掲載日:2020年11月20日 レトロバイク・グラフティ
イラスト・文/藤原かんいち
80年代の原付バイクは通学の足に、ミニバイクレースに、2ストのスポーツバイクが大ブームだった。その中でも87年にホンダが販売したフルカウルのNSR50は、ワークスレーサーのデザインイメージ、50ccクラス最高レベルの7.2PSエンジン、12インチ・アルミ製キャストホイール、油圧式ディスクブレーキなど、小さいながら本格的な機能性を持っていたことから大人気となった。
若者から絶対的な支持を得ていたNSR50の高いポテンシャルを引き継ぎながら「日常生活でも使いやすいスポーツバイク」をコンセプトに生まれたのがNS-1。一番の特徴は50ccスポーツバイク初となるメットイン(ヘルメット収納型)機能。通常のガソリンタンクになっているところがパカッと開き、収納スペースとして使えるのだから画期的だ(それもフルフェイスヘルメットが入るサイズ)。メットインスクーターの台頭から生まれたのだと思うが、当時としてはかなり斬新だったと思う。この機能によって通勤・通学時の荷物なども手軽に持ち運べるようになった。ちなみに給油口はリアカウルの上部に、燃料タンクはシート下に配置されている。
そのような改良をすると普通はバランスが悪くなるのだが、ホンダは違った。軽量・スリム化を維持しながら車体やホイールを大型化、逆に乗りやすく余裕のあるポジションが取れるのがいいと大好評。
人気のNSRシリーズのグラフィックと高レベルのスポーツ性能、その対極にある日常で使える利便性をプラスした、まさに新時代の原付スポーツバイクであった。