
ミシュランの新しいPOWER RSを履き、サーキットにおいてレーシングタイヤを思わせる走りっぷりを見せ付けられる一方で、公道では扱いやすさに驚かされることになった。
ミシュランのPOWE RSは、公道とサーキットの想定走行比率を85%対15%に設定したタイヤだ。あくまでも公道が主体である。
ところが、スペインのカルタヘナサーキットで乗ったPOWER RSは、私にそのことを完全に忘れさせてしまった。サーキット性能が同じカテゴリーのどのライバルタイヤをも凌ぐ高水準ぶりであるうえに、限界時の過渡特性ときたらレーシングタイヤを思わせるほど優秀で、コントロールしやすかったからである。
POWER RSは、これまでのミシュランタイヤにない接地感を伝えてくる。グリップも良く、コーナーへの進入でフロントに荷重が掛かるのに応じて接地感が高まり、それに合わせて良く曲がる。
さらに、リアのグリップ限界点が高いだけではなく、リアがトラクションによってスライドを始めてから、これまで経験したことがないほどコントロール性が高い。リアの滑り出しも食い付き方も実に穏やかで、スライドに伴う挙動がゆったりしている。スライドしてから、再び食い付いてくれるときの挙動が実に穏やかで、ゆったりしているのだ。
安心感があって、少々のことならスロットルを開けたまま、身体を柔軟に使うことで挙動に対処できる。スロットルコントロールを加えるにしても、挙動と相談しやすく対処しやすい。その点で、レーシングタイヤを思わせるのだ。
安定性に富むことも印象的だ。あらゆる場面で挙動を乱すことがなく、安定したままラインを忠実にトレースできるのである。
では、これだけサーキット性能が高いというのに、なぜこのタイヤが公道主体なのか。その疑問は、後日、公道を走らせて納得させられることになった。
ハンドリングが軽快で、意のままにキビキビと向きを変えていく。マシン任せで曲がるしかなかった交差点でも、素直に転がるタイヤに意思を伝えやすく、楽しくなってくる。まさに公道向きなのだ。
乗り心地は、ミシュランとしては硬質な気がしないでもないが、神経質さは一切なく、路面の状態をダイレクトに伝えてくるということで好印象。また接地感はサラッとしているが、ブレーキングでフロントに荷重が掛かると、タイヤのつぶれ感と共にグリップ感が高まり、コーナーへのアプローチに自信を持たせてくれる。
POWER RSを履いたS1000RRは、サーキットでレーシングマシンとしての片鱗を感じさせる一方、公道ではストリートバイクのように振舞ってくれる。そして時に、サーキットでのスポーツ性能をも匂わせてくれるのだ。
溝面積の割合は大きくはないが、溝を深くして排水性を高めていることが窺える。また、その溝は補強され、トレッド剛性の確保にも留意されている。リアにはパワースーパースポーツEVOに投入されたACT構造の発展形ACT+を採用、また2分割コンパウンドの2CT+も採用される。
テストに招聘されたジャーナリストは全世界から6名のみ。朝のブリーフィング説明された驚愕のテスト内容は、従来型となるパイロットパワー3での慣熟走行後、POWER RSの競合タイヤであるピレリ・ディアブロ・ロッソⅢ、ブリヂストン・バトラックス・ハイパースポーツS21を挟みながら、全7周の間5周のタイム計測を行うというものだった。
セッション毎にタイヤの温まり具合、各速度域や各バンク角における安定性、旋回性やグリップレベルなどについて評点やコメントを伝えていく。写真は評点の整合性を保つため、前セッションの評点を確認しているところ。私の聞き取り役はPOWER RSの設計技術者、シャルル・ギシェールさん。
POWER RSの事前テストは、スペインのカルタヘナサーキットで行われた。ここはスペイン中南部の地中海に面したムルシア州にあるローカルサーキットだが、気候も恵まれ、多くのSBKチームが冬季テストに使用。低速ターンから高速セクションまでタイヤテストに適したコースレイアウトを持つ。
MICHELIN POWER RS
※オープンプライス
住所/東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー13F
電話/0276-25-4411
日本でのタイヤ販売事業は1964年にスタート。浜松町-羽田空港間に新設されたモノレールに、ミシュランスチールラジアル“X”タイヤが採用されたのが日本におけるミシュランの第一歩だった。1991年にはR&Dセンターも設立。