ヤマハ セロー250
ヤマハ セロー250

ヤマハ セロー250 – 的確なステップバランスにクイックレスポンスで応答

掲載日:2015年12月15日 試乗インプレ・レビュー    

テストライド/小林直樹  写真/長谷川徹 まとめ/小川浩康
※この記事はオフロード雑誌『GARRRR』の人気企画『小林直樹のオフロードバイク・テイスティング』を再編集したものです
※記事の内容は雑誌掲載当時のものです(GARRRR vol.284 2009年11月発売)

的確なステップバランスに
クイックレスポンスで応えてくれるセロー250

フルモデルチェンジで225ccから250ccへと排気量をアップしたセロー。車格も少し大きくなり、車重も増えたことで、「セロー250はトレッキング性能がスポイルされた」という話を耳にするようになった。でも、本当にそうなのだろうか? セロー250がデビューした2005年当初はキャブレター仕様だった、その後2008年にインジェクション仕様にマイナーチェンジとなった遍歴を持つのだが、キャブレター仕様はアクセルワークにマシンが付いてこない場面も確かにあったけれど、インジェクション仕様になったからはダルさを感じることはなかった。今回は、そういったことを確認する意味も含めて、セロー250でワンデイツーリングに行ってきたんだ。

市街地での軽快感は
カタログデータ以上

225時代はバックステップで、しかもステップ位置も高いという独特のポジションだったけれど、セロー250は自然とマシンの中心に乗れるようになった。これは燃料タンク形状のおかげなんだ。シート前方から急にせり上がっているから、パッと見では違和感があるんだけど、これが急ブレーキをかけた時などに体が前に行きすぎるのを防いでくれるんだ。それと適度に膨らんでいるから股とのフィッティングがよく、マシンコントロールもしやすい。

そしてそのマシンコントロールのしやすさは、インジェクションも貢献している。トレッキング向けにローギアード化された1速2速と、つねに確実なレスポンスを発揮するインジェクションが組み合うことで、低回転から力強いトルクを発揮してくれる。アクセル開け始めからマシンをグイッと前に進めてくれるから、実際に乗ってみるとカタログデータ以上の軽さを感じることができるんだ。

しかもエンジンは高回転まで伸びてくれるので、街中でもストレスのない加速感を味わうことができる。そうした乗って感じる軽さと、低シート高のおかげで、身長160cm以下のライダーでもセロー250の足着き性を苦にすることなく乗ることができる。わだちの底に足を着くことになっても、慌てることなく対応できるはずだ。それと、インジェクションになって始動性がかなりよくなった。セルスターターを押せば即エンジンがかかり、暖機運転の必要もなく走り出すことができる。そうしたことも軽快さを感じさせてくれるので、街乗りでの扱いやすさはかなりいいと断言できる。

高速巡航にも余裕が生まれたが
軽快さが気になることも

225時代の高速巡航は振動がすごく、苦行と呼べるほどのものだったけれど、そんなイメージはすっかり過去のものになっていた。排気量がアップしてエンジンパワーに余裕ができたセロー250は、振動も全然気にならないレベルに収まっている。エンジンの伸びのよさは高速道路でも発揮され、アクセルを開けるだけでグイグイと加速していく。車格が大きくなって安定性も増しているから、この加速感がすごく気持ちよく感じられるんだ。さらに、5速は高速巡航用にハイギアードな設定になっているから、マックススピードも向上している。高速道路での快適性は大幅に向上しているので、セロー250に乗っている以上林道へのアクセスで高速道路の利用をためらう必要はない。

ひとつ気になったのは、懐の狭さ。懐とはニュートラルなシッティングポジションをとった時にできるハンドルと上半身の空間のことなんだけど、セロー250のハンドル幅は狭く手前に絞られた形状なので、高速道路で振られた時に抑え込みにくさを感じることがあるんだ。街乗りではマシン挙動の速さが軽快感を生み出してくれたが、高速道路では外乱を受けると、その軽快さがフロント周りの振れを助長してしまう場面もあるんだ。そうした時のバランス修正をする際に、懐の狭さでやりにくさを感じてしまう。

もちろんニーグリップをしていれば大きくバランスを崩すことはないけれど、ハンドルを起こしてセットしたり、幅のあるものに交換したほうがよりコントロールしやすくなるはずだ。ハンドルに関しては体格や好みもあるから、これがベストとは言えないけれど、セロー250に乗っているのなら一度セッティングを変えて試してみて欲しいね。

エンジンの伸びと旋回性が
ワインディングで生きてくる

セロー250の伸びがいいエンジンセッティングはワインディングでも発揮される。驚くほどのパワーはないけれど、多くのライダーが扱いやすさを感じられるちょうどよさがあり、低いギアでアクセルを開けていくとコーナー出口で合わせやすくなる。そしてそこからアクセルを開けていけばエンジンはスムーズに回転を上げていき、高回転域でさらにもう一伸びしてくれる。だからマシンを前に進めてすばやいコーナー脱出もできるし、パワーをかけてリアスライドに持ち込むなんてこともできるんだ。

ワインディングでのセロー250は、アクセルワークに対してクイックなマシン挙動=旋回性を発揮してくれるとも言えるけれど、これはホイールベースに対してステップ位置が高めにセットされていることも影響している。ステップ位置が高いとライダーのポジションも高くなり、重心位置も高くなる。

