
今回試乗したのはオーヴァーレーシング製パーツで完全武装した新型モンキー125。言わば“全部盛り”カスタムである。マフラーは発売されたばかりのTT-Formula フルチタン アップマフラーを装備。モンキーのオリジナルの雰囲気を生かしたアップタイプの取り回しが特徴で、チタン製エキパイにオーヴァーレーシング独自の異型5角断面形状を持つレーシーなTT-Formulaサイレンサーをセットしたハイグレードモデルだ。
見た目の第一印象で「これは走りそう」と直感。短く切り詰められたコンパクトなマフラーはもちろん、低く構えたセパレートハンドルやダウンフェンダー、見るからに高剛性なアルミ製スイングアームやバックステップなど全身に走りのエッセンスが詰め込まれている。
エンジンをかけると「ボッボッボッ」と逞しいアイドリング音。エンジン自体はノーマルで、始動からクラッチのつなぎ、走り出しもスムーズだ。きっちり排圧もコントロールされて極低速でもよく粘ってくれるためUターンも不安がない。
気持ちいいのはやはり中高回転域だ。アクセルを大きく開けると弾けるサウンドとともに元気よく加速していく。高回転もきれいに伸びて、ピークを過ぎてからの落ち込みが少ないのもレーサーっぽい。開発スタッフに聞くと、計測データでは全域でノーマルを上回る出力特性を実現しつつ、ピークでも約0.5psアップを記録しているそうだ。このクラスでは大きな効果といえる。
マフラーの効果でパワフルになったのは当然として、走りがより軽快かつスムーズになった理由は車体にもあるようだ。前後ホイールは軽量な鍛造タイプが採用されてバネ下に軽快感が出ただけでなく、ナイトロン製リアショックがこれまたいい仕事をしてくれている。
ギャップでの吸収性に優れ、しかも余計な動きで姿勢を乱さないので後輪のトラクションを効率的に路面に伝えてくれるのだ。タイヤもノーマルのブロックタイプからグロムと同じロードスポーツ用に履き替えられていることもある。こうした些細な積み上げがマシンを速くしていくことを熟知しているオーヴァーならではのセットアップだと思う。
コーナリングではさらに感動した。もちろん、サーキットではないので自制心を持って走っているが、それでも乗ってすぐにハンドリングの切れ味が伝わってくる。
まず、アルミ削り出しのハンドルとステップによるカチッとした剛性感からくる応答性の良さに目を見張る。ちょっと入力するだけでパタンと倒れ込む機敏さはノーマルにはない感覚で、それでいてコーナリング中はピタッと安定している。しっとりとしたリアサスペンションと、剛性感としなやかさを両立したスイングアームのおかげだろう。
ライディングポジションも攻めるほどにピッタリ決まってくる。跨った瞬間はステップ位置がだいぶ高めに感じたが、コーナリング中は上体の軽い前傾に見合った位置にセットされていることが分かる。ノーマルの乗車姿勢は上体が直立してしまうのに比べ、だいぶロードスポーツ寄りの設定になっていることは明らかだ。
前傾したライディングポジションのおかげで自然とフロント荷重も稼げるため、タイヤ温度さえ上がれば安心してコーナーに飛び込んでいける。加えて、マフラーやホイール、スイングアームによる軽量化の恩恵も少なくないと感じた。
今度はマフラーをGP-PERFORMANCE フルチタンに付け替えて試乗してみた。音質はややマイルドかつクリアで、ピークエンドまで伸び切る上昇感が魅力。ピーク過ぎでのオーバーレブ特性にも優れるなど、よりレーシングマフラー的な出力特性が際立っていた。
開発スタッフによれば、吸気系を調節すればさらにパワーアップも期待できそうとのこと。マフラーひとつで、これだけ変わるというのが楽しいではないか。ちなみにモンキー125用マフラーとしては、既にリリースされているダウンタイプのTT-Formula、伝統的な円筒型サイレンサーのGP-PERFORMANCEシリーズも含め、現在7タイプのバリエーションが揃っている。
オーヴァーレーシングが提案するモンキー125カスタムは、元々ノーマル車両が持っている素性の良さを引き出しつつ、レーシングコンストラクターとして蓄積された“走り”のエッセンスを組み込んでバランスさせた本物志向のカスタムと言える。街をただ流していてもカッコつけられるし、週末に近場のワインディングでスポーツ性能を味わうもよし。ボルトオンパーツでここまで仕上げられることも含め、大人の趣味としても手応え十分の楽しみがあると思う。
今回メインで試乗した最新作「TT-Formula フルチタン アップマフラー」。モンキーのオリジナルスタイルをOVER流にアレンジした軽量ハイパフォーマンスなフルエキ。性能はもちろん、チタンならではの美しい焼け色とノーマルとは異なる機能的なパイプワークも魅力だ。
