掲載日:2012年10月22日 原付漫遊記 › 原チャでchacha茶
文・写真/ 野岸“ねぎ”泰之 写真/野呂瀬悦史 取材協力/東京湾フェリー
ところで、鋸山の見所は遠景だけではないんだな。山頂から延びるハイキングコースのような山道を少し歩くと、日本寺というお寺の山門があり、ここからさらに階段状の道を15分ほど歩くと、突然広場が出現する。そこには、日本一といわれる大仏様がなんとも穏やかな顔で出迎えてくれるのだ。ツーリングでは、時間に余裕がないとなかなかここまで来る人は少ないみたいだけど、この唐突な出現感は、まるで敵の秘密基地を探し当てた偵察兵士か、古代遺跡を発見した探検隊のような気分にさせてくれて、けっこう楽しいんだよね。
さて、ここからは原付の散歩へと戻るとしよう。房総半島といえばシーサイドランが定番だけど、今回は海辺ではなく、内陸部へとハンドルを向けてみる。実は、どうしても見てみたい光景があるのだ。国道127を保田で曲がり、県道34号へとスイッチ。片側一車線ののんきな道を30分ほどで、小さな看板を頼りに県道から脇道に入って田園地帯の細かい道をくねくねと分け入っていく。千葉は東京に近い湾岸部を中心に、どんどん開発が進んでいるけれど、このあたりは本当にのどかで、昔ながらの日本的な風景が広がっている。
やがて風景が開け、カメラ片手の人が急にワラワラと出現したな、と思ったら、ゆるやかな斜面と、段々状に広がる田んぼが目に入った。ここが、訪れてみたかった「大山千枚田」。千枚田とはいわゆる棚田のことで、傾斜地に階段状につくられた何枚も連なる田んぼのこと。ここは東京から一番近い千枚田として知られ、田んぼの数は大小あわせて375枚にもなるという。日本で唯一、雨水だけで稲を育てる「天水田」でもあるとか。
ちょうど稲の刈り取りシーズンで、すでに刈られた部分とまだ黄金色の稲穂をたたえた田が混在し、これはこれで面白い光景を形作っている。それにしても、ただ単に斜面に田んぼがあるだけなのに、どうしてこんなに美しいんだろう……房総半島のほぼ真ん中、住所としてはすでに鴨川市にはいっている場所に、千枚田がきちんと保存され、残っていることに、本当に驚いた。いやぁ、日本にはまだまだ自分が知らないところ、素敵な場所がたくさんあるんだろうねぇ。これだからお散歩ツーリングはやめられない。
左/大山千枚田を訪れたときには、ちょうどかかしコンテストを開催中。手作りのさまざまなかかしがにぎやかに出迎えてくれた 右/付近は千枚田ばかりでなく、普通の田園地帯でもある。黄金色に実った稲穂を見ながら駆け抜けるのも爽快
山頂から日本寺へと向かう山道には、岩のトンネルあり、あちこちに羅漢像ありで、ハイキングコースとしても面白い
山中に忽然と現れる日本寺大仏。像高は31mで、岩に掘られた磨崖仏としては日本最大とか
独特の美しいS字カーブを描く大山千枚田。日本各地にはまだまだ千枚田が残されているけど、東京にこんなに近い場所にもあるんだ、というのが感動的!!
このあとは腹ごしらえ、というわけで、県道に戻って少し鴨川市街のほうに走ったところにある「名代亭」へと向かった。ここの名物は、その名も「おらがX丼」。鴨川市では町おこしのご当地グルメとしておらが丼、という丼を提唱している。鴨川産の食材を使い、季節感とヘルシーさを考慮する、などの規定があるぐらいなので、それぞれのお店がけっこう自由に創作しているらしい。ここ名代亭は2段重ねの海鮮丼。Xの意味は、その日獲れた魚に応じて内容が変わるため、なんだとか。運ばれてきたX丼は、新鮮な魚の切り身が形よく並べられていた。これがなんと、大山千枚田をイメージしたものだとか。まぁ再現度はビミョーな感じだけど、ボリュームたっぷりだし、こんな地元愛にあふれた工夫はいいよね。
さて、お腹がいっぱいになったら、再び海沿いに戻って恒例のお茶タイムと行きますか。フェリー乗り場にほど近いところに、おあつらえ向きの防波堤を発見したので、海を見ながらコーヒーを楽しむことにした。今回は、コーヒー販売の老舗、キャピタルコーヒーのハンガードリップ・リッチという商品を持ってきた。港に出入りする漁船や、竿を振る釣り人を遠くに見ながら、「フェリーを使うと千葉はあっという間だな」とか「房総は海もいいけど、内陸も面白いなぁ」など、とりとめもないことを考える。いつもながら、こういう時間って贅沢だよねぇ。
のんびりしていたら、だいぶ日が傾いてきた。東京湾フェリーのホームページには 夕日ガイド があって、その日の夕日が楽しめる便が簡単にわかるようになっている。今からだと、ちょうど船内から夕日が見られそう。最後にこんなお楽しみがあるなんて……フェリーの旅、クセになりそうだなぁ。乗り場のそばでお土産を買って、帰路に着くとしよう。今回も充実のお散歩ツーリング、次回はどこでchacha茶しようかなぁ~?
「フェリーを使ったお散歩ツーリング、楽しかったなぁ」。長いようであっという間だった1日を、夕日と共に振り返っております
房総半島を横断する県道34号線は、これといって特徴はないけど、のんきで走りやすい道。まさに原付お散歩ツーリング向き
左/大山千枚田をイメージした、という名代亭の「おらがX丼」。海に近いから当然新鮮。観光地でもある房総半島で、このボリュームで1,300円は安い!! 右/名代亭はテレビや雑誌の取材も多いらしく、店内にはサインが多数。そして熱烈な千葉ロッテマリーンズファンらしい
左/金谷のフェリー乗り場脇には、お土産市場やレストランが入ったマーケット「the Fish」がある。乗船前に買えるのが便利だね 右/東京湾フェリーのHPに案内があるからか、夕日を楽しみにしているお客さんも多い様子
防波堤にて、東京湾を眺めながらのお茶タイム。潮風と、傾き始めた日差しが心地いい。いつもながら、至福の時だ
まるで250ccクラスのようにボリューミーな車体は安定性が高く、そのボディサイズを感じさせない力強い加速力により、街中から郊外まで快適な走りが可能。大型のウインドスクリーンや、左ハンドル脇にあって給油しやすい給油口、40リッターの大容量を誇るシート下スペースなど、ツーリングマシンとしての実力も申し分ない。
ツーリングプチ情報
東京湾フェリー
神奈川県横須賀市久里浜~千葉県富津市金谷を結ぶ、東京湾を横断するフェリー。
所在地/
久里浜港:神奈川県横須賀市久里浜8-17-20
TEL/046-836-4213
金谷港:千葉県富津市金谷4303
TEL/0439-69-2111
HP/http://www.tokyowanferry.com/
大山千枚田
千葉県で唯一であり、東京から一番近い千枚田。日本の棚田百選にも選定されている。
所在地/千葉県鴨川市平塚540付近
名代亭
魚介、海鮮料理を中心としたお食事処。房総の新鮮な地魚をリーズナブルに味わえる。
所在地/千葉県鴨川市寺門148-1
営業時間/11~20時
定休日/木曜日
TEL/04-7097-0225
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