
どんなタイヤを履いたらいいのか分からない!そんなタイヤ選びに迷えるライダーたちへのタイヤ指南。ユータロー先生がトレールモデル向けの市販タイヤ10本をテストした。自分の使い方に合ったベストなタイヤを探しましょ!!
舗装路とダートを走行し、グリップ性能、
制動性能、ツーリング性能などをテスト
メーカーから発売されているトレールタイヤ。次に何を履こうかなと考えていることも結構楽しいものですよね。でも、やっぱりタイヤ選びは悩むものです。タイヤを履き替える時って、だいたいがタイヤの溝やブロックがなくって交換する人が多いんじゃないかな? それで次のタイヤを履くと、以前の状態を比較したら何でもよく感じることありませんか? だからこそ、ブロックや溝のある新鮮なタイヤで乗りくらべた感想を聞きたいと思うのは、ライダーなら誰もが思うのではないでしょうか。
そこで、今回はチビテクRの先生でおなじみの内山裕太郎選手に10銘柄のタイヤ一気乗りでインプレをしてもらいました。彼自身、仕事でタイヤテストを行なうことはあっても、こんなに多くのタイヤを試すのは初めてとのこと。
テストしたタイヤはダート指向の強いモデルから、一般道に向いた舗装路重視のモデルまで幅広くチョイス。どのようなシチュエーションが得意で、どのような特徴があるのか。ユータロー先生に率直な感想を聞いてみました。次のタイヤはどれを選ぶか。じっくり読んで大いに悩んでくださいね。
タイヤテストは土や砂利などのごく一般的な林道と、舗装路のワインディングで実施。テストに使用した車両はチビテクRでも使用しているユータロー先生が所有するWR250Rです。グリップ性能や制動性能、タイヤノイズ、クッション性といったツーリング性能、さらにはタイヤ交換のしやすさ(ビードの固さ)といった全8項目を調べました。
これらは限界性能を調べるのではなく、あくまでも一般のライダーが走る速度域が対象です。その各テスト項目を10段階で評価し結果をチャートにしました。まったく走れないものはチャートの中心部分、最高得点はいちばん外側になります。また、適合路面をバーグラフで表示。それぞれの路面の大きさで、どの路面に向いているのかを表しています。
テストライダー 内山裕太郎
1978年12月生まれ静岡県出身。ヤマハ車の車体開発に携わっているユータロー先生は、タイヤテストも仕事の一環として行なっている。今回はタイヤ交換作業もこなし、ムダのないスムーズな作業を披露してくれた。
小石が転がり、ぬかるんだ土のダートから舗装されたワインディングを走行
まずは舗装路のワインディングを走行しタイヤを暖め、それから林道を走行。タイヤテストの2日前に雨が降り、林道の場所によってはぬかるんだ路面も残っていた。タイヤの限界付近の性能ではなく、一般ライダーに近い速度での走りが基準だ。
空気圧は1.0kgに統一
規定空気圧は車両によってまちまち。だが、概ねフロント、リヤともに1.5 ~ 2.0kpa(kgf/ cm2)程度に設定されていることが多い。今回はタイヤ空気圧を1.0kpa(kgf/ cm2)でテストした。
T63 林道ツーリングも安心の高いダート性能
T63は、今回のテストしたタイヤの中でも、ブロック間の距離がかなり大きい。そのためロードノイズは大き目だ。それを差し引いても、グリップ、ライフにすぐれるため林道ツーリングユーザーには人気が高い。
砂漠地帯を駆け抜けるダカール・ラリーで使用されていたミシュランのDESERTというレース専用タイヤのトレッドパターンをベースとしたのがT63だ。「ダートでの走行性能は非常に高いですね。ウェットなダートでのグリップ感もよく、安心して走ることができます。ミシュラン共通の特徴である、タイヤ自体の堅さがあります。ビードも固く、タイヤ交換では慣れていないと意外に時間を取られるかもしれません。ダート性能を考えたトレッドパターンなのでロードノイズもそれなりにあります。ただ、高速レンジに対応しているため、高速時の安定性にすぐれています。ミシュランタイヤは耐久性も高いので、高速を使って走りに行く林道ツーリングでも、長いライフを期待できます」
SIRAC ロード寄りのパターンでもフラットな林道なら
ぬかるんだ路面を除けば、しっかりとグリップする高い走行性能、ミシュランならではの耐久性の高さから、通勤通学はもとより、ダート走行を含むロングツーリングを楽しむユーザーからも人気の銘柄だ。
ビッグオフ向けのサイズもラインナップするSIRAC。舗装だけでなく、ダートもそこそこイケルという。「トレッドパターンからは想像できませんが、ダートでもドライ路面ならグリップしてくれるので、林道も臆することなく走ることができます。林道のコーナー立ち上がりでも、滑りにくいです。舗装路はトレッドパターンどおり、しっかりとグリップします。剛性が高く高速走行も安定していました。舗装路、ダートを快適に走れるので、ツーリングにも最適ですね。ロングライフコンパウンドを使っているので、デイリーユースでも長く使えることでしょう。剛性が高いことからもタイヤ全体は固く、タイヤ交換でビードを上げる作業も固いので慣れが必要です」
GP21/GP22 乗り心地よく、ダートのコーナリングもOK
ガンガン林道を走るユーザーよりも、舗装路&ダートをツーリングしつつ、日常的に街中も走るようなユーザーにうってつけ。衝撃吸収能力の高いタイヤは疲れにくく、長距離ツーリングにも向いている。
