Text / Kentaro SAGAWA Photo / Satoshi MAYUMI 取材協力 /ライディングアカデミー東京
普段から役立つ実践的なノウハウや方法をレクチャーしてくれるのは、バイクライフをもっと豊かにするためのライディングスクール「ライディングアカデミー東京」の佐川健太郎校長。せっかく手元にある大型バイク、安全に走りを楽しみ、満面の笑みで1日を終えたいもの。そのためには、ライダー自身のスキルアップと安全意識の向上、環境へも配慮したスマートなライディングを目指したい。それが“スマートテク”なのだ。
危険の正体は
自分自身かもしれない
だいぶ涼しくなってきましたが、ちゃんとした防寒対策さえしていればまだまだ快適に走られます。晩秋は一年でもっとも景色の美しい季節。秋の味覚と紅葉狩りを楽しみに出かけようではありませんか。
でも、ちょっと待ってください。皆さんは景色を楽しむ余裕を持っているでしょうか? 楽しいはずのツーリングが辛いものになっていませんか? 私の周囲にも「最近、ツーリングに行くのが怖い」という方が少なからずいらっしゃいます。「一緒に走る仲間に付いて行けず、つい無理してしまう」と言うのです。そんなことで悩むなど、くだらないと思うかもしれません。でも、集団の中で「自分だけはマイペースで」と割り切れるでしょうか。そうでなくても、夢中になって走っているうちにエスカレートして、我を忘れてしまっていることはありませんか…?
私が週末によく行くワインディングの売店の人が、興味深いことを言っていました。「事故が起きる日は重なって起きる」というものです。それはよく晴れた日の午前中が多いそうです。統計を取ったわけではないですし、その場所だけのことかもしれません。でも、私から見ても、週末の朝などはとても乱暴な運転をしているドライバーやライダーが多いように感じます。いわゆる“アサレン組”でしょうか。天気の良い日は早朝から4輪のスポーツカーや革ツナギに身を固めた腕自慢のライダーたちが、必死の形相でワインディングロードを走っています。
スピードと引き換えに彼らが求めているのは何なのでしょうか。理由はともあれ、これは大人げない行為だと言わざるを得ません。社会的にもコンプライアンス重視が叫ばれる中、他人の迷惑も考えない自分勝手な走りはそろそろやめにしませんか。ご存知のようにワインディングは公道であってレース場ではありません。ワインディングはツーリングを楽しむ場所であり、速さを求めるのならサーキットに行くべきです。サーキットは純粋にスポーツライディングを楽しむ場所ですし、いくらスピードを出しても誰からも咎められません。しかも公道よりずっと安全です。「ワインディングを攻める」という言葉がありますが、それは幻想にすぎないのです。
「我を忘れる」ことは「自分に負ける」ことです。危険の正体とは、もしかしたら自分自身であるかもしれません。バイクという素晴らしい乗り物を走る凶器に変えないためにも、自戒の念を持って、そう思います。
今回は説教臭くなってしまいましたが、一度正面から向き合ってほしいテーマです。
文/佐川 健太郎
高速道路は
「漫然運転」に注意
ツーリングでは高速道路を使って移動することも多いはず。そこで注意したいのが漫然運転です。高速道路は直線がほとんどで速度変化が少なく、景色も単調など、つい注意力が低下しがちになります。バイクでも睡魔に襲われることがありますので、疲れ切る前に休憩を取り、場合によっては仮眠をとるなどリフレッシュ策が必要です。たとえ10分間でもベンチでうたた寝するだけで、かなり頭はスッキリしますよ。
渋滞の末尾なども注意が必要です。ボーッとしているといつの間にかクルマの列が目の前に…! などという経験はありませんか? 一定速度で走り続けていると、速度感覚がマヒしてくることがあります。また、自分は気をつけていても、漫然運転や居眠り運転のクルマなどに追突される危険があります。こういうときこそ、ポンピングブレーキで後続車をけん制しながら、渋滞が始まる遥か手前から時間をかけて徐々に減速すべきです。また、夜など視界が悪く、特に危険性が増す場合は、渋滞の列の間に入ってしまったほうが安全な場合もあります。これは状況によりますが、危険が迫っていると判断したら、まずは身の安全の確保を優先すべき、と私は考えます。少なくとも後続車の動きについては常にバックミラーでチェックしておきましょう。
左コーナーはブラインドに注意! 左コーナーのほうが得意という人が多いようですが、実はブラインドになっていて視界が悪い場合も多くなります。コーナーに飛び込んだらクルマが駐車していた、なんてこともよくある話です。また、左コーナーは走りやすい分、オーバースピードで進入してしまい、コーナー後半で対向車線にはみ出すケースがよくあるので注意しましょう。 | 右コーナーはショートカットに注意! 右コーナーに苦手意識を持つ人が多いようです。コーナーの進入では目の前に迫るガードレールなどでプレッシャーがかかり、結果としてセンターラインを越えて直線的なラインになってしまうケースをよく目にします。対向車にとっては左コーナー出口になるため、ここでの接触事故が多くなります。速度を抑えて目線でラインを追うようにしましょう。 |
パーキング出入口に注意! 風光明媚なワインディングの展望台などは、観光目当てのクルマで賑わっています。そこで注意したいのはパーキングの出入口付近。特に自分の車線側に出入口がある場合などは対向車の動きを要チェック。写真のような場所はブラインドになったコーナーの先からクルマがいきなり右折してくることがあります。カーブミラーなどを活用しましょう。 | 冬の高架橋は凍結に注意! 高架橋だけでなく一般的な橋も含めて冬は凍結する危険性が高くなります。こうした構造物は地面より路面温度が低いためです。また、継目の鉄板部分なども濡れていると非常に滑りやすくなります。凍結の恐れがある場合はとりあえず速度を落として、車体をあまり傾けないようにしながら一定の速度で通過するのが基本です。 |
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