
掲載日:2009年05月14日 オフロードライテク講座 › オフ走行の基礎テクニック
Gとは重力加速度(gravity)の略称。ここでは「スピードレンジを問わずに感じられる荷重の変化」のことを指す。「このGをライダーが積極的にコントロールすることで、オフロードバイクの楽しさは広がっていく」とは三橋選手のお言葉。オフロードライディングをより楽しむためのテクニック、それがG RIDEなのだ。
リアタイヤにGをかけるには、平地と同じライディングフォームをとることを知ったクラモチ。エンジンパワーが立ち上がる回転域を探りながら坂道発進の練習をしていると、トコトコと登っていけるようになった。
クラモチ 「リアタイヤをグリップさせられればヒルクライムできるんですね。これならどこでも登れる」
とニコニコ顔だ。
三橋 「じゃあ、次はこの斜面に挑戦してみようか」
と三橋さんにいわれたのが今回のシチュエーション。さっそく教わったやり方でトコトコのぼろうとするクラモチだが、リアタイヤは空転し、何度もエンスト。ついにバランスを崩し転倒してしまった。
三橋 「じつはね、トコトコだけじゃヒルクライムは攻略できないんだよ。路面が滑りやすかったり、斜度がきつい場合は、平地と同じライディングフォームをとっただけではGが足りなくて、リアタイヤを斜面に十分グリップさせられないんだ。だから今回のようなシチュエーションでは、バイクの加速力を使ってリアタイヤにGをかけてやるんだ。ということで、クラモチ君に質問。どこでバイクを加速させればいいか分かるかな?」
クラモチ 「斜面でグリップが足りないからトコトコ登りはできない。ということは、グリップが足りない斜面で加速するのは難しいってことですよね。あ、斜面になる前の平地で加速すればいいんですね!」
と、斜面の再発進で苦労した経験のおかげで、理路整然と答えることができた。
クラモチ 「よし、平地で加速してみます!」
と言ったまま固まるクラモチ。
クラモチ 「えっと、どれくらい助走距離をとればいいんだろう?」
三橋 「第2回のフロントアップを思い出してごらん。自分のバイクを加速させるトルクがいちばん出る回転数を使うんだ。その加速力を引き出せるぶんだけ助走距離をとればいいんだよ」
と聞いたクラモチは、斜面の10m前から助走をはじめた。しかしアプローチスピードは上がったものの、斜面でリアタイヤが振らつき、バランスを崩してしまった。
三橋 「勢いで突っ込んでも、リアタイヤにGはかかっていないからスリップするんだ。バイクを加速させるということは、リアタイヤが路面をグリップしているということなんだよ」
クラモチ 「そっか。加速し終わって、エンジンが吹けきった惰性でアプローチしちゃったんだ」
と、加速力を使う意味を理解したクラモチ。何回か練習した後、助走距離を5mにしても斜面を登ってしまった!
加速力を得る
平地で斜面を登りきれる分だけ加速しておく。自分のバイクの加速力がいちばん出る回転数を使うことがポイントだ。その回転域をつかむ練習方法は【vol.02】を参照してほしい。平地で加速して前輪が斜面に差しかかると、ドーンと当たる感触がある。この衝撃が、サスが縮んでタイヤにGがかかっている証拠だ。その衝撃でアクセルを戻さないように注意するのもポイントだ。また、斜面に入ったら腹筋を使って平地と同じポジションをとり、体が遅れないようにすることも忘れずに。
斜面途中でアクセルを徐々に戻していく
加速力が足りない場合は斜面で再加速しなければならないが、これはとても難しい。オーバースピード気味に進入しておけば、アクセルを戻したり、ブレーキをかけることで減速できる。斜面でアクセルを戻していくのは、再加速しないための予防策でもあるのだ。
登頂っ!!
前輪が斜面頂上の平らな部分に差しかかる時にはアクセルを閉じておく。この時にアクセルを開けたままでいるとフロントアップしてしまう。つまりジャンプ台から発射する状態。平地のポジションをとれず体が遅れていても、フロントの荷重が抜けた状態になり、まくれ上がる原因になってしまうのだ。
加速力を使うことを理解したクラモチは、助走距離を最初の半分以下にしても登れるようになった。それだけじゃなく、ステアケースに近い斜面も登りきってしまった。バイクのエンジン特性をアクセルでコントロールできたのが成功のポイントだ。
転倒!
あと少しというところでの転倒。しかしバイクを下りて押し上げてしまうと、かなり体力を消耗する。平地へ戻って再スタートするほうが、結果的に楽なのだ。
山側に立ってFタイヤを谷側へ下ろす
再スタートするにはバイクの向きを変えなくてはならない。必ずバイクの山側に立ち、バイクを引きずるようにしてフロントタイヤを斜面に沿って谷側に下ろしていく。
マシンを起こして谷側へ向ける
フロントブレーキをかけながらクラッチを切り、バイクを少しずつ前進させてバイクを谷側に向けていく。クラッチを断続的につなぎながらゆっくり下りる。
クラッチを切ってゆっくり下りる
ハンドルをいっぱいに切り、グリップを持って引き起こす。力を入れなくてもバイクが起き上がるはずだ。ギアを入れたままにしておけば、バイクがずり落ちることもない。
2007パリダカ・市販車無改造クラスで優勝を果たしたのは記憶に新しいところ。四輪ドライバー転向前は、BAJA1000、UAEラリー、ラリーレイドモンゴル、パリダカなどの海外レースで輝かしいリザルトを残してきた。豪快かつ繊細なライディングは未だに健在。
GARRRR編集スタッフではあるものの、オフロード経験はほぼゼロ。学生時代にカッコイイという理由で購入したKDX200SRも半日で焼きつかせてしまい、その後もストリート・オフローダーとしてRMX250S、DT200WRと乗り継いできた2スト好き。
愛車を売却して乗換しませんか?
2つの売却方法から選択可能!