さらにセロー250を倒し込んでいってもステップが路面と当たりにくいので、バンク角も深くとることができる。だから体が入れやすくなり、思いきり倒し込んでいける。エンジンの伸びとディメンジョンにボディアクションを加わえることで、ワインディングでの軽快な走りが実現されるんだ。

ただし、ステップ位置が高い分、イン側ステップを踏み込みすぎることも多くなり、その時はアウト側ステップがさらに高い位置に来ているのでバランス修正はやりにくい。それとフロントブレーキは柔らかいタッチでコントロールしやすいけれど、リアブレーキは踏みしろが少ない感じでロックしやすい。ブレーキの前後で入力バランスが異なるので、セロー250に乗り出したばかりのビギナーは違和感を感じてしまうだろう。

さらにストローク感の少なさからサスペンションに硬さを感じやすく、路面が荒れていたり速度抑止舗装が施されていたりするとリアが暴れてしまいがちだ。そうした路面で予期していない外乱を受けるとマシン挙動の乱れも速くて大きくなってしまうので、バランス修正には正確なマシンコントロールが求められる。ビギナーにはシビアな場面となってしまうので、無用なペースアップには注意してほしい。

セロー250の足着き性がいい車体と程よいパワーは、林道でもビギナーに乗りやすさを感じさせてくれる。コーナー手前でしっかりスピードを落とし、バランスを崩さないことを心がけていれば、トコトコと走破していくことができる。

でも、そこからスピードレンジを上げていくと、セロー250はライダーにすばやい切り返しを求めてくる。ステップ位置の高さがクイックな挙動を実現しているのだけど、その高さのせいでステップを踏み込みすぎてしまい、インに切れ込んでいってしまう。また、フロントサスペンションは剛性感が足りずリアはストローク感が少ないから、マシンが跳ねられやすく、ハイサイドを引き起こすこともある。

ステップを踏む、そして曲がっていくというのが一般的な特性だが、セロー250は踏む=曲がるというほどクイックな特性を発揮する。だから、イン側ステップで荷重したら、アウト側ステップはつねにバランス修正できるようにしておくことがコツとなる。ステップバランスをマスターしている上級者には扱いやすい特性で、リズミカルにヒラヒラとしたコントロール性を楽しませてくれるけど、マシン挙動がクイックすぎて安定性に欠け、逆に曲がりにくさを感じるようなら、それは「乗り手はタイミングを合わせられない中級者だ」とセロー250に言われている証拠なんだ。マシン任せではなく、ライダーがコントロールすることで走破性を発揮するのが林道でのセロー250なんだ。

225時代と比べるとセロー250は、サスペンションのストローク感が少なく、接地感ももう少し欲しい。そして、車格も大きくなってしまった。でも、足着き性のよさは変わらないし、取りまわしも悪くない。アプローチで加速してスピードを乗せていけば、重さを感じることもなく、セクションをクリアしていける。そしてそれを実現できるエンジンパワーを身につけている。セクションの走り方は変わったけれど、セローだからこそ行けるという場所は変わっていない。

トレッキング性能はそのままに、高速巡航もこなせるようになったセロー250は、走れる幅がさらに広がり、オンもオフもトータルに楽しめるようになっていた。変な先入観のせいで乗らないのはもったいないね。

もうひとつ走行距離が伸びていないが、これは日没後の冷え込みが予想以上に厳しく、帰路はトランポを使用したことが理由だ。やはり山は甘く見てはいけないと痛感した次第。燃費は28.5km/Lとやや伸びない結果となった。これはワインディングとダート区間での燃費が20.6km/Lに留まった影響だろう。小林さんのように高回転を多用できない一般ライダーであれば、30.0km/L以上をキープしてくれるはずだ。

今回のテストは、久しぶりに台風が日本上陸した数日後に行われたので、林道への影響が心配だった。けれど、目的地の北関東方面には目立った被害はなく、紅葉の林道ツーリングを満喫できた。今回のダートは、硬く締まったフラットダート、ガレ場、ウッズ、ブッシュ、川渡りといった内容。全走行距離は約250kmとなった。もうひとつ走行距離が伸びていないが、これは日没後の冷え込みが予想以上に厳しく、帰路はトランポを使用したことが理由だ。やはり山は甘く見てはいけないと痛感した次第。燃費は28.5km/Lとやや伸びない結果となった。これはワインディングとダート区間での燃費が20.6km/Lに留まった影響だろう。小林さんのように高回転を多用できない一般ライダーであれば、30.0km/L以上をキープしてくれるはずだ。

写真左/フロントアップで木の上に前輪を乗せ、そのままスタンディングスティル。小林さんのテクニックに加え、瞬発力のあるエンジンと車体バランスのよさがあってできる芸当だ。写真右/アプローチでしっかり加速しておけば、セロー250は岩盤でのウォールライドもできる。パワーアップしたことで重量増をカバーし、走破性の高さをキープしている

高速移動が大幅に楽になったことで、遠くまで旅できるようになった。マシンを倒し込んでいくと、予想より速くステップと地面が当たることもあるのがミドルクラスのクセと言えるが、セロー250にはそんな心配は無用。ボディアクションを駆使すれば、ワインディングでも速い!

YAMAHA SEROW DATA FILEは次ページにて

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