
取材協力/WM 文/佐賀山 敏行 撮影・構成/ストリートライド編集部
掲載日/2013年7月31日
大阪のダブルエムは、SRなどシングルバイクを得意とするスペシャルショップとして1982年に設立。高性能とルックスを両立させたエキゾーストマフラーやセパレートハンドルなどのアルミ製オリジナル鋳造パーツは当時から人気を博し、1989年には株式会社ダブルエムとして法人化を果たし、着実に事業を発展させてきた。そんな同社がこだわるのが、「いかに小さな部品にも、その機能を裏付けるフィロソフィー(哲学)を持たせる」ということ。そして、「そのためには理論や理屈ではなく、確かな技術を持つことが重要」と渡辺店長は言う。つまり、全てのパーツに見た目だけではない機能と技術を与える……これこそがダブルエム製品に共通するモノづくりに対するポリシーなのである。
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これまで数々のヒット商品を生み出してきたダブルエムだが、最近とくに注目を集めているのが、アルミビキニカウルだ。これまでシングルバイクやW650などのトラディショナルな現行モデルをベースにパーツを開発することが多かった同社だが、このアイテムはCB1100やCB400SFといったモデルにも適合を広げ、支持を集めている。つまり同社のなかでも異色ともいえるアイテムなのだが、その人気の理由について渡辺店長に聞くと「性能とルックスの両立。しかも気軽に付けられる点がウケたのでは」と分析する。「もともとのキッカケは、SR専用としてスロットルポジションセンサー対応CRキャブを開発したときに、マフラーを組み合わせると160km/hは出るようになった。そこで、『それだけスピードが出るならカウルが合った方がいいな』、と。ロケットカウルは以前からあったけど、装着にはセパハンが必要なのです。そこでより手軽に、バーハンドルでも装着できるビキニカウルを開発しようということになったのです」(渡辺店長)
バーハンドルのまま装着できる気楽さを持ち合わせながら、高速走行がラクになるアルミビキニカウルは、SRのみならず、現在ではCB400SS、W400/650/800、エストレヤ(’07年以降)などのストリートモデルからホーネットやCB400SFといったネイキッドまで豊富なラインナップを誇る。その防風効果もさることながら、やはり人気の秘密は洗練されたフォルムにあるといってよいだろう。無駄を廃したシンプルな造形とアルミならではの質感は、愛車の所有感を十分に高めてくれる。その高いクオリティは、オールハンドメイドで作られているからこそ。渡辺店長は言う。「1960年代、日本のモーターサイクルレーシング創成期に確立された製法をもとに、アルミビキニカウルは製作されています。これは今では一般的な製法ではないし、高い技術や専用のジグも必要です。ただし材料のトリミングなどにはNCマシンを使うことで、伝統の職人技とデジタルをうまく融合させているのです。結果、極めて質の高いアルミフォーミングパーツが完成しました」。装着は手軽ながらも、製作過程は非常に手の込んだものであり、オーナーのカスタム心をおおいにくすぐってくれる。そんなアルミビキニカウルは、まさにダブルエムを代表する逸品だといえるだろう。
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ビキニカウルだけでなく、たとえばアルミフェンダーなどのフォーミングパーツの多くも、金属加工創成期に考案された工法を現代に再現している。職人によるハンドメイドが機械による大量生産にはない風合いを生み出し、アルミの美しさを最大限に引き出しているのだ。さらにトップブリッジをはじめとする鋳造パーツも、現在では数少ない手込めの鋳造工法を用いているとのこと。「今やこれだけの鋳造パーツが揃っているメーカーは世界でも珍しい」と渡辺店長も胸を張る。そしてなによりも注目すべきが、これだけ手間の掛かったパーツが非常にリーズナブルな価格で提供されているという点だ。「利益はあまりありません」と渡辺店長は苦笑いするが、高い品質を維持するためにネジ1本から国産にこだわり、構成部品もほとんど国産を使用していることからも、それが冗談や見栄でないことは明らかだ。また、アルミの軽さや美しさにこだわりつつも、振動が直に伝わるステーやボルトなどはステンレスを使用。素材を適材適所で使い分け、ユーザーが長く楽しめるように最大限の配慮もなされている。そう、小さな鋳造エンジンカバーからアルミカウルまで、ユーザーの愛車をルックス、パフォーマンスともに引き上げてくれる……これこそが、ダブルエムのカスタムパーツなのである。
ダブルエムの製品は、フェンダーやエンジンカバーといった外装類から、エキゾーストマフラーやオリジナルCRキャブといった機能パーツまで、じつに幅広くラインナップされている。そのどれもに共通するのが、オートバイ本来の美しさを引き出すフォルムの良さと性能の高さ、そして純正パーツを凌駕するほどのクオリティの高さにある。現在、日本だけでなくオーストラリアやドイツなど、世界中にデリバリーされていることからも、その評価の高さが伺い知れるだろう。ここではそんなダブルエム製カスタムパーツのなかから、とくに注目すべきパーツやデモマシンを紹介。素晴らしいスタイリングを持つパーツをじっくりと眺めていってほしい。
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WM(ダブルエム)
住所/大阪府東大阪市水走2-9-33
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Tel/072-961-1888
営業/9:30~18:30(月曜~金曜)
10:00~18:00(土曜)
定休/第2&4土曜、日曜、祝日、年末年始