

掲載日:2013年12月20日 試乗インプレ・レビュー
取材・写真・文/三上 勝久 写真・取材協力/HUSQVARNA
リアサスのマウント方式は、KTMのエンデューロモデルがリンクレス方式を採用するのに対し、ハスクバーナではすべてリンク式となっている。一般にリンク式サスのメリットは、サスペンションのプログレッシブ特性、……低速時や小さなギャップでは柔らかく、大きな衝撃を受けた時には強く反発する特性……に優れる事だ。デメリットとしては構造が複雑になる、リンク部分が障害物に引っかかる事があるなどが想像される。
一方でリンクレスのメリットは構造がシンプルで、スイングアームの下面に突起物がないため障害物で引っかかる事がないなどがあるが、最大のデメリットは、リンク式と同じショックユニットではほとんどプログレッシブ特性が得られない事だ。そのため、KTMはショック単体でプログレッシブなダンピング効果をもつWP製PDSサスペンションを採用している。
KTMのリンクレスは、サスからの衝撃がフロントを押す方向にはたらくため、フープスや下りで扱いにくいという意見がある。しかし、同時にその特性によって、上れるか上れないかのような場所でバイクを押してくれるというメリットもあり、その乗り味に魅力を感じるファンも多い。
リンク式サスではそうした挙動は出ないため、上り坂で助けてくれる事がない反面、フープスなどでもサスがバイクを押す感じもないナチュラルな乗り味となるのがメリットだ。なお、フロンサスペンションには、すべてWP製の4CSが採用される。これは、右側フォークがリバウンドを、左側がコンプレッションを担当する、セパレートファンクションフォークだ。KTMの場合、上位モデルのシックスデイズシリーズのみに採用されるサスペンションだが、ハスクバーナでは標準とされている。そのフォークと接続されるトリプルクランプも、アルミCNC加工仕上げのファクトリータイプだ。
始動方式は、TE125がキック始動のみ、TE250、300がキックおよびセルスターター。4ストロークエンジン搭載モデルはすべてセル始動オンリー。始動性はとてもよく、通常の使用ではバッテリー上がりを心配する必要は無いだろう。ただし、電動ファンが回り続けるようなハードな乗り方をする人は、キックキットがオプションで用意されているので装着したほうがいい。
では、ここから各モデルのインプレッションを書いていこう。その前に一応書いておくが、ハスクバーナのエンデューロモデルは基本的に競技用モデルである。そのため、メインスイッチやヘルメットホルダーなどストリートバイクに付いているような装備は一切ない。2ストロークエンジン搭載モデルの潤滑方式はすべて混合ガソリンによるものだし、全機種ともに、一定の走行時間ごとに決められたメンテナンスを行わないとならない。高速道路を全開で長距離走るような使い方もやめたほうがよい。しかし、エンデューロ競技は当然のこと、ハードなアタックツーリングなどでは、ストリート走行を前提としたトレールモデルとは比較にならない高性能を味わえるモデルたちばかりだ。
エンデューロビギナーやオフロードを始めたいライダー、2ストロークエンジンを回す爽快感を味わいたいライダーには最適なモデルだ。2ストローク125というとピーキーな印象をもつ人も多いと思うが、このエンジンは極低速の粘りがあるのが特長で、斜度にもよるがアイドリング程度の回転域でもしっかりとトラクションして前に進んでくれる頼もしさをもつ。また、4ストモデルに比べるとまるで自転車のように感じるほどの軽さも魅力的だ。キック始動オンリーだが、足場が悪い場所以外では始動に手こずることはない。誰にでもお勧めできる傑作だ。
2ストローク250ccエンジン搭載モデルで、回せば驚異的なパワーを発揮するが、125同様に低速域のトルクも分厚いエンジンに仕上がっている。低中速域でのトルクの厚さは当然125以上で、上り坂ではトラクターのような登坂力を見せる。始動もセルなので、ハードなセクションにトライして失敗したときのリカバリーも素早く出来る。車格は125よりも一回り大きくなるが、それでもやはり4ストロークエンジン搭載モデルに比べれば軽い。僕のイチオシモデルだ。
エクストリームエンデューロで大人気で、最近はもはや定番と言える存在になっている2ストローク300ccモデル。250に比べ44cc、20%増加された排気量でさらにパワフル、トルクフルに仕上がっている。KTMの場合、シーンによっては250よりも300のほうがマイルドに感じる場面が多いが、ハスクバーナの場合はセッティングによるものか排気量分パワフル……、同時にハードにも感じた。ビギナーが乗りこなすのは難しいが、エキスパートには無敵の相棒となるだろう1台。
DOHC4バルブエンジンを搭載する4ストローク最小排気量モデル。シリンダーヘッドまわりをリニューアルして大幅にトルクアップしたKTM 250 EXC-F 2014モデルをルーツとするエンジンは、低速からしっかりとしたトルクを発生し、ストールもしにくい。2ストロークモデルのトルクカーブもフラットだが、この4ストロークエンジンはそれよりもさらに扱いやすい。とくに中~高回転域でのパワーコントロールがしやすいので、TE125と並び、これからのライダーにはイチオシでお勧め出来る。
FE250のボア×ストローク78×52.30mmを88×57.5mmとし、排気量を100cc多い349.7ccとしたエンジンを同一のシャシーに搭載したモデル。1.4倍にもなる排気量差の効果は実に大きく、爆発的な速さが味わえる1台だ。極低でのトルクも厚く、低速時でのストールも少ない。ただし、パワーとトルクがかなり強大なため、このマシンのポテンシャルを引き出すには相当の腕が必要だ。余裕あるパワーとトルクは、ツーリングユースに最適だ。
今回は試乗出来なかったのでインプレッションもなし。OHC4バルブエンジンを搭載する、エンデューロ世界選手権E1クラス用のマシンである。
FE450と基本を同じくする、OHC4バルブエンジンを搭載する最大排気量モデル。排気量は510.4ccだ。車名は、1989年に発表されたフサベルの初代モデルであるFE5001にちなんだものだ。燃料抜きで113.4kgと、国産250ccトレールモデルと比べても軽い車体に510.4ccエンジンを搭載しているため、フラットな場所で大きく開けるとまさに「すっ飛んでいく」感覚が味わえる。日本のエンデューロ競技で使うにはかなりの腕と体格が要求されるモデルだが、逆にエンジンを酷使する心配が少ないため、公道ユースのユーザーが使うのにも適しているモデルである。ラリーへの参戦や、長距離ツーリングをしたいライダーにとっては実に魅力的と言えるモデルだ。
なお、新生ハスクバーナは日本での取扱い会社が変わった。これからは以下が新しい問い合わせ先となる。
ハスクバーナ モーターサイクル ジャパン
TEL/03-6380-7020
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