取材協力・写真/Maloss JAPAN 文・構成/バイクブロス・マガジンズ編集部掲載日/2013年7月31日


ロードレース世界選手権で数多くの世界チャンピオンを輩出しているイタリアは、ヨーロッパ屈指のモータースポーツ先進国でもある。そんなイタリアで創設され、鍛えられ、今では世界のミニバイク乗りに愛されるパーツメーカーとなったのが「マロッシ」だ。バイクの潜在性能を引き出し、「速さ」と「楽しさ」を生みだすというマロッシのパーツは、どのような環境で生まれ、育てられたのか。現在、マロッシで営業部門責任者を率いるアレサンドラ・マロッシさんに話を聞いた。

イタリア生まれのマロッシにとって、日本でのパーツ販売は未知なるバイク市場への挑戦でした。世界屈指の高性能バイクを生産する日本ですが、そのバイクを日本人がどのように使っているのか謎だったのです。特に、「原付」と呼ばれる125cc以下のバイクについては分からないことだらけでした。

 

日本は少子化が社会問題になっていますが、イタリアでも同様に少子化が進んでいます。しかし、若年層のバイク所有率は昔と変わらず、まるで携帯電話を持つかのように、多くの若者がバイクを所有しているのです。その背景にあるのが「バイクを楽しもう」という若者たちのマインドです。この気持ちがバイクとの付き合い方をポジティブなものにしていると思います。

 

日本では、原付バイクは日常生活の移動手段という見方が大半ですが、イタリアでは、若者の遊び道具という色合いが濃いのですね。同世代の友人とツーリングに出かけたり、アフターパーツを付けて友人のバイクと性能を競い合うこともあります。走ることもカスタムすることも、楽しみながら自然に身についていってしまうのです。ミニバイクレースへの参加も、そうしたバイク遊びの延長線上にあるものなのです。

ミニバイクレースは、バイクを楽しむ究極の方法のひとつでしょう。日本では、スタイリングを競い合うカスタムが大きな流れとなっていますが、イタリアでは走る楽しみの追求、すなわちスポーツライディングのための性能アップがカスタムの本流です。

 

マロッシが開催している『マロッシ・トロフィー』は、毎週日曜日に各地で開催していて、年間では計30戦ほど実施されています。このレースの目的は、多くのライダーにスポーツ走行の楽しさを実感してもらうことです。もちろん、新たなパーツの研究・開発と、その走行データの蓄積は我々にとって重要なミッションになっています。しかし、いくらすばらしいパーツを開発しても、それを認めてくれるライダーが不在では意味がないのです。ライダーやメカニックを育てる活動は、イタリアのモータースポーツ文化の基礎を固めることにもなり、我々パーツメーカーの未来を創造する大切な社会活動と思っています。

 

こうして誕生したマロッシのパーツは、いずれも「走り」に特化したものです。「本当に必要なパワーと性能を引き出すこと」。マロッシのパーツによって生まれる整合性の取れた矛盾の無いカスタム。それは、実用的な利用が多い日本の原付バイクにも最適な選択になると考えますし、また、その性能は新たなイノベーションを日本にもたらすことができると信じています。

マロッシが発信する原付イノベーション。それは「日本市場における原付パーツの新しい価値の創造と挑戦」です。この信念にも近い我々の自信の源は、我々の開発力と技術力、そして厳しい管理体制から得られている安定した高品質に由来しています。マロッシでは、パーツの開発から生産まで、一部のOEM製品を除いて自社で材料調達から仕上げまで受け持っていて、作り出すパーツのすべてに、そして販売する製品のすべてに責任をもっています。製品テストの精度も高く、ドイツのTUV基準(技術検査協会基準)をクリアしたものしか販売していません(編集部注/ヨーロッパではこの基準をクリアしないと販売できない)。

 

それからもうひとつ。イタリアのパーツメーカーであっても、日本の原付バイクへの対応には自信があります。なぜなら、日本のメーカーが生みだすバイクは、イタリアでも大変人気があり、大きな市場となっているからです。もっとも、日本製のバイクはパーフェクトすぎるところがあり、我々のようなパーツメーカーにとっても、「プラスα」をいかに生み出すかに頭を抱えてしまうことが少なくありません(笑)。

 

マロッシは、4スト化が進む中で他に先駆けてパフォーマンス不足が憂慮されると考え、日本製スクーターパーツの開発に着手し、既に多くのモデルに対応したパーツを販売するまでになりました。私たちはみなさんが愛車に対して願う「もっとこうなればいいのに」を具現化するためのパートナーになれる自信があるのです。そのための、情熱があり、技術があり、経験も積み重ねてきました。マロッシの歴史は、すべてのライダーの願いをかなえるための歩みでもあります。ぜひ、マロッシの各パーツを体感し、我々の切なる想いを感じて欲しいと思っています。(談)