林道ツーリングに役立つ実践テクニック

【Vol.08】ワダチを斬る! Part.2『縦横無尽のライン取り!』

掲載日:2009年08月19日 オフロードライテク講座林道ツーリング実践テクニック    

軽いトレールバイク(オフ車)でも、凸凹や傾斜のきつい林道では扱いが困難になることも多々ある。ツーリング先で足下をすくわれないために、ユウタロウ流の実践的な障害物越えをイメージトレーニングしておこう。的確な状況判断と操作のキホンが出来ていれば、体格は関係ない。それが身長165cmのユウタロウ流『チビテク』なのだ。

ワダチのなかはフカフカのゴロゴロ…

ワダチ対策の第2回は『ワダチを横斬る』だ。そのメリットは、なるべく走りやすいラインへ移動することにある。

ワダチは溝状の段差になっている。そのため普通に走るとすぐにバランスを崩してしまう厄介モノ。ワダチの横斬りは、ボディバランスやフロントタイヤの荷重抜き、半クラッチを使ってのウイリーなど、オフロードの基本テクニックを駆使する必要がある。だが、それらを自由自在にコントロールできる上級者は少ないはず。

「まず、後方に体重移動をしてみてください。それだけでハンドルに伝わるショックが少なくなって恐くなくなりますよ。ハンドルが振られるとバイクは不安定になりますから、なるべくフロントタイヤの荷重を抜くと効果的なんです。そうすれば、タイヤがワダチの段差に当たってもバイクは勢いを保ったまま直進するものです。

体の小さいライダーは、失敗したときに足が着きにくいのではないか、と心配するかもしれません。でも、ワダチにタイヤが入るとライダーにとっては地面が近づくわけですから、意外と足は着きやすいんです。

多くのワダチはタイヤのブロック跡のせいでグリップが悪い。特に上り坂はタイヤが土をかき上げるため、ワダチのなかは荒れている場合が多い。また、土が掘り返されると石が出てくることもある。ワダチを鋭角に横斬れず、多少ワダチ内を走らなければならないときは、ワダチ路面がとても不安定だということを覚悟しておこう。グリップの低いワダチにラフな進入をすると転倒する場合もある。深いワダチを低速で走るときは、写真のように足を出して左右のバランスを取れば転ばない。

ワダチ横斬りで大切なのは、なるべくワダチに対して余裕のあるスピードでアプローチすることですね。ワダチを超えるときの感触というか、バイクの動きに慣れれば自然とスピードを出せるようになります」

と、ユウタロウ講師のアドバイス。

① 少し遅いと思うぐらいのスピードでアプローチする。

② ワダチを斬る瞬間、後方へ体重移動をする。

まずはこのふたつを練習してみよう!

そもそも、ワダチを横斬るメリットとは?

イラストのように前方に落石があったなら、ワダチをまたいで隣のラインに移らなければ正面衝突をしてしまう。ワダチはバイクやクルマが通ったタイヤの跡が溝となったもの。レース後のコースには何台ものバイクが同じラインを走った際にできるフカ~いワダチが生まれる。オフロードは常に路面の状況が変化するものだ。路面が多様だからこそ、ライダーはなるべく走りやすく、リスクの少ないラインを選ぶ必要がある。それを可能にするワザのひとつが『ワダチ横斬り』なのだ。

ワダチを横斬る!!=ギャップの連続!!

① あえて真っすぐ登らず、ワダチを横斬りながら登頂にトライ。「エンデューロでは登りながらラインを変えていかないと、途中で転倒しているライダーを避けられない」 by ユウタロウ講師。

② フロントタイヤがワダチにさしかかった瞬間フロントアップをすることで、タイヤはワダチに落ちずにマシンの体勢はキープされる。フロントアップをするための後方体重移動+アクセルオープンという一連の動作のために、スピードを抑えて余裕を持つこと。

③ 前輪が着地するとともにふたつ目の浅いワダチに進入。このとき後輪はひとつ目のワダチに入っているので、バランスを崩さないことがもっとも大切。

④ 斜面にある大きな岩を避けながらふたつ目のワダチを乗り越える。岩をあまり意識するとバイクがそちらへ向かってしまうので、なるべく目線は遠くへ。

⑤ さらに浅いギャップをフロントアップで乗り越える。ここまでくると斜度が急になっているので、半クラッチも使って力強くフロントアップの動作をしないとタイヤを浮かせられない。

⑥ フロントアップ後は上半身をバイクの前へ移動させて、マシンがまくれないように前後のバランスを取る。このとき、ヒザを曲げて上体をハンドル寄りに沈み込ませるとフロント荷重に移りやすい。しかしハンドルバーにしがみつくと、小石や浅いワダチでもフロントタイヤが弾かれて、バランスを崩しやすい。ウデはなるべくリラックスさせてハンドルを支える程度に。

スタックしたライダーを避けるために横斬る

オフロードの障害物はなにも落石や水たまりばかりではない。レースともなると前走者を追い抜くときや、転倒しているライダーを避けるライン取りが重要。そんなとき、ワダチの有無にかかわらずラインを自在に変えられるテクニックが必要だ。特に上り坂では、避けられない=自身の転倒に繋がることもある。エンデューロ・シーンでは瞬時の状況判断とラインの見極め、そしてワダチを横斬るマシンコントロールが求められる。

失敗してもワダチなら身体が小さくともUターン可能

① もしもワダチのなかでスタックしてしまったら、まずはしっかりとした足場を探す。タイヤがワダチに沈み込んでいる分、足着きはよくなっているので、体の小さいライダーでも踏ん張れるはずだ。

② 素早いクラッチミートによってフロントタイヤを持ち上げる。中途半端な半クラッチだとタイヤが空転しやすいので、思い切ってクラッチを繋げる。

③ 最初は少しずつマシンを振る。ワダチが浅い場合は細かい切り返しをしてマシンの向きを変える。シートに太ももを載せるようにして、なるべく地面に着いている側の足を伸ばせるように。

④ ワダチからマシンが出たら、ライダーが安定する足場を見つける。ワダチから完全に脱出するときは、片方の足をステップに載せられるように、反対の足をしっかりと着いておく。

ワダチの真ん中ラインを1本橋に見立ててキープ

左右2本のワダチができている場合、ワダチのなかには石がゴロゴロとしていて路面自体もグリップが悪い。こんなときは、幅30cm程度のワダチの真ん中ラインを一本橋に見立ててみよう。この一本橋に乗り上げる際にも段差越えをしなければならないので難度は高いのだが、この場合はそこが一番走りやすいのだ。ワダチ斬りはいろいろなところで応用できるテクなのだ。

インストラクター

1978年12月、静岡県生まれ。7歳のときに父親の影響でバイクに乗りはじめ、15歳でエンデューロレースに初出場。以後、大きなレースに参戦を重ねて、02年には西日本WONETシリーズを制した。また04年には東日本シリーズSERIES初代シリーズチャンピオンに輝く。ISDEチリ大会のトロフィーチーム(日本代表)に選ばれ日本チームは12位。個人ではクラス34位という成績を残した。

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