車体に添うようにスリムかつコンパクトにまとめられたレイアウトが印象的。サイレンサーをこの角度から見ると、TT-Formula 独特の異型5角断面形状であることが良く分かる。
スポーツ走行に適した適度な前傾ポジションを作るセパレートハンドルキット。バーエンド部分でノーマルから85mm低く、約30mm前方に設定。アルミ削り出しによる質感の高さも魅力だ。
ハンドル位置は2段階調整可能で、10mmのスペーサーを取り外せばノーマルから95mm低く設定できる。また、トップブリッジのマウント部分のボルトにより絞り角を3度調整できる。
高剛性・高品質なアルミ削り出しバックステップ。ノーマル対比で105mmBACK/40mmUPを基準として最大120mmBACK/50mmUPまで4ポジションの調整が可能。
フットレストとペダルはベアリング内蔵の同軸タイプとすることで、カチッとした節度感のあるシフトワークを実現。ペグの位置も微調整が可能だ。
スーパーバイクレーサー同様の目の字断面構造を持つアルミ製スイングアーム。元々の高剛性に加えスタビライザーを装備するなどまさにレーシングスペック。チェーンアジャスターもアルミ製で、コの字型一体構造により正確で迅速な調整が可能。
OVER GP-10アルミ鍛造ホイール12インチ前後セット。強度と軽量化のバランスを図ったオリジナルY字スポークデザインで、見た目の軽快感と軽量化を実現。重量は前後トータルで4kg弱!
アルミ削り出し部材を使ったダウンフロントフェンダーキット。オフロードテイストのノーマルに比べ、ぐっとロードスポーツ的なスタイルに変身。スタイルアップに加え、泥はね防止と若干のスタビライザー効果も期待できる。
リアビューを引き締めるアルミ削り出しフェンダーレスキット。しっかりとした作りでリアまわりをすっきりとコンパクトにまとめつつ、ライセンスプレートホルダーとしても確実に機能。
サイドビューをスタイリッシュに演出するアルミ削り出しサイドカバー。レーザー加工のロゴと3D加工されたリブがプレミアム感を引き出す。専用設計の取り付けステーも標準装備。
万が一の転倒時にマシンのダメージを軽減するスライダー左右キット。専用のアルミ削り出しベースに取り付けるタイプで特にエンジンやマフラーまわりの保護に効果的。
ナイトロン製リアショックアブソーバー。スプリングプリロード、圧側ダンパー(高速・低速)、伸び側ダンパーに各調整機構を備えた本格的フルアジャスタブルタイプ。
TT-Formula フルチタン アップマフラー
オリジナルのモンキー125同様のアップマフラーにレーシーなTT-Formulaサイレンサーをセット。材質はフルチタン。重量約1.7kg (ノーマル5.2kg)。音量85db (ノーマル78db)。ピークパワー9.3ps (ノーマル 8.8ps)。政府認証マフラー。税込価格8万6,400円
ステンオーバル アップマフラー
コスパに優れるオールステンレス製のアップタイプマフラー。TT-Formula同様、標準装備のアルミ製ヒートガード付き。重量約2.3kg (ノーマル5.2kg)。音量85db (ノーマル78db)。ピークパワー9.3ps (ノーマル8.8ps)。政府認証マフラー。税込価格5万9,400円
TT-Formula RS フルチタン
ダウンタイプのフラッグシップモデル。材質はフルチタンで軽量。重量約2.1kg (ノーマル5.2kg)。音量80db (ノーマル78db)。政府認証マフラー。税込価格7万7,760円
TT-Formula フルチタン
RS同様の異型5角断面形状サイレンサーにエンドピースを装備したモデル。重量約2.1kg (ノーマル5.2kg)。音量80db (ノーマル78db)。政府認証マフラー。税込価格7万1,280円
GP-PERFORMANCE フルチタン
伝統的な円筒形サイレンサーにエンドピースを装備した軽量モデル。重量約2.0kg (ノーマル5.2kg)。音量80db (ノーマル78db)。政府認証マフラー。税込価格7万1,280円
GP-PERFORMANCE XL フルチタン
テーパー状の図太いテールパイプとブラックショートサイレンサーが迫力の最軽量モデル。重量約1.8kg (ノーマル5.2kg)。音量81db (ノーマル78db)。政府認証マフラー。税込価格7万5,600円
GP-PERFORMANCE フルチタン RS-R
性能を突き詰めたレース専用フルエキゾースト。重量約1.8kg (ノーマル5.2kg)。音量91db (エンドバッフル標準装備で86db)。公道走行不可。税込価格7万1,200円