
最近の乗用車は、昔に比べると個性がなくなったという意見が多いが、その理由は様々な安全基準や燃費効率、クルマの生産性などという条件が厳しいからだ。たとえば昔のアメ車のような角ばって大きなボディは、歩行者の安全基準を満たさない上に、ドライバーを守る構造でもないのでN.G.である。だから、すべてのクルマが似たようなフォルムとなってきたのだ。
趣味性の高いクルマは、そんな現代でもデザイナーが挑戦を続ける限り存在するが、ビンテージモデルなら自由度の高いデザインが施されているので、もちろん当時の大きな魅力を維持したまま、現在でも多くの乗り物好きに愛され続けている。
「じつはコーティングという観点から考えると、現代車のほうがはるかに容易なんですよ。簡単に言うと形が単純ですからね。凹凸が少なければ仕事は早く終わります」
意外なことに、軽トラのコーティング依頼があった時、思いのほか時間がかかり、コーティング剤も多く必要だったことを鈴木さんは笑いながら話してくれた。
クルマやバイク、自転車のロードレーサーも趣味で乗る鈴木義彦さん。クラシカルなテイストの乗り物が好みだが、普段からヘビーに使うことから、インジェクションモデルを好むという人だ。
「軽トラックって、荷台もあるしアオリもあります。フレームもむき出しでデコボコしていますからね。バイク4台分施工するような感覚ですね。乗用車の2倍くらいかなぁ」
オーナーにとって、大切にしたいクルマやバイクは様々である。それが現代のものでも旧車でも、塗装のコンディションが問題なければどんな車種でもガラスコーティングは有効だ。ボディの美しさをより長く持続させ、日常の手入れを楽にする画期的な方法。だから様々な車種がプロテックスには持ち込まれるのである。
フラッシュサーフェイス化が進んだ現代のクルマよりも、やはりクラシックカーは複雑で優美なボディが形成されている。それはバイクの形状と似ている要素でもあると鈴木さんは言う。バイクは、それぞれのパーツが独立した形状で出来ていて、デザインも様々だ。ネイキッドモデルやフルカウルモデル。そしてクルーザーやアメリカンモデル等、カテゴリー別に個性的なボディ形状を持っているという点で、クルマに例えると、クラシックカーも同様ということになるのである。
様々な乗り物を使い分けているが、意外にも普段の足は少し古いハーレーのスポーツスターである。キャブレターモデルだが、気兼ねなく乗れる気楽さがお気に入りだという。
数多くのバイクや自転車等も施工してきたプロテックスの鈴木さんは、そんな趣味性の高いクルマへのコーティングも、力を入れている。ご自身もまた、モーガンを2台所有するフリークでもあるのだ。
「じつは、バイク好きの人達はクルマも趣味の人が多いのです。だからバイクのコーティングでここにやってくると、よく“クルマも施工してほしい”という話になるんですよ。そんな流れで、個性的なクルマも数多くコーティングしていますね」
作業工程は、とにかく磨きの作業がほとんどというのがプロテックスのガラスコーティング。樹脂系素材を使う通称“ガラス系コーティング”では、仕上がりがまるでアメのような質感で艶を演出するが、本当のガラスコーティングは素材の質感を変化させない。だからこそ、艶消し仕上げのマットな塗装にもコーティングを施すことが可能で、通常、ボディの艶は、すべて徹底した磨き工程で仕上げるというのがプロテックスの仕事なのである。
この数年、鈴木さんが好んでドライブしているのは、イギリス製のモーガンだ。どの時代でも変わらぬポリシーでクラシックテイストを貫き通している最高のブランドである。
ハーレーのようなS&S製Vツインエンジンを搭載した3ホイラーに加えて、昨年から新たにインジェクションモデルのプラス8を愛車に加えた。ハーレーは、フラッグシップであるツーリングモデルの最新型CVOモデル。これは115周年の限定記念モデルである。今回はそんな愛車をクランケにした磨き工程を披露してもらった。
深みのあるブリティッシュグリーンに塗装されたモーガンプラス8のボディ。プレーンな色合いを長く維持するためには、ガラスコーティングが有効だ。大きな面積部分は大きめのポリッシャーを使用する。
磨き工程の徹底が、仕上がりに大きな違いを見出すために、使用するポリッシャーは様々な形状を揃えている。場所に合わせて変更していくことが重要なのだ。
普通なら、まずポリッシャーでは届かない部分も、専用の機材を使用して徹底的に磨き込む。コーティングを施す以前に、艶のあるボディを完成させてしまうことが肝心なのである。
徹底的な洗車とボディの磨き工程が終了したら、ガラスコーティングの施工に入る。塗装のように吹き付けるのではなく、ミスト状にコーティング剤を噴霧していくので、細かい部分まで均等にコーティングすることができるのだ。
ボディ形状が複雑なバイクでも、工程はまったく同じ。コーティング剤は、摂氏1,000度にも耐えられるので、エンジン施工してもまったく問題ない。汚れにくい表面処理が出来上がる。
神奈川県の藤沢と鎌倉に拠点があるプロテックス。鎌倉のファクトリーは、大型の倉庫をリノベーションしたスペースで、主にショップからのオーダーを受けるクルマ専門ファクトリーである。
鎌倉ファクトリー内には多くの施工待ちのクルマが配置されていて、ガラスコーティングに入る前の洗車や磨き作業が順次行われていた。スタッフは手際よく仕事をこなしていくのである。
最終の磨き工程とコーティング作業は、埃の立たない隔離されたスペースで行われる。まだ登録前の新車にコーティングを施すスタッフ。個人ユーザーではなく、ショップからの依頼に答える作業なのだ。
車両の引き取りに活躍するローダーも完備するプロテックス。つまり、登録前のクルマでも、持ち込むことが可能なのである。このローダーは、クラブのツーリングでも同行して、サポートすることもある。