
NGCジャパンの小林さんは1982年にヨシムラ入社以来、GSやGSX、油冷GSX-Rなどレース用ヨシムラサイクロンを製作してきたマフラーのエキスパートであり、独立以降もいくつものブランドのマフラー製作を請け負い、多くのファンを生んできた。
その小林さんが自分自身のブランドとして作り上げたのが4気筒モデル用の「NGCマフラー」ならびに、KTMのデュークやヤマハセロー・トリッカーなどのシングルモデル用の「リトミックチタンエキパイ」である。双方に共通するのが、一見すると異様なほどボリューム感のある太いエキゾーストパイプだ。
ヤマハトリッカー・セロー250・XT250用
リトミックチタンエキパイ ◎価格4万6,440円(税込)
ヤマハトリッカー・セロー250・XT250用
チタンサイレンサー ◎価格5万9,400円(税込)
「太いエキパイは低速スカスカ」という従来の常識で判断すれば、これらは下を犠牲にした高速型となる。だが、実態は全く異なる。常識外れのように見える極太エキパイのマフラーは、常識を覆す走りを見せつけてくれるのだ。
これまで35年以上にわたってマフラーを作り続けてきた小林さんがエキゾーストシステムを原点から見直したのが2010年のことだった。混合気は燃焼室で爆発的に燃焼しマフラーから排気される。そして爆発で生じた排気をできるだけスムーズに引き出すために、エキゾーストポートとスムーズにつながるようにエキパイ径を設計するのが常識とされた。小林さんはしかし、その常識を封印して、排気にとってはどのような状態がよりベターなのかをイメージした。
その結果「爆発的に一気に膨張するエネルギーを細いエキパイに押し込むという考え方で良いのか? もっと自由に出られるようにした方が良いのではないか?」という見解にたどり着いた。そこで流速優先という固定観念を捨て、エネルギーのかたまりである排気ガスがどうすれば早く排出できるかをテーマとした。そして狭いエキパイに押し込まれる排気ガスが実はフリクションロスの原因となるのではないかと仮定した。
細いエキパイが排気ガスの抵抗になるならエキパイを太くすれば良いというのは、これまでのマフラー造りではあり得ない論法である。だが爆発的に膨張した排気ガスを一気に、スムーズに排出したいと考える小林さんにはつじつまが合う。
こうして開発されたヤマハトリッカー用φ42.7→38.1mmリトミックチタンエキパイは純正と比べてびっくりするほど太いが、
1 始動時にチョークがほぼ不要。
2 純正サイレンサーから聞こえる排気音が、ノーマルエキパイの時より静かで音質も柔らかい。
3 アイドリングでがさつ感がなくなり、しっとりと安定して回転する。
4 ギアを入れてクラッチをつないだ際の走り出しがとても滑らか。
5 ノーマルより1段か2段上のギアで走れるようになる。
6 ギアチェンジ(特にシフトアップ)時にクラッチを握らずとも、スロットルを僅かに戻すだけで駆動力が抜けてシフトペダルがスコッと入り、ギアチェンジ時のシフトショックが減る。
といったさまざまな変化が生じ、そこにはメリットこそあれデメリットは何ひとつ感じられない。エンジン回転を上げる際にフン詰まりや抵抗感なく軽く伸びやかに上昇し、その際に排気音がやかましくなることはなく、エンジン自体の角張ったがさつな振動も減少し高品質でまろやかな印象になる。さらには、交通量が少ない幹線道路を流すような走り方ではエキゾーストノートさえライダーの耳に届かなくなってしまう領域もある。つまり、これまでの社外マフラーとは全く異なるのだ。
チタン素材のスペシャルパーツゆえ、純正部品より高価ではあるが(トリッカー純正エキパイの希望小売価格は税込1万908円)、トータル性能で判断すれば、リトミックチタンエキパイが標準装備されるべきと感じてしまうほど。
エキパイの太さ×長さ=容積と考え、高温かつ高圧のエネルギーを受け止められる容積を確保することで、小林さんが発明したマフラーとエキパイは排気によるフリクションロスを軽減できる。
排気によるフリクションロスが減ることで、エンジン回転数が低く排気圧力の低いアイドリング領域でも圧力変動のフリクションが軽減されて安定して滑らかに回転し、実用性の高いトルクを得ることができる、と考えれば納得だ。太いエキパイが排気によるフリクションロスを軽減するためにも効果があるというのは、チューニング&カスタムユーザーのみならずマフラー全体の常識を覆す大きな発見といえるだろう。
スチール製の純正エキパイに対してリトミックチタンエキパイの直径は2倍近くの太さがある。直径が2倍なら面積は4倍となる!!
エキパイの入り口に挿入されるフランジによって、シリンダーのエキパイ出口内径からパイプ内径にスムーズに拡大される。
フランジホルダーとフランジを組み合わせるとこのような形状になる。エキゾーストガスケットはホルダーの外周にはまる。
排ガス規制が適用されていない絶版車や旧車用でも環境への負荷を軽減するため、エキパイ後端には触媒が挿入されている。
ゴム製ダイヤフラムを持たないFCRでは、除電ボルトをキャブ本体よりインシュレーターバンドに装着した方が変化が顕著だとか。
クラッチカバーボルトに追加することでフィーリングに変化が現れることもある。
極太エキパイに排気ガスによるフリクションを軽減する効果があることが発見されたNGCマフラー。スズキGSF1200S 用エキパイは何とφ54.0mm!! にもかかわらず低速トルクも豊かで街中から高速まで継ぎ目のない爽快感がある。
正立でも倒立でもフロントフォークはインナーチューブ先端付近への取り付けが基本。トップブリッジ裏に装着するが、カーボンフェンダーの静電気対策でフェンダーブレースにも追加。
リアショックはリンクジョイント部の除電も含めて下部に装着。