
2000年以降の日本市場で販売された250ccスクーターの大半が、快適性と利便性を重視したツアラー/クルーザー的な特性だったのに対して、XMAXはスポーツ性を重視。このモデルに興味があるライダーなら、どこかでそんな話を聞いたことがあるだろう。
かく言う僕もこのインプレでは、自分なりの見方でXMAXのスポーツ性を語るつもりだったのだが……。今回は撮影担当の伊勢カメラマンが、さまざまな場面で実にナイスな発言をしてくれたので、その言葉を使わせてもらうことにした。
ちなみに、これまでに複数の250ccスクーターを乗り継いで来た伊勢カメラマンは、今回の取材にはTMAXで同行し、結果的に行程の約半分はXMAXに乗ることとなった。
極低速域の車体の安定感が抜群なうえに、わずかなアクセル/ブレーキ操作に対する反応が従順なので、市街地走行は至って快適。
まずは市街地の印象から述べると、250ccらしからぬ?と言いたくなるほどキビキビ走れる、というのが僕の率直な印象。具体的には、アイポイントが高くて見通しが良好なうえに、加減速で妙な気遣い、既存の250ccスクーターではありがちだった“待ち”や“手加減”などが必要ないから、常に理想のラインを選んで水スマシのように走って行ける。
ただし小柄な体格の伊勢カメラマンにとって、当初の僕は795mmのシート高がネックになりそうな気がしたのだけれど、意外なことにその問題は、あっさり解消されたようだ。
「確かに、乗り始めて数分くらいは、身長が163cmの僕の体格だと、このシート高はちょっと厳しいかなと思いました。でもXMAXは、極低速域の安定性がムチャクチャいいでしょう。単に車体が落ち着いているだけではなく、乗り手の操作に対する応答性も従順かつ柔軟なので、アクセルチョイ空け&ブレーキチョイがけ状態でバランスを取るのも簡単。ここまで安心できる乗り味だと、足着き性に対する不満はほとんど解消できますね」
続いては高速道路の話。この場面で僕が感心したのは、横風に対する強さを含めた高速域での車体の安定性。一方の伊勢カメラマンは、ブルーコアという名称が与えられたパワーユニットの特性が印象的だったらしい。
「既存の250ccスクーターと比較して、圧倒的に速いとは思いませんが、このエンジンは加速がかなり鋭いですね。だから遅い4輪を躊躇することなく、安全かつスムーズに抜いて行ける。それに加えて振動の少なさや水温の安定感も、僕としては感心する要素でした」
とりあえず上半身を伏せてはみたものの、XMAXのスクリーンはなかなかの防風性能を発揮してくれるので、実際の高速走行中にこういった姿勢を取る必要はないだろう。
さて、ここからは今回の試乗のハイライトとなるワインディングロードの話で、路面の凹凸の巧みないなし方、コーナー進入時のフロントまわりの安定感、フルバンク状態からのアクセルの開けやすさなど、XMAXの運動性能は、やっぱり近年の250ccスクーターの中では群を抜いていた。
中でも僕が心を動かされたのは、直進から旋回モードへ移行する際に感じる、俊敏でわかりやすいフロントまわりの動きだが、リアタイヤの滑りを未然に防いでくれるトラクションコントールの出来のよさも、XMAXのスポーツ性を語るうえでは欠かせない要素だろう。と、日ごろの習慣で、つい部分的な話をしたくなる僕だが、実は試乗時は伊勢カメラマンの言葉に、なるほどなあ……と、うならされたのだった。
ワインディングロードに足を踏み入れれば、既存の250ccスクーターとは一線を画する、スポーツライディングが満喫できる。高めのシート高は、抜群の旋回性能に大いに貢献。
「基本的に僕はスポーツライディングに積極的なライダーではないですが、XMAXで走るワインディングはものすごく楽しかった。その最大の理由は、シフトチェンジとクラッチ操作が不要なことで、アクセル、ブレーキ、走行ラインの3つに集中できるだけで、こんなにもスポーツライディングが楽しめるものかと(笑)。と言っても、僕は過去に250ccスクーターで、何度かワインディングを走ったことがあるんですよ。でも従来の250ccスクーターは、動きがもっさりしているうえに、バンク角が十分とは言えなかったので、スポーツという意識は持てなかった。逆にXMAXに乗ることで、僕はオートマチックスポーツの面白さを、初めて理解できた気がします」
何と見事でわかりやすい表現だろうか。XMAXの最大の魅力は僕もソコだと思う。もちろんスポーツバイクとしての資質なら、兄貴分のTMAXのほうが上だろう。でもXMAXは、250ccならではの気軽さとスポーツライディングの楽しさを、程よい塩梅で両立しているのだ。例えば、久々に2輪に復帰しようとしているリターンライダー、あるいは、イージーにスポーツライディングを楽しみたいライダーにとって、XMAXは理想の1台になるんじゃないだろうか。
2017年以前の日本市場で、ヤマハ製250ccスクーターの主役だったマジェスティと比較すると、XMAXは9kgの軽量化(188→179kg)と5psのパワーアップ(19→24ps)を実現。運動性を重視した結果として、シート高は+95mmの795mm、ホイールベースは-10mmの1540mmとなった。前後のデザインは車名のXをモチーフとしている。
フロントマスクはアグレッシブな印象。ヘッドライトはLEDで、ローでは左右2灯、ハイでは中央1灯が点灯。スクリーンはボルト位置の変更で、高さを+50mmに変更できる。
スポーティなイメージを強調するべく、スピード/タコメーターはアナログ式を採用。中央のマルチファンクションパネルには、燃料残量や水温、時計などに加えて、気温やバッテリー電圧、平均・瞬間燃費、平均車速などを表示することが可能だ。
リアまわりはフロントと呼応するかのような、スポーティなデザイン。フラットな座面を確保したシートは、ワインディングロードでの体重移動が行いやすい。トランクスペースの容量は約45L。
スポーツライディングの楽しさと環境性能の両立を目指した水冷DOHC4バルブ単気筒エンジンは、ヤマハ独自のDiASilシリンダーやアルミ鍛造ピストンを採用。クランクシャフトは単気筒では珍しいプレーンメタル支持の一体鍛造で、潤滑方式はセミドライサンプ。
スクーターの定番であるアンダーボーン式と比較すると、XMAXのフレームには、ヘッドパイプ周辺の剛性を高めつつ、前後のネジレを最低限に抑えようという意識が感じられる。
フロントカウル内の収納スペースが重視されるスクーターの場合、フロントフォークはアンダーブラケットのみで固定する車両が多いが、XMAXは一般的なモーターサイクルと同様に、トップブリッジとアンダーブラケットでガッチリ支持。
既存のマジェスティのホイールが13/12インチだったのに対して、運動性と快適性の向上を目指したXMAXは15/14インチを選択。標準タイヤはダンロップ・スクートスマート。
ブレーキは前後とも油圧式ディスクで、リアショックはオーソドックスなツインタイプを採用。異形断面のマフラーは、バンク角と空力性能を考慮したスポーティなデザインだ。
ヤマハの試乗インプレッション・レビュー記事をチェックする >>