純正タイヤに採用されることからも、使いやすい標準的な性能が特徴。ダート、舗装路と路面が変わってもグリップ性能が大きく落ちることなく神経質にならないのもいい。タイヤの回転方向が決まっており、交換の際には注意したい。
TIRE SIZE | TYPE | ||
---|---|---|---|
GP-21 | |||
Front | 19inch | 70/100-19 MC 42P | WT |
21inch | 2.75-21 45P | WT | |
3.00-21 51P | WT | ||
GP-22 | |||
Rear | 16inch | 90/100-16 MC 51P | WT |
18inch | 4.10-18 59P | WT | |
4.60-18 63P | WT | ||
120/80-18 MC 62P | WT | ||
120/80-18 MC 62P | TL |
HONDAのCRF250Lに純正採用されているのがこのGP21/22だ。「トレールタイヤらしいブロックパターンを採用していて、舗装路、ダートとも心地よく走れます。注目すべきは、乗り心地のよさでしょうね。タイヤ全体的に柔らかい作りになっていて、その柔らかさがクッション性につながり、疲れにくい快適な走りを楽しめるんです。ただし、ハードな林道で大幅に空気圧を落として走る場合には、タイヤが柔らかいため下げ過ぎに注意したいですね。ビードが外れることを防止する、ビードストッパーを装着すれば安心です。ビードも柔らかく、このタイヤならタイヤ交換ビギナーもチャレンジしやすいのではないでしょうか」
GP-110 安定した走りと高いクッション性で疲れを軽減
独特なトレッドパターンは高速道路での走行を考えての形状。それでいて、林道などもそれなりに走れてしまう。ブロックが小さい分ゴツゴツした印象は少なく、バイクに履かせた時の表情もスマートだ。
GP-110は小さなブロックが連続するトレッドパターンが特徴的だ。「パターンから想像すると、舗装路は得意でもダートは……と感じるかもしれません。でも、ダートの直線では意外にグリップしてくれます。ただ、コーナーでのリヤの横滑りは早い傾向にあります。曲がる場合には、事前に充分減速してコーナーに入りましょう。タイヤの柔らかさ、トレッドの接地面積の広さから、フロントタイヤは安定性を重視した作りです。そのため路面が荒れていてもそれほど神経質にならず、リラックスして走ることが可能です。クッション性も高いのが疲れなくていいですね。高速道路を使い遠くまで足を伸ばし、軽めの林道を楽しむ、そんなスタンスが向いています」
GP-1 舗装路多めの、のんびりツーリング向け
懐かしいトレッド形状をもつGP-1は最新トレールモデルよりも、やや古めのビンテージ感漂うモデルにピッタリのパターン。ブロック形状が雪でもグリップするらしく、雪の中で使用しているライダーもいるという。
GP-1は、他のトレールタイヤに見るようなポピュラーなブロックパターンと違い、どこか懐かしいブロック形状をもつ。「小さめのブロックパターンの内部に、小さなグルーブもある特徴的な見た目ですね。舗装路、ダートとトータルでバランスもとれています。剛性がちょっと弱く、速度の高い走りは得意ではないですね。タイヤが全体的に柔らかいので、空気圧はあまり下げないほうがいいですよ。舗装路中心の走行で、比較的のんびり走るエントリーユーザーに向いています。ビードの柔らかさは、今回のタイヤの中でも特筆ものです。タイヤ交換を練習したい、交換作業にあまり自信がない、そんなメンテ初級者にも作業のハードルは低いですね」
タイヤでバイクの走りは大きく変わる!
今回10銘柄を一気に試乗しましたが、気になるタイヤはありましたか? 「ダート寄り、舗装路寄りとタイヤによる得意分野はありますが、ここに登場したタイヤなら、フラットダートはどの銘柄も走ることができますよ!
メーカーごとのタイヤの特徴も知っておくと、選択するときの基準になります。とくに、タイヤノイズとライフは国産と欧州メーカーで大きく異なります。日本の舗装路は路面がフラットのため、タイヤノイズがライダーの耳に入ってきやすい環境です。だから、国産タイヤは全体的に静か。一方、海外は日本ほど路面状況がよくない。だから、ロードノイズをさほど気にしない傾向にあります。ライフに関しては、欧州など海外では移動走行距離が長いため、必然的に耐久性の高いタイヤが好まれる傾向にあります。ライフの長いタイヤが欧州メーカーに多いのはこのためなんです。そのライフも、急加速やハードなブレーキングを抑えれば伸ばすことが可能ですよ。
さらに、ハンドリングの軽快さに関して言えば、タイヤの剛性とトレッド面の広さに影響されます。重いからハンドリングが鈍いとか、軽いから軽快、ということはありません。
剛性が高く、トレッド面が小さいほうがクイックになります。
最後に覚えておいて欲しいのが、今回紹介したタイヤがダートでの走行に強いといっても、あくまでもトレールタイヤであることに変わりはないということ。タイヤのグリップを過信して飛ばさず、安全マージンをもった走りを心がけるようにしてくださいね」
林道を走るのならタイヤ交換&パンク修理の練習もしておこう。パンク修理はできないよりもできたほうがいいに決まっている。その時、タイヤレバーを数本用意しておくと作業別に使い分けられて便利。いまいち作業が効率よく進まないのならば、道具を見直すべし。