取材・撮影・文／木村 圭吾 構成／バイクブロス・マガジンズ編集部INTERVIEW
老舗的な存在で豊富なノウハウ
バイクに適した成分の配合に
映画『三丁目の夕日』の時代で日本のモータリゼーションの黎明期でもある1962年に創業されたホンダ商会。創業当時から二輪、四輪のパーツや用品の卸業務を主体とし、その道のプロを相手にしてきた老舗的な存在である。そして、その過程の中からで生み出された製品のひとつが、オリジナルのコーティング剤だ。
クルマ用が先行販売していて、プロ達からの意見をフィードバックさせて改良が加えられて完成度が高められてきた。そうして積み重ねられたノウハウを元に開発されたのが、今回ご紹介するバイク用のコーティング剤「ピカピカバイクコーティング」だ。その特徴や施工方法の注意点を、同社担当の平野智弘さんに伺った。
バイク用のコーティング剤とのことだが、クルマ用との違いはどこにあるのか？
「現在のコーティング剤の主流となっているのが、表面に化学反応でガラス膜を生成するタイプです。このタイプは『ガラスコーティング』と『ガラス系コーティング』の2種類に大別することができます。そして、当社のバイク用は後者の『ガラス系』になります。ものすごく大雑把に言うと、ガラスコーティングに何らかの『混ぜ物』をしたのが『ガラス系』です。
ガラスコーティングは、強固な皮膜が特色です。ですが、硬いが故に脆いという側面もあります。その点が、しなりなどが発生するバイクのカウルなどの外装品には向いていません。コーティング層が、しなりなどの動きに追従しませんから、クラックの原因になってしまうのです。
ですので、ベースとなる成分に反応性シリコーンオイルや撥水シリコーンレジンを添加してガラス系とすることで柔軟性を持たせています。またクルマ用では溶剤の成分が強すぎて塗装面にダメージを与えることもあるので、その点も調整してあります」。
ピカピカバイクコーティングは、ユーザー自らが施工することが前提となっているが、その際の注意点は？
「基本的には普通のワックスのようにシャンプーで洗車して油分や汚れを落としてから塗布して拭き取ればOKです。注意点としては、コーティング剤は空気中の水分と化学反応を起こしてガラス膜を形成しますから、車体に水分が残っている状態での塗布はNGです。ですので、洗車後の水分の拭き取りは充分に。
それから、コーティングで傷は修復されませんので、事前にコンパウンドなどで除去しておきましょう。また鉄粉が塗装面にあると、それを閉じ込めてしまい、錆の発生原因にもなる可能性があるので、除去しておきたいところです。
ピカピカバイクコーティングは塗布後に拭き取る必要がありますが、時間が経つと固まってしまいますので、その点にも注意してください。例えばタンクに塗布したら、タンクを拭き取ってから次の箇所へ、と少しずつ塗布と拭き取りを進めていってください」。
施工自体に難しさはないようだが、耐久性はどのくらいあるのだろうか？
「24時間紫外線を照射しつつ、時折雨に見立てた水を掛けるという試験装置があるのですが、そこでの結果は5年相当というものでしたので、余裕を見て3年としています。ただ、コーティング自体の耐久性は3年ですが、表面の撥水力が1年ほどで低下しますので、それを保つためのメンテナンスが必要になります。
コーティングの厚み自体は数ミクロンと極めて薄いものですから、こすれに対しては強いとは言えません。ですから、タンクのニーグリップなどで身体が接する部分は、落ちやすいと言えます。もちろん、1回乗ったら落ちるというレベルではありませんが、気になる場合はその部分だけ重ね塗りしても良いでしょう。
エンジンやエキパイなどの高熱になる部分には使えません。また、ゴム部分や無塗装のプラスチック部分は、時間が経つと白化してしまうので、そこにも向きません。こうした素材は中から成分が染み出してくるのですが、コーティングで閉じ込めてしまうからです」
下にあるように、ピカピカバイクコーティングを塗布したサンプルを見せてもらうと、そこには信じられないぐらいの光沢が蘇っていた。これがユーザー自らで施工できるとすれば、コーティングのプロショップに依頼する必要はなくなるのだろうか？
「コーティング剤の塗布で重要なのは、塗装と同様に塗布前の『下地作り』です。それに長けているのが、プロショップです。整った設備とツール、そして高度な技術で傷を消してくれるのはもちろんのこと、それ以外の部分も磨き上げてからコーティングするので、仕上がりのレベルに大きな違いがでます。
『ピカピカバイクコーティング』は、施工前に水分を残さないように拭き取る必要があるし、施工後も硬化のための放置時間が必要になるなど少々手間が掛かります。ですが、この手間によって得られたコーティングの耐久性や艶には自信があります。塗布直後の艶はたいしたことがないのですが、時間が経つと驚かれるハズです。輝きを増した自分のバイクに、さらに愛着をもっていただけたら嬉しいですね」。
今回の取材では、塗装面に付着した微細な鉄粉除去のための専用粘土とコンパウンドを使って下地づくりをした。
PICKUP PRODUCTS
施工は風の無い穏やかな日を選んで日陰で
撥水力が低下したらメンテナンスリキッドを
ここからは『ピカピカバイクコーティング』の施工方法を見てみよう。基本的には水洗い洗車をして水分を拭き取り、コーティング剤の施工となる。なお、洗車後は、油分が残っていると施工不良（ムラ）の要因となるので、洗車用のシャンプーを用いるのがベターだ。ワックスの成分も施工不良に繋がるので、シャンプー剤にはワックス成分の入っていない物を用意しよう。洗車から施工までは日陰で、雨天はもちろんのこと、砂埃の舞うような風の強い日も避けたい。
施工後は2時間ほどは施工面に触れないようにし、ボディカバーを掛けるのならば、それからに。さらに実用硬度に達する12時間ほど放置し、撥水力を得るためのメンテナンスリキッドを付属の布で塗布して完了となる。これで普通にバイクに乗ってもOKだが、コーティング剤の硬化は続いており、3?4週間程度で完全に硬化する（化学反応のため、完全硬化に必要な時間は気温などによって異なる）。その後3年間はコーティングそのものの性能は維持されるので、通常通りの洗車をすれば良い。その際に表面の撥水力が弱くなったと感じたらば（撥水力は徐々に低下する）、メンテナンスリキッドを塗布する。
住所／奈良県大和高田市旭南町5-8
電話／0745-52-5555（担当：平野）
営業時間／9：00?18：00
定休日／土日祝
日本国内のモータリゼーションの黎明期でもある1962年に創業し、以来、バイクやクルマのパーツ・用品の卸業務を中心としてきた。その道のプロ達を通じて得られたノウハウも数多く蓄積し、商品開発に活かされている。コーティング事業も既に10数年に渡っており、四輪の方で先行、その技術や知識が二輪用にも活かされている。