型はスクリーンに合わせて

圧空成形に用いられる木型。製造するスクリーンによってさまざまな形状が用意されている。アクリルの板厚はレース用が2mm、ストリート用が3mmとなっている。

06
プレス成形も

段付きスクリーンなどの曲率が一定ではない製品は、加熱後のアクリル板をFRPで作られた型にサンドイッチして成型する(プレス成型)。板の加熱前には炉で予備乾燥も行われている。

07
ケガキ線を引く

成形後、スクリーン形状のベースとなる物を被せてカットするライン(ケガキ線)を引き、カット工程に移る。

08
不要部分(耳)をカット

コンタマシンを用いて余分な部分(耳)を大雑把にカットする。切り落とされた不要な部分は回収し、リサイクルされる。

09
ひとつをふたつに

耳を落としたら丸鋸盤で真っ2つにカットする。コスト面の関係上、アクリポイントではこの工程で丸鋸盤を用いる。

10
ケガキ線に沿ってカット

再びコンタマシンへと戻り、ケガキ線から約1mm外側をカット。いずれの工程も易々とやっているように見えるが、それは熟練の技ゆえだ。

11
削り

製品の縁の部分全周ををベルトサンダーで整える。カットの工程でケガキ線から1mm残していたのはこのためだ。

12
仕上げ

工程で発生した摩擦熱によって、製品の周囲にはバリが発生してしまう。それを1つひとつ手作業で削ぎ落として仕上げてゆく。

13
自作のスペシャルツール

縁のバリ落としに使われているのは、半丸ヤスリを削って作られた、アクリポイント代表和田さんのスペシャル工具。切れ味を保つために何度も研いで繰り返し使われている。

14
穴あけ

ボール盤でカウルに装着するための穴を空け、切削工程は終了。この後、スクリーンの縁にシリコンモールが取り付けられて出荷となる。

15
製作工程は静電気との戦い

アクリル板自体が静電気を帯びやすい素材のため、工程の合間にスクリーン表面をキズつける原因となる切り屑を飛ばす。エアブローと静電気除去を同時に行う特殊なガンを使用。

16
静電気を除去するESガン

エアブローと静電気の除去が行えるESガン。先端から5,000Vの電気を放電させて対象物に当てる。それでも工程の度に静電気が発生してしまうため、合間合間に使用する。

アクリポイントのさまざまな製品を見てみよう

※表示は全て税込価格です

カワサキ ニンジャ1000

ストリート ミラーバージョン/3万9,900円

カワサキ ニンジャ1000

ストリート スモーク/1万8,900円

カワサキ ZRX1200DAEG

ストリート ミラーバージョン/2万7,300円

カワサキ Z1000R

ストリート クリア/1万2,600円

ホンダ VFR750R(RV30)

ストリート スモーク/1万3,860円

ホンダ NSF250R

クリア レーシングタイプ/1万2,600円

ホンダ CBR1000RR(2008?2011)

UP type/1万2,600円

ホンダ CB1300SB(2005?2009)

ストリート スモーク/1万8,900円

スクリーンの専門メーカーとして高品質な製品をユーザーに届ける

アクリポイントは国内でも数少ない、アフターマーケット向けの2輪用スクリーン専門メーカーだ。そのため豊富な経験とノウハウを持っており、自社製品のみならず、OEMとしての供給も多数行われている。ユーザーに納得、満足してもらえる製品作りが基本的なポリシーであり、そのための設備投資や研究開発にも余念がない。

 

代表の和田さんは「砂漠地帯でスクリーンを作りたい」と半ば冗談、半ば本気で言う。それは製造工程においては水分が大敵であり、湿気の少ない場所が良い、という意味だ。それに少しでも近づけるように、保管場所には業務用の除湿器を設置して24時間稼働させ、さらにプレス成形においては電気炉で3日間予備乾燥を行うなど、直接的には見えない部分にも気が配られているのだ。

 

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