
掲載日:2017年09月13日 試乗インプレ・レビュー
試乗ライダー・レポート/小川浩康 写真/長谷川 徹 記事提供/ロードライダー編集部
変更はスタイリングだけでなく、エンジンにも及ぶ。ロードモデルSV650のVツインをベースに、スズキ独自のめっきシリンダーやレジンコートが施されたピストンなど60点以上の箇所を改良し、フューエルインジェクションの制御をより緻密化。その結果、最新の排出ガス規制をクリアしながら最大出力を3psアップし、低中回転域のトルクも増大している。さらに、3モード(オフを含めて)のトラクションコントロールも新たに搭載し、舗装路での速さとダートでの扱いやすさを向上することで、アドベンチャーモデルとしての完成度が大幅に高められているのだ。
車体先端からタンク上部までつながるシャープなラインは、スズキ初のアドベンチャーツアラーだったDR-BIGを継承進化させたデザインで、Vストロームシリーズとしても、Vストローム1000とイメージを共通化している。ワイヤスポークホイール仕様がXTの呼称となる。
スタイリング変更では、燃料タンクのニーグリップ部分を旧モデルから5mm細くして足着き性を改善しているが、身長172cmのテストライダーでは片足のつま先が着く程度。しかし、少しお尻をズラせば足裏をベッタリ着くことができたので、スリム化の恩恵は確かにあった。ただし、車体サイズは兄貴分のVストローム1000とほぼ同等で、ミドルクラスとしては若干大きく感じる。その代わりポジションには余裕があり、リラックスして乗れるアップライトな姿勢も自然と決まる。
今回は1時間ほど高速道路を走行したが、ウインドスクリーンの防風性は40km/h程度からハッキリと体感でき、100km/h巡航時でも強い風圧を感じることはなかった。ちなみに6速100km/h巡航時のエンジン回転数は4500回転。レッドゾーンは1万回転からなので、エンジンにはまだまだ余裕があり、追い越し加速もストレスなく、不快な振動も皆無だった。シートの座り心地もいいので、長距離移動も快適にこなせるはずだ。
そうした高速巡航性能の高さよりも、さらに驚かされたのがワインディングだった。車体を寝かし込みやすく、切り返しもヒラヒラと軽いので、狙ったラインでコーナリングしやすい。見た目の大きさに反して取りまわしは軽快なので、むしろ積極的にコーナリングを楽しみたいハンドリングになっている。
この軽快な走りはダートでも発揮される。OEMタイヤはオンロード寄りながら、低回転からトルクが立ち上がることもあって、ダート路面でも予想以上のグリップ力を発揮してくれる。さらにトラクションコントロールの制御が絶妙で、介入具合が少ないモード1に設定すると、リアタイヤを適度にスライドさせながらダート走行することができる。このスライド量が自然なので、ダート走行も楽しいのだ。
正直、3psアップは分からなかったが、オンとオフで軽快な走りを体感できた。この軽快さは、どの回転域からでも出ててくるトルクの太さが基になっていて、これが新エンジンの大きな特徴といえる。オンとオフでの走破性を大きく向上した新型Vストローム650は、アドベンチャーモデルとして正常進化を果たしていた。
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