取材協力・写真/アオキトレックススポーツクラブ  取材・写真・文/淺倉恵介  構成/原付RIDE編集部
    掲載日/2012年7月17日

押忍!競争部が、シリーズを通じて追いかけている『2012 Battlax 青木ノブアツ杯』ですが、7月はレースがお休み。
そこで今回は、押忍!競争部スタッフが惚れ込んだ注目のライダーをご紹介。併せて、青木宣篤さんの最新情報もお伝えします。

ハルナの韋駄天、最速ジュニアライダー
目指せMotoGP!!吉田 翼選手

今回の押忍!競争部は特別編、本サイトが応援する『2012 Battlax 青木ノブアツ杯』で活躍するイチオシライダーをご紹介します。今回登場してもらったのは吉田 翼選手。青木ノブアツ杯の最速クラス、シニアオープンで3連勝。ライバルを寄せ付けない強さを見せつけている、将来有望なジュニアライダーです。青木ノブアツ杯ではシニアオープンの他に、ルーキーズ150にも参戦しており、こちらでもポイントランキング3位につけています。翼君の走りはとにかく強烈。コーナーが格別に速く、いとも簡単に前走者をパッシングしていきます。スタートで出遅れた場合でも、あっという間に順位を回復。気付けばトップに立っているという感じ、走りに華があるライダーなのです。

 

翼君がバイクに乗り始めたのは5歳。最初は、お父さんに“乗せられた”カタチで、翼君本人の意志ではなかったとのこと。オフロードでキッズバイクに乗っていたそうですが、親御さんによると当時はどちらかというとバイクを怖がっており、自ら進んでバイクに乗ろうとはしなかったといいます。それが変わったのが、小学校に上がりレースに出場するようになってから。

 

てきたようで、自分から『バイクに乗りたい』というようになりました」と、翼君のお母さん。翼君は、小学校5年生までキッズバイクレースに出場しシリーズチャンピオンも経験。小学校6年生からはミニバイクレースにスイッチし、そこでもメキメキと頭角を現します。現在は青木ノブアツ杯の主催者でもある、青木宣篤さんのチーム「アオキトレックスポーツクラブ」に所属して腕を磨いています。

 

翼君は現在、中学1年生。ご両親はレース活動に協力的ですが、学業も疎かにしてはいけないというスタンス。そのため、普段の翼君は普通の中学生で、部活動も行っています。中学では陸上部に所属し、長距離走の選手として活動していますが、それも翼君によれば「レースに必要な体力をつけるため」の選択というから、その目的意識の高さに驚かされます。今年からは「大人に混じってレース経験を積むため」に、筑波選手権のTC-miniクラスにも参戦。好成績を収めています。

 

そんな翼君の夢は、もちろんMotoGPライダーになることです。将来の目標を訊ねたところ「世界で活躍できるライダーになって、いずれは青木さんを超えたいです」と、力強い答えが返ってきました。これは少年らしい壮大な夢と片付けてしまうべきものではありません。翼君の走りには、夢と可能性が感じられるのです。レース通を気取るなら、吉田 翼という名前を覚えておいて損はないかもしれません。

吉田 翼くん

吉田 翼くん

栃木県出身、2000年生まれの12歳、中学1年生。キッズバイク時代は年間チャンピオンや全国大会優勝経験を持つ。青木ノブアツ杯をはじめ、様々なミニバイクレースに参戦中。青木ノブアツ杯の最速クラス「シニアオープン」と、150ccマシンで争われるロードレースの登竜門的クラス「ルーキーズ150」のコースレコードを保有する。翼君のレース活動の様子はブログをチェック。

翼君は、現在「青木ノブアツ杯」の他、桶川スポーツランド、日光サーキット、もてぎ北コース、筑波サーキットなどで開催されるミニバイクレースに参戦中。写真は青木ノブアツ杯、ルーキーズ150クラスでCBR150を駆る翼君。同クラスのコースレコードを保有し、常に表彰台に上がってはいるが未だ優勝はなく、第3戦を終了してポイントランキング3位。

 

グリッド上でレースのスタートを待つ翼君。その表情は、既に戦う男のそれだ。ヘルメットを脱げば、少年らしい天真爛漫な笑顔を浮かべる翼君だけに、そのギャップが興味深い。

