【スズキ Vストローム800 試乗記】トータル的に見てBetter than the Best

掲載日:2024年09月02日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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SUZUKI V-STROM 800

スズキが展開するアドベンチャーモデルであるVストロームシリーズの最新作「Vストローム800」。日常使いから超ロングツーリングまで幅広くカバーするオールマイティなキャラクターが魅力の一台だ。

注目の並列2気筒エンジンを使う
新たな一手に打って出る

2023年春に登場したスズキVストローム800DEに続き、同年10月に登場した「Vストローム800」。ご承知の通りVストロームのイニシャルはスズキのアドベンチャーモデルに与えられるものだ。Vストローム800DEがオフロード走破性に優れた性能が与えられたモデルだったのに対し、オンロード走行に重点を置いたキャラクターとされたスタンダードバージョンである。

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最初に注目すべき点は新開発となった排気量775ccの並列2気筒エンジンであり、Vストローム800DE、GSX-8Sに続いて採用、さらにこのVストローム800以降にも同エンジンを使うGSX-8Rが追加されるなど、スズキの中核を担う新たなパワートレーンとして着実にモデルレンジを広げているのだ。

今回取り上げるストローム800が発表された際にやや疑問に思ったことは、既存モデルにVストローム650というミドルクラスのモデルが存在し、それと併売されていること。一般的にはスタンダードモデルが販売されてから特化した走行性能を引き上げた派生モデルが追加されることが定石なのに、今回はその逆パターンとなったことだ。

果たしてVストローム800とはどのような意図をもって開発されており、このモデルの立ち位置とは実際どのようなものなのだろうかというポイントに焦点を当てて試乗テストを行っていきたいと思う。

スズキ Vストローム800 特徴

長兄モデルはイキ過ぎ
弟分は若干不足、ならばコレ!!

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先ほど派生的モデル(Vストローム800DE)が出てからスタンダードバージョンであるVストローム800が追加されることに違和感を覚えたと書いたが、実はこの逆転リリースは同系の並列2気筒エンジンを使用しているGSX-8系で近しいことが言え、以前ほとんどのロードスポーツモデルでフルカウルモデルが先に出て、カウルを省いたネイキッドバージョンが追って投入されていたのに対し、ネイキッドの8Sが先でフルカウルの8Rが加わったという格好だ。

これはどう考えても並行して開発してきており、マーケティング戦略的な視点から順番を決めているのだろうが、それにしても8S→8Rの流れは世間的に”待ってました!”という反応だったのに対し、Vストローム800DE→Vストローム800は”モデルが追加された印象が薄い”という話も耳にしている。

私自身、Vストローム800DE、GSX-8S、GSX-8Rと発売順に試乗テストを行ってきた。と、思っていたら途中追加されていたVストローム800が抜けていた! と今回思った次第である。しかしVストローム800の試乗テストのオーダーを受けて、内心嬉しく思っていた。それはVストローム800に搭載されている新型パラレルツインエンジンがとても好物であることと、Vストローム800DEではオフロード走破性を考慮してフロントに21インチタイヤを採用していたのに対し、Vストローム800は私が最も好きなフロント19インチ、リア17インチというタイヤセットとされていることだった。

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率先して未舗装路にガンガン入り込んでいくような使い方ならいざ知らず、通勤通学のような日々の生活に密着した使用をしつつ、アドベンチャーモデルの持つダイナミックかつ優雅な乗り味を楽しむ、さらに目の前の道がオフロードとなってもへっちゃらよ! という究極オールマイティキャラ。

もちろんVストロームファミリーには長兄にあたるVストローム1050/DEが存在するが、やはり大柄な車格や溢れ出るパワーは持て余しがち。Vストローム650 ABS/XT ABSは今もなおベストアドベンチャーモデルと世界中で言われているが、若干物足りないと感じるライダーもいることだろう。

そこでだ。パフォーマンス効率の高い270°位相クランクであり、不快な振動を相殺する2軸1次バランサー「スズキクロスバランサー」を採用する800cc並列2気筒エンジンを搭載したVストローム800のお出ましというわけである。Vストローム800にじっくりと触れ、その本質を探っていきたいと思う。

スズキ Vストローム800 試乗インプレッション

生まれた時から最高の旅バイク
素性の良さがしっかり伝わる

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Vストローム800を目の前に、まず感じたのは思っていたよりもコンパクトな車体だということだ。まあスズキアドベンチャーのフラッグシップモデルであるVストローム1050/DEから考えれば排気量やパワーが抑えられフレームワークなどもそれに沿ったものとされているには違いないのであるが、テスト車両の隣に置いてあったVストローム650とほぼ同サイズに見えた。しかもシート高に関して言えば、Vストローム650 ABS/XT ABSと比べ10mm低い825mmとなっている。シート形状も前方部分に向かって細身となっているので、跨ってみるとこの手のアドベンチャーモデルの中でもかなり足つき性が良いと思えた。

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ただひとつ気になったのは、前後サスペンションのストローク量が多いのは良いのだが、両足を地面に接地して上から前後に体重を掛けると”ボヨンボヨン”とバネのような動きをすることだ。だから走り出す前は「大丈夫かコレ」と思っていたことを告白しよう。だがしかし、これが乗ってみるともの凄く感触の良い足まわりだったのでそれはじっくりと後述させてもらおう。

エンジンを始動し走り出す。ライディングモードはベーシックなBにセット、ストップアンドゴーの多いストリートでも低回転域からトルクがあり扱いやすい。シフトアップ/ダウンのどちらも作動するクイックシフターも感触が良い。初見ではコンパクトでシート高も抑えられたVストローム800ではあるが、やはり乗ってみるとVストローム650と比べて若干大きいと感じ、ハンドリングもちょいダルな印象だ。だがそこが良いと思えるポイントなのだ。

