2013年ダカールラリー レースレポート

2013年ダカールラリー レースレポート

掲載日:2013年01月31日 エクストリーム    

文/ダートライド編集部

KTMが上位陣を占める
ホンダもリタイア無しの健闘

2013年1月5日にペルーの首都リマをスタートした第35回ダカールラリーが、総走行距離8,420kmを経て1月20日にチリ・サンティアゴでゴールしました。今年、モト部門(2輪)で最も注目だったのが、24年ぶりにワークス参戦したホンダ(TEAM HRC)と、それを迎え撃つ常勝チームKTM(レッドブルKTM)の闘い。11連覇を果たして豊富な経験と膨大なデータを蓄積しているKTMに対し、ダカールラリー参戦プロジェクトが6か月前に始動したばかりのホンダがどのような活躍を見せるのか、当事者たちですら未知数だったのではないでしょうか。

 

ダカールラリー2013のコースは、リマをスタートしてチリを目指し、いったんアルゼンチンに入り、最終的にサンティアゴまで南下するルートで、このコース設定は南米に舞台を移してから初めてになりました。路面は、『パリダカ』の象徴でもある広大な砂丘だけでなく、大きな岩が点在するエンデューロのような区間、標高4,975mの高地を抜けるセクションもあります。気温は0℃を下回る場所から50℃にまで達するエリアがある過酷さで、またスピードが要求されるスペシャルステージは最長で593kmあり、1日でこれだけの距離を走り切る技術、体力が問われる、相変わらずのタフレースとなりました。スタートすると、ステージの前半は徹底した布陣のKTMに混ざって、ヤマハ、カワサキ、ハスクバーナと様々なマシンとライダーが上位に顔を出し、ホンダワークスも一桁フィニッシュを連発します。大きな動きが出たのは、マラソンステージと呼ばれる、過酷さが更に増す第7ステージと第8ステージでした。

 

レッドブルKTMのエース、シリル・デプレ選手。

レッドブルKTMのエース、シリル・デプレ選手。

どこまでも広がる大自然の中を、ライダーはひとりで駆け抜ける。

どこまでも広がる大自然の中を、ライダーはひとりで駆け抜ける。

通常、ラリーは1日のステージが終了するとライダーは休息を取り、その間マシンはメカニックたちによって夜通しでメンテナスを受けます。状況によってはエンジン交換をする事もあり、これがやがて『物量戦略で勝ててしまう』という図式が作られていくようになりました。ダカールラリー(パリダカ)は元々、特別な資格や巨大な資本、バックボーンを持たなくとも、冒険心とそれに見合った技量さえあれば誰でも挑戦可能で、時には勝利出来るのが面白さのひとつでした。このスタイルを取り戻す狙いで導入されたのが、マラソンステージという仕組みです。第7ステージが終わった時点でライダーたちはチームからのサポートが一切受けられず、彼らとは休息する場所も離されます。この状態のまま翌日を迎え、第8ステージ終了まで完全な個人で戦わなくてはならないのです。当然、マシンへのダメージ・摩耗に誰もが特に気を遣う事になり、よりイコールコンディションの闘いが展開されます。ただ、ここで面白いのが、ライダー同士のサポートは認められている点です。したがってこのステージでは皆、個人で持ちきれる工具や補修部品を積載してスタートしています。

 

そのマラソンステージで、まさに“らしさ”が発揮されたのが、KTMチームです。優勝候補のシリル・デプレ選手のマシンにメカニカルトラブルが発生し、第7ステージのビバーク地までは辿り着いたものの、ステージ順位は34位で、総合でも首位から5位に転落してしまいます。結果的にはなんと、同じKTMを駆るポーランドのOrlen Teamのライダー、マレク・ダブロウスキ選手とエンジンの交換をする事になり、また、その載せ換え作業には、レッドブルKTMチームライダーのカート・キャッセリとルーベン・ファリアが協力し、“これぞラリー”という展開になりました。彼らはライディングスキルだけでなく、メカニックスキルも高く、物量だけでは勝つ事が出来ない事実がリアルに証明されたのです。ホンダ勢は、このマラソンステージ初日を抑えた走りに徹し、トラブルを回避します。同じマシンが少なく、KTMのような大規模なメンテナンスは難しい、という点でもスマートな走りになったようです。ちなみに、このマラソンステージの合計距離は2日間で1,544km。走り切るだけでも大変な距離です。

 

あらゆる地形に闘いを挑み、時として大地に翻弄される事も。

あらゆる地形に闘いを挑み、時として大地に翻弄される事も。

マシンは1日かけてステージを走り切り、チームメカニックによって夜通しの整備が行われる。

マシンは1日かけてステージを走り切り、チームメカニックによって夜通しの整備が行われる。

続くマラソンステージ2日目、第8ステージはまたもラリーを象徴する出来事が起きます。広大な大地を駆け抜けるラリーの道程には、一般的に想像されるレースのような“コース”は存在しません。スタート地点とゴール地点があり、その途中には、通過が義務付けられたポイントはありますが、それ以外、ルートは自由です。コーステープのようなものは、どこにも存在しません。それだけにどの選手もナビゲーション能力の高さも問われる事となり、ルートブックを頼りに刻々と変化する地形や気象条件と闘いながら、チェックポイントとゴールを目指します。第8ステージは悪天候の影響でナビゲーションをミスするライダーが続発し、ここではKTM勢も大きく後退。唯一、ホンダのジョニー・キャンベル選手がステージ2位という結果を出しました。スタート順が後ろの方からだった為、前走者の走った跡が路面に多く残り、それをなぞっていく事でナビゲーションに大きくは苦労しなかったのと、コース後半の硬く締まった路面が彼のライディングスタイルにマッチして、一気にポジションアップをしたのです。8日目のステージを終えたところで選手たちはようやくチームと合流し、翌日は開催期間唯一の休息日です。ここでライダーもメカニックも、後半のステージに十全と備えます。

