
オーヴァーレーシングが作るカスタムモデルを見て、いつも感じるのはクオリティの高さである。パーツ単体での質感やデザイン性はもちろん、マシン全体でのトータル的なまとまり感にもそれは表れている。レーシングコンストラクターとして長年積み上げてきた、マシン作りのセンスを感じるのだ。目の前に置かれたデモ車両も、ノーマルの新型R25の洗練されたシルエットを崩すことなく、スマートに品良く仕上げられているのが印象的だ。
まず目立つのは、透明感のあるブルーの焼け色が美しいマフラーだろう。「TT-Formula RS+PRO」は最上級のフルエキゾーストシステムだ。新型R25はエンジンやフレームは従来どおりだが、カウル形状やライポジ、足まわりなどの変更によりキャラクターは大きく変化しているため、マフラーもこれに合わせて完全新設計としている。従来のサブサイレンサー構造を廃し、シンプルかつ軽量化を実現。ヘッドパイプは完全な等長を出しつつ、2-1集合部からテールパイプまでを多段階テーパー形状により見た目のバランスと高出力を両立した。
素材はエキパイからサイレンサーまでフルチタンで耐久性と軽量を実現。異形5角断面形状のサイレンサーはテーパー状に広がったレーシーなフォルムが特徴になっている。黒塗りスチール素材のノーマルマフラーは短くコンパクトでなるべく目立たないように作られているが、それに比べると存在感は格別。デザイン的にもシートカウルと平行に配置されたサイレンサー、アンダーカウルの下からチラリと覗くチタン製パイプの輝きなど、計算された隙のない造形美を感じさせる。
サウンドもしびれる。パンチが効いて迫力があるが、それでいて耳に心地いい。アイドリングの重低音に3000rpmからの野獣のような唸り声、そこから開けていくと徐々に澄んだ高周波音へと変化し、7000~1万rpm超へとドラマチックに盛り上がっていく。回転数によって異なる音色を楽しめるのだ。
出力特性はリニアで扱いやすく、ノーマルの良さはそのままに全体的にボトムアップした感じ。発進からメリハリの効いたトルクが出ていて、高回転域でもR25本来の伸び感がある。シャーシダイナモによるパワーグラフを見せてもらったが、ゼロ発進から全域できれいにノーマルを上回っていて、実測値でも最高出力は2psアップしていた。もちろん、音量も排ガス規制もクリアした認定マフラーだが、元々ハイスペックのR25にポン付けでこれだけ上乗せしてくるとは、さすがとしか言いようがない。
マフラー重量も7.8kgから3.4kgへと半分以下に減量している。バイクの世界では「軽さこそ正義」という不文律がある。運動性能を突き詰める場合、時としてパワーよりも優先されるほど「軽さ」は重要なファクターなのだ。R25は元々軽量なモデルだが、それをさらに軽く……。スタイルと音、パワーと軽さなど、幾つものメリットがマフラー交換だけで得られるわけだ。
一方の「TT-Formula RS」はオーソドックスなスタイルが特徴のフルエキゾーストだ。構造やピークパワーはほぼPROと共通、重量も3.6kgとPROに比べ0.2kgしか変わらない。大きく異なるのはサイレンサー形状だ。
同じ5角断面だがテーパーのないストレートタイプで全体的にややスリムな印象だ。実走してみたが、出力特性はPROに比べると若干だが穏やかで、排気音もマイルドな感じ。音量は抑えつつ性能はきっちり出したい人におすすめだろう。
あとは好みの問題だ。週末のワインディングをスポーティに駆け抜けたい人、またサーキットで全力走行を楽しみたい人には弾けるサウンドも含めてPROがおすすめ。スポーツ走行もするが、普段は街乗りからツーリングまで幅広く楽しみたいし、サウンドも控えめが好みという人にはRSがおすすめかも。最終的にはデザインや雰囲気で選べばいいと思う。
また、マフラー以外にも新型R25用に開発されたスペシャルパーツが装備されていたのでご紹介したい。「バックステップキット」や「スイングアーム」は高性能マフラーと組み合わせることで、より戦闘力のあるスポーティな走りを実現。「エンジンスライダー」は万が一の転倒時にマシンのダメージを低減し、軽快なリアビューを演出する。「フェンダーレスキット
」は軽量化も兼ねている。そして、どのパーツもその高品質な作りがR25の魅力をさらに引き立てるドレスアップ効果にも貢献しているのだ。
4ポジションが選択できる高品質なアルミ削り出しステップ。可動部にべアリングを採用することで、剛性感のあるスムーズなシフト&ブレーキタッチを実現。ライポジもアップ&バックが極端ではなく違和感のない自然さだ。
新型R25はハンドル位置が23mm下がっているので上体がやや前傾になるが、ステップ位置が同じなので違和感がある人もいたかも。そこをオーヴァーでは最適化したわけだ。STDもけっして悪くない。街乗りなら快適でいいが、スポーツライドしたいならステップ位置を少し上げたいところ。バンク角を稼ぐ意味もあるが、剛性感があってステップワークしやすいのが美点。
ローレットが刻まれていて、踏ん張りも効くし雨でも滑りにくいところも良い。アップ&バックともに30mm/40mmから組み合わせ可能。ブラックアルマイト仕上げ。STDマスター&ブレーキホース使用可能。タンデムステップ使用可。逆チェンジおよびABSモデルにも対応可能。
グレード感漂うエンジンスライダー。スライダー部分はジュラコン製でレーザー加工によるエンブレム入り。ベースも削りの肉厚なアルミプレートで丁寧に面取りもされるなど見るからに高品質な作り。まるで工芸品のような美しい仕上がりだ。ステーもステンレス製の頑丈な作りで実用とドレスアップ効果を兼ねている。カウルに加工せずに取り付けられる専用設計というのも嬉しい。
フェンダーレスキットも質実剛健なアルミ削り出し。巷の製品では振動でグラつくものもあるが、これに関しては頑丈でビクともしない。ノーマルのナンバー灯とウインカーもそのまま流用できるので、ノーマルの雰囲気を生かしたままスタイリッシュにリアビューを演出できる。シックなブラックアルマイト仕上げだ。
光り輝くミラー仕上げが美しいオリジナルスイングアーム。内部構造はスーパーバイクレーサーにも使われるOVER独自の高強度「目の字断面」を採用。アジャスター部分はアルミ削り出しならではの質感で、高精度とメンテナンス性に優れる。溶接圧も美しい職人技だ。右アームは湾曲、左はストレートというノーマルのデザインを生かしつつも、受注生産なのでロング化などのリクエストにも対応できる。
公道レベルの走りでは性能が云々といった評価は難しいが、たとえば地元の鈴鹿サーキットの高速コーナーを全開で攻めたときに、その優れたスタビリティや接地感が発揮されるはずだ。見た目の美しさも際立っているので、公道ではドレスアップパーツと割り切っても良いと思う。
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