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前後17インチの今どきロードスポーツセットではこの程よいダルさを出すのは難しい。かといってフロントを21インチにしてしまうと”タチ”が強くオンロードでのコーナーリングをスポイルしてしまいがち。さらにパワー感も絶妙であり、トータルバランス的に見ると最良と言いたくなるようなセッティングなのである。

この手のモデルに乗ると、スロットルワークによるフロントアップなどを試したくなるのだが、トラクションコントロールの効きを強くセットしておくと、フロントタイヤは浮かない。逆にトラクションコントロールを切ればいとも簡単に棹立ちを楽しめる。電子制御デバイスを上手く活用し安全に、かつファンライドを楽しみたいところである。

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今回試乗テストのために借用した期間は長く、タンデムテストをはじめ高速道路や未舗装路にも率先して持ち込んでみた。エンジンに関して言えば駆動系との兼ね合いもあり3000~5000回転がスイートスポットとなっている(9500回転付近でリミッター作動)。そもそも実用度の高いエンジンキャラクターとなっていることもあり、どんなステージにおいても秀でて扱いやすいという印象だ。ライディングモードをパワフルなA(アクティブ)モードにセットすれば、より一層ダイナミックなライディングを楽しめるのも良い。渋滞路などではマイルドな出力特性のC(コンフォート)モードがマッチした。高さ調整が可能となっているスクリーンは大型であり、走行風を上手くいなしてくれる。Vストローム800DEのスクリーンよりも個人的には好みだ。

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先ほどサスペンションの話を少ししたが、当初ダンピングが弱いのでは、とか、プリロードが緩いのでは、などと思っていたものが、まったくそのようなことは無く、まず走り出すとしっかりと落ち着いたストロークの動きを得られ、さらに速度域を高めるとシャキッとした動きを見せつけてくれる。アップライトなライディングポジションは、車体を前後左右へと振り回しやすく、相乗効果的に”ライディングが上手くなった”気にさせてくれるのだ。

しかも250~1050までワイドレンジでラインアップしているVストロームシリーズに共通するライディングフィールをも持ち合わせている。だからVストローム250や650からのステップアップはもちろん、Vストローム1050からのサイズダウンであっても満足してもらえるはずだ。

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それと車両を借用した当日にどうにも直進安定性やコーナーリングでの倒し込みなど、タイヤの感触が素晴らしく良く思えたので調べてみたところ、使用しているダンロップのD614というタイヤはVストローム800の専用設計となっているようだ。つまりエンジンこそVストローム800DEやGSX-8系と同系ではあるのだが、ライディングポジション、スクリーンやキャストホイールなどの使い勝手をより高める装備、サスペンションのセッティング、さらには専用タイヤの設定まで、スタンダードバージョンとしてのあるべき姿を徹底して追求した上でVストローム800は開発がなされているのである。

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初代モデルでありながら旅バイクとしての高い完成度を誇ると感じられたVストローム800、アドベンチャーモデルを求めているならば候補に入れることをお薦めする。

スズキ Vストローム800 詳細写真

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775cc270度位相クランクの並列2気筒エンジンを搭載。スズキクロスバランサーを採用し振動を抑制する。低回転からしっかりとしたトルクを得られるので扱いやすい。

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フロントの足まわりはSHOWA製SFF-BP倒立フロントフォークに110/80R19サイズのタイヤをセットする。軽量7本スポークホイールも新開発となっている。ハンドリングは良好で手足感覚で扱うことができた。

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リアタイヤサイズは150/70R17で内部構造をVストローム800専用設計とされたダンロップD614を装着。ライディングポジションやサスペンションセッティングなどとの相性が良く、ショルダー近くまできっちり使うことができる。

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リンクを介してスイングアームにセットされたモノショックサスペンション。ダイヤル式のプリロードアジャスターが備わっており、走行シーンに応じて調整を楽しむことができる。

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始めてみた時に”おっ”と思ったのが大きなウインドスクリーンだ。Vストローム800DEとキャラクターを明確に分けており、よりツーリングライクとなった印象を与える。工具を使って高さを三段階に調整することができる。

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シート高は825mmで、これはVストロームファミリーの大型モデルでは最も低い数値だ(Vストローム650=835mm、Vストローム800DE=855mm)。絶妙な形状で足つき性も良い。グラブバーやキャリアも使いやすかった。

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クラッチやスロットル操作をせずにシフトアップ/ダウンが可能な双方向クイックシフトシステムを採用。なおOFFにすることもできる。ステップ位置はVストローム800DEと比べやや後方となっている。

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5インチフルカラーTFT液晶ディスプレイを採用。視認性が良く、情報も多岐に渡り表示することができる。ライディングモードやトラクションコントロールおよびABSの効きなども、シチュエーションに応じて変更することを楽しみたい。

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Vストローム800専用のアルミ製テーパーハンドルバーを採用。Vストローム800DEと比較してグリップ位置はやや前方にセットされている。スイッチボックスの操作性も良く、直感的に扱うことができた。

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灯火類はすべてLEDライトが採用されている。リアキャリアはオプションの純正トップケースベースにもなっており、サイドケースもオプションで設定されている。フルケースを装備してロングツーリングに出たいものである。

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燃料タンク容量は20リットル。今回使用したテスト車両のグリーンメタリック以外に、ブルーとブラックのカラーバリエーションが用意されている。車体価格はカラー問わず123万2000円(税込)。

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シート下にはバッテリーをはじめ電装系パーツが収まっているほか、ETC車載器や多少の工具が入る程度のスペースが確保されている。割とシンプルな構成なので整備性も良さそうだ。

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