 

休息日を挟んだラリー10日目、第9ステージは今年の大会で最も距離が長い、593kmのスペシャルステージです。さすがにこの距離を一気に走り抜ける事は安全の面でも難しく、122km地点に設けられたニュートラルセクションを挟んで、レースは行われました。このステージを終了した時点で、トラブルで遅れた分を挽回したKTM勢が総合順位の上位を占めます。残りは5ステージになるのでまだまだ各ライダーとも挽回は出来ますが、ここまでできっちりまとめてきているところに、KTMの連覇への闘志が感じられます。ホンダは、エースに据えているエルダー・ロドリゲス選手がステージ5位、総合で7位と健闘しますが、サポートのハビエル・ピゾリト選手が総合12位。長距離オフロードレースの経験が豊富なジョニー・キャンベル選手は、転倒でマシンと肋骨を痛め、総合57位と大きく後退しました。ホンダは第11ステージを迎えた時点で大幅なランクアップを目指す為、リスクもはらみますがより攻める方針に作戦を変更します。コース設定としては決してイージーなわけではありませんが、残りのステージ環境などを考えての判断だったようです。エース格のロドリゲス選手がこれに見事応え、スペシャルステージのチェックポイント1で1番手タイムをマークする快走。続くチェックポイント2でも2番手のタイムと、総合順位を上げる為の快走を続け、ホンダチームの思惑通りの展開となります。

 

CRF450 RALLYで快走を続ける、TEAM HRCのエルダー・ロドリゲス選手。

CRF450 RALLYで快走を続ける、TEAM HRCのエルダー・ロドリゲス選手。

全日程の途中に設けられたマラソンステージでは、選手自身でマシン整備を行う事になる。

全日程の途中に設けられたマラソンステージでは、選手自身でマシン整備を行う事になる。

マラソンステージでシリル・デプレ選手とエンジンを交換する事になった、マレク・ダブロウスキ選手。

マラソンステージでシリル・デプレ選手とエンジンを交換する事になった、マレク・ダブロウスキ選手。

ところが、そのロドリゲス選手を不運が襲います。転倒ではなく走行中にマシンに絡まった木の枝がワイヤーを引きちぎってしまい、走行不能になってしまったのです。修理には50分近くの時間を要してしまい、結局、リザルトはステージ順位が30位、総合も9位で終わり、トップを走るKTM勢に肉薄する事が出来ません。経験豊富なキャンベル選手も負傷した肋骨の具合がかなり悪く、総合で48位。タイムを詰めたかったこのステージで、ホンダは思うように事が運びませんでした。その後も、気温が氷点下にまで落ち込む地域や、441kmの砂丘セクションなどを抜け、ここまで残ったどのライダーも相応のスキルを持っている為、タイム差がなかなか縮まらず、上位陣の順位に大きな変動が発生しません。この流れは最後の第14ステージが終了した時点でも変わる事はなく、KTMのシリル・デプレ選手の総合優勝が決定。これで、KTMとして12連覇を達成すると共に、彼自身も5度目の優勝を記録しました。ホンダもこの最終ステージを3人のライダーが無事に走り切り、CRF450 RALLYを使っての初参戦を見事、全員が完走で終えました。内、2人はシングルフィニッシュ(7位と8位)、1台は一度もエンジンを交換しなかったという、内容面でも充分なものだったのではないでしょうか。

 

こうして、1月5日にペルー・リマをスタートした449台(各クラス合計)のうち299台が、1月20日にチリ共和国首都のサンティアゴをパレード。誰もがこの日を迎えるまで結果が予測出来ない、タフでドラマティックなダカールラリー2013が幕を下ろしました。

 

14のステージを走り切り、シリル・デプレ選手は自身5回目の優勝と共に、KTMに12連覇をもたらした。

14のステージを走り切り、シリル・デプレ選手は自身5回目の優勝と共に、KTMに12連覇をもたらした。

TEAM HRCは3名のライダーが無事完走を果たした。ゼッケン33番は、ジョニー・キャンベル選手のマシン。

TEAM HRCは3名のライダーが無事完走を果たした。ゼッケン33番は、ジョニー・キャンベル選手のマシン。

総合順位
順位 ライダー マシン
1 シリル・デプレ KTM
2 ルーベン・ファリア KTM
3 チャレコ・ロペス KTM
4 イヴァン・ヤケス KTM
5 ホアン・ペドレロ KTM
7 エルダー・ロドリゲス ホンダ
8 ハビエル・ピゾリト ホンダ
40 ジョニー・キャンベル ホンダ
Dakar 2013 Best of Bike

KTM Dakar 2013 Highlights

 

 

常勝KTMから限定デザインのTシャツとキャップが登場

1位から5位までを独占したKTMから、参戦記念として限定デザインのTシャツとキャップが登場しました。共に、ファクトリーマシンである450 RALLYに跨ったシリル・デプレ選手がイラスト調にアレンジされ、そこにKTMのオレンジロゴがあしらわれたプレミアムなデザインにまとめられています。

TシャツのサイズはSからXXLまで5種類で、格3,885円(税込)。
【KTM Rallye Dakar Tee】
3PW135752 (S)
3PW135753 (M)
3PW135754 (L)
3PW135755 (XL)
3PW135756 (XXL)

キャップはフリーサイズで1種類。2,625円(税込)。

 

問い合わせ、購入は KTM正規ディーラー へ。

 

 

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