ジュニアライダーがレース活動を行うには、家族のサポートが欠かせない。お父さんはメカニックを務め、お母さんはヘルパーとして翼君のレースを支えている。

“世界のノブアツ”こと、青木宣篤さんが語る
「ライダー 吉田 翼」

青木宣篤さん

青木宣篤さん

アオキトレックススポーツクラブ代表。ポケバイやミニバイクでレースを始め、国内ロードレースを経て世界GP/MotoGPに参戦。現在はスズキのMotoGPマシン開発ライダーを務める。今年(2012年)は、昨年に引き続きヨシムラスズキレーシングチームから鈴鹿8耐に参戦が決定、2009年大会以来の優勝を狙う。近年は、後進ライダーの育成や、バイクの啓蒙活動にも力を注いでいる。

「青木ノブアツ杯」主催者として、押忍!競争部ではお馴染みの青木宣篤さん。青木さんは、翼君が所属するアオキトレックスポーツクラブの代表でもある。愛弟子である翼君について、青木さんが語ってくれた。

 

「ある日、桶川サーキットで翼の走りを見たんです。まだ、翼が小学校の低学年の頃でしたからキッズバイクに乗っていたのですが、アタマひとつ抜けていましたね。『なんだコイツ、速っ!!』って、感じでした。その後、縁があってトレックスポーツで一緒にレースをやることになったんです。翼がチームに入ったことで、よりレース指向が強まりましたね。もともと、トレックスポーツはレーシングチームではなかったんです。バイクを使って遊ぼうというか、バイクの楽しみを拡げるための場でした。レース色が濃くなった理由には、翼の存在が影響したのは間違いないでしょう。」

 

その後、翼君はライダーとしてぐんぐんと成長。榛名ではいくつものコースレコードを持つ、チームのエースライダーに成長した。青木さんは、今年の春に翼君を伴いオーストラリアで海外合宿も行っている。

 

「世界には、速いライダーが本当にたくさんいるんです。それを知るためにも世界に出るのは早ければ早いほど良い。オーストラリアに連れて行ったのは、オフロードトレーニングの環境が揃っていたこともありますが、早めに世界を見せたかったということが大きな理由です。現地では24時間英語浸けでしたね。」

 

青木さんは翼君に対し、既に世界を見据えた指導を行っている。

 

「2年くらい前から、翼は毎日必ず英文でメールを送ってくるんです。最初は単語すら怪しかったのですが、今ではそれなりに英語になっています。これも、本人が世界に出るためには英語が必要だと考え、自発的に始めたことなんです。翼は、こんな風に努力の跡が見えるヤツなんですよ。育て甲斐があります。MotoGPに行かせてやりたい、そのためにボクの出来ることは何でもしようと考えています」

 

“世界のノブアツ”に、ここまで言わせる翼君。いや、ここはあえて「ライダー 吉田 翼選手」と呼ぶべきだろう。ガンバレ翼選手、目指せMotoGP!!

キッズバイクのレースを走っていた翼君。写真は2006年のもので、翼君もまだ幼いが当時より速さの片鱗は伺わせていた。

海外合宿が行われたのはオーストラリア。昨年の鈴鹿8耐で青木さんとチームを組んだジョシュ・ウォーターズ選手が、プライベートでオフロードコースを所有しており、トレーニングの場として提供してくれたのだという。ジョシュ・ウォーターズ選手は、今年の鈴鹿8耐もヨシムラスズキレーシングチームで青木さんとチームを組む。

青木さんの新たなチャレンジ
「NPO法人 青木ノブアツ2輪促進委員会」が発足

「青木ノブアツ杯」の主催をはじめ、キッズバイクの試乗イベントの開催など、かねてよりバイクの社会的認知度の向上に努めて来た青木さんだが、この度NPO法人「青木ノブアツ2輪促進委員会」を発足。目的に「次代を担うモータースポーツ選手の育成とスポーツ振興を図り、社会教育を推進する」ことを掲げ、青木さん自身が理事長に就任。今後はジュニアライダーの支援を中心に、本格的な活動を行っていく予定だ。バイク人口の減少や、若年層のバイク離れなど、バイクを取り巻く環境は楽観できない状況。そんな時代だから、青木さんの活動に注目し、また我々ライダー一人ひとりがバイクを楽しむ環境づくりを考えていきたい。

MotoGPテクニックを学ぶチャンス
青木さんのライディングスクールがMAZEサーキットで開催

来る2012年8月16日(木)、青木さんがインストラクターを務めるライディングスクール&サーキット走行会イベントが日本海間瀬サーキットで開催。青木さんのライディングテクニックを直接教わることができる、またとないチャンスだ。ライダーのスキルに合わせたレッスンクラス、スポーツ走行クラス、スクール走行クラスの3クラスを設定。定員は各クラス20名の先着順なので、参加希望者は急いでエントリーを。申し込みは間瀬サーキットWEBページから。