
バイクはあらゆるパーツの集合体だ。中でもエンジンはバイクの心臓部であり、それがないとバイクとして成立さえしない。そんなエンジンも様々なパーツで構成されている。ピストン、コンロッド、クランク、シリンダー、カムシャフト、バルブ……そしてプラグ。
キックスターターやセルモーターでクランキングし、混合気を圧縮、そこにプラグのスパークで着火することでエンジンは眠りから目を覚ます。そう、プラグがないとエンジンは始動すらできない大切なパーツである。
NGKといえば、少しバイクをメンテナンスしたことのあるライダーにはおなじみのメーカーだろう。スパークプラグを始め内燃機関用関連品の製造、販売メーカーとして80年以上の歴史を持つ老舗である。現在でも多くのメーカーの純正部品として使われるばかりか、人気製品イリジウムIXプラグへの換装は、今やカスタムの定番だ。
そして、そんなNGKがこれまでの常識を覆すようなプラグを、2019年の東京モーターサイクルショーの場で大々的に発表した。
2019年3月22日〜24日の3日間、東京ビッグサイトで行われた東京モーターサイクルショーでNGKはMotoDXプラグを発表。センセーショナルなデビューを果たした。
前述したように、NGKといえばイリジウムIXプラグが有名だ。しかしイリジウムIXプラグが発売されたのは2000年のこと。すでに19年が経過している。その間にバイクのエンジンの混合気供給システムはキャブレターからフューエルインジェクションへと移行してきている。そこでプラグメーカーとしても最新のバイクの機構に合わせたプラグを開発する必要に迫られていた。
開発陣によると今回の新製品の開発には、20代を中心とした若いスタッフを集めたという。バイクユーザーの平均年齢が52.7歳という現代の2輪環境において、フレッシュな感覚と発想、そして若い世代へもっとバイクの楽しさを訴求していきたいという思想からだ。
技術者、マーケティング、営業などあらゆる部門から集まった開発陣がミーティングを重ね、最良のプラグとはなにかという協議の結果出した答えは「加速性」「燃費」「耐久性」の向上だった。それから約2年の歳月を経てこの新製品は完成した。しかし、たった一つのプラグというパーツで、そこまでバイクの性能が大きく変化するのだろうか。
会期中にはMotoDXプラグの魅力を伝えるトークショーも開催。開発陣の解説に加え、ゲストの宮城光氏がその絶大な効果をわかりやすく説明した。
今回、新しく発表されたプラグの名称は「MotoDXプラグ」。実物を目視すると素人目には一見、これまでのプラグと大差ないように見えるが、その違いはどこにあるのか。国内市販部、広告宣伝課の尾成さんにうかがった。
「今までと大きく違う点は、外側電極の形状ですね。これまでは断面が長方形のプレートを曲げたような形状でしたが、今回はD-ShapeというD字断面のプレートを外側電極に採用しました」
会場では現物を実際に手に取ることができた。先端のL字部分である外側電極をよくみるとたしかにD字型をしているのがわかる。
なるほど、MotoDXプラグのL字に曲がった外側電極をよく見てみると断面がD字だ。その効果はどこにあるのか。
「外側電極の断面をD字にして細くすると、シリンダー内で火炎が拡がる際の抵抗が減り、より炎が広がりやすくなるんです。優秀なプラグに必要なことは良い火種を作り出すこと。マイクロ秒単位の話ですが、より短い時間で火種を大きくしていくのが良いプラグの条件です。そのためには外側電極を小さくすることが大切。そこでD-Shapeという形状に行きついたわけなんです」
「しかしそのいっぽうで外側電極が通常よりも細いので、そのぶん酸化もしやすい、結果、耐久性が低くなるというデメリットが浮上しました。それを耐久性に優れる新素材を使ったことで解決しました。さらに中心電極にルテニウムを配合したイリジウム合金を採用することで耐久性の向上もできました」
外側電極に新素材を採用したD-Shape仕様。中心電極はイリジウムIXプラグによく似た先端の細いタイプ。新素材ルテニウムの配合で耐久性が向上されている。
従来のイリジウムIXプラグとMotoDXプラグを比較したイメージ。外側電極が細いため火炎の拡がりを妨げず、火炎がより広範囲に広がっている。
「まず一番重要視していた加速性のアップですね。弊社でテストした結果では、NGKの一般プラグと比べて0.2秒の差を生み出すことができました。たとえば同じ条件のバイクを比べた場合、30km/hから80km/hに到達するのに0.2秒速くなるわけです。これを距離に換算すると約4.4m。4.4mとなるとバイク約2台分ですからね。高速道路の合流や、コーナーの立ち上がり、低速域でのエンストの低減など、わずかですが日常のバイクライフの中で、さまざまな効果を発揮してくれるはずですよ」
D-Shape外側電極の効果で、より火炎に拡がりやすくなる。つまり燃焼効率が上がる。すると、より早いタイミングでピストンを押し下げることでわずかだが出力が上がり、その結果0.2秒の差が生まれる。これがプラグを替えるだけで0.2秒速くなる裏付けだ。
「また燃焼効率が上がることで燃費も改善されます。テストではアイドル燃費で2.3%のアップが見込まれました。また耐久性も上がっているため、従来製品であるイリジウムIXプラグの交換サイクルが3,000km〜5,000kmだったのに対し、MotoDXプラグは8,000〜10,000kmを達成しました」
モーターサイクルショーの会場には、NGKの一般プラグとMotoDXプラグの火花を比較する特別なデモ装置を展示。実際にスパークの違いが目視できた。
4月中旬発売の時点では5品番をラインナップ。6月以降に順次ラインナップを増やしていく模様。各サイズと適合はオフィシャルサイト『NGK SPARK PLUGS プラグスタジオ』にてご確認を。
MotoDXプラグは交換するだけで出力アップ、燃費の向上、ロングライフを実現する、まさに2輪用プラグの最上位モデルと呼べる仕上がりだろう。
東京モーターサイクルショーのブースではこれらのメリットが図説や現物の陳列によって展示され、さらに解説員の説明もあり、多くのユーザーが食入るようにその性能に興味を示していた。
MotoDXプラグの発売はもうすぐ。本番シーズン直前。アナタも愛車にMotoDXプラグを装備して「突き抜ける加速感」を体感してみてはいかがだろうか。
■MotoDXプラグ
4月に5タイプ、6月以降に3タイプをラインナップ予定。適合機種は下記オフィシャルサイト『NGK SPARK PLUGS プラグスタジオ』で確認のこと。今後も順次対応機種を増やす予定。価格は各2200〜2300円。
■問い合わせ
『NGK SPARK PLUGS プラグスタジオ』の問い合わせフォームより
www.ngk-sparkplugs.jp/