ISO9001認証工場から生み出される 旧車用リプロダクトパーツ群。
    取材協力/エムテック中京 取材・撮影・文/木村 圭吾 構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
    掲載日:2012年04月25日
ISO9001の取得でユーザーに安心を提供するエムテック中京

素材の質まで問う国際規格の品質管理。長く使うことで、その差が現れてくる

アルファベット読みで「アイエスオー」、ローマ字読みならば「イソ」として知られているISO(International Organization For Standardization)とは、国際標準化機構の略称である。電気を除いた工業分野での国際規格を策定するための機関であり、身近なものではデジタルカメラやフィルムで用いられている100や200、感度を表した数値があげられる。この数値は国際規格に準じたもので、「 ISO200 」と表記されれば、アメリカでもロシアでも日本でも同じ感度であることを表すのだ。つまり、国別や地域別、組織別などで生じる性能表記の差異を無くすための統一基準を設ける機関なのである。

 

この基準が設けられるのは工業製品だけではない、どこかの事業所などの外壁に「ISO9001認証」と誇らしげに掲げられているのを目にしたことがあるだろう。これも国際規格のひとつであり、製品その物ではなく、その製造過程における品質管理について策定しており、その内容に合格しないと名乗ることはできないのだ。

 

品質管理の国際規格化=顧客(ユーザー)満足度を高めることというのがISO9001の根本的な考え方だ。品質管理自体は業種を問わずどこのメーカーも取り組んでいることだが、ISO9001ではそれがさらに厳密であり、商品の企画段階から書面にすることが求められる。

 

製造段階においても、自社だけがISO9001に合致していれば良いというものではない。使用される素材その物の質を問われ、またそれを作っている工場や加工の外注先にまで同等の品質管理がなされていることが要求されるのだ。

エムテック中京

MRSのブランドでZ1/Z2系やCB750系といった旧車系のリプロパーツを展開。ベテランの職人さんによる手作業から、3次元ベンダーによる最先端加工に至るまを手掛けている。

住所/三重県鈴鹿市矢橋町471-1

電話/059-383-8449

定休日/日曜日、祝祭日、土曜日のみ不定休

営業時間/9:00~18:00

 

言い換えれば、出荷する製品における不良率をゼロに近づけるのがISO9001の主旨でもある。それでも工業製品においては絶対的にゼロにはならない。その場合に発生してしまった不具合に対して、製造過程や品質管理にフィードバックし、再発防止策を講じることはもちろん、さらにより良い製品作りを行うこともISO9001取得の必要要件なのである。当然のことながら、ISO9001の認証を勝手に名乗ることはできない。認定委員会が隅々まで厳しくチェックしたうえで、認められた事業所だけが看板を掲げられるのだ。認証は永続的なものではなく、その後も定期的な検査に合格をしなければならない。

 

エムテック中京は、そんなISO9001を取得したパーツメーカーなのである。それはひとえに「購入してくれたお客様全員に質の高い製品をお届けし、安心して使ってもらいたい」という思いからだ。一見すると違いはないようにも思えるが、長きに渡って使い続けることでその違いは明らかになってくるハズ。それは見えない部分でも手間を惜しまず、作り込まれているからであり、その裏付けともなっているのがISO9001の認証なのである。

パーツを購入したライダーはもちろん販売ショップまで笑顔にする製品づくり

そんなISO9001の取得から3年目を迎えるというエムテック中京。当初は厳しい国際規格の取得と維持が生産現場の負担になりはしないかという心配もあったようだ。しかし、そんな心配をよそに、現場スタッフたちは認証を受けたことで国際的にも認められた自分たちのモノづくりへのこだわり、職人としてのこだわりに確かな手ごたえを感じ、さらなる品質向上への探究心も増すことになったという。

 

こうした作り手の熱意が注がれたエムテック中京のリプロダクトパーツ群。その存在感と完成度は、購入したライダーたちの満足度を高めるだけでなく、実際にライダーに販売し、その笑顔を身近に見ることのできる販売店からの支持も厚いようだ。買う側も売る側も満足できるパーツ生産の実現。それはおそらく、あらゆるメーカーが夢見るモノづくりの理想的な体制かもしれない。エムテック中京がそんな理想を現実のものにできた第一歩こそが、ISO9001の認証にあったのである。

同社で製造されているガソリンタンク(画像はZ1/Z2系用)の検査風景。タンク内に空気で0.2気圧ほどの圧力を掛け、その後水に沈めて上面、下面、左右、溶接箇所などに問題が無いかをチェック。不良箇所があれば、そこから空気が泡となって出てくる仕組みだ。問題が無ければエアブローして水気を飛ばし、次の行程へと送られる。タンク以外の全製品も出荷前までに複数回のチェックが行われている。

エムテック中京の強みのひとつが、昔ながらの手法による「味」を出せること。画像はマフラーの集合部を「ガス溶接」によって行っているところ。一般的な電気溶接と異なり、独特の溶接痕が旧い車両に合う。溶接完了後、やはり排気漏れがないかを全品検査される。

ベテランの手によるワンオフにも対応している。画像はエキパイに使われるステンレスパイプの曲げの光景だ。そのままだと曲がり部分にシワができてしまうために、内部にしっかりと砂を詰め、その後にトーチで真っ赤になるまで炙って形になるまでに曲げてゆく。

エムテック中京が「 MRS 」ブランドで展開する旧車用リプロパーツ

オリジナルの「味」を再現する独自の技術で、旧車を愛するライダーすべてに高品質と安心を提供

エムテック中京は旧車のリプロパーツを得意とするメーカーであり、MRSブランドで商品を展開している。重点を置いているのは当時の雰囲気であり、それを再現しながらも現代的な製法を取り入れ、クオリティの高い製品とされているのが特色だ。今回は、その柱のひとつにもなっているカワサキZ1/Z2系のパーツについて細部を含めて見てみよう。

 

MRS製 Z1用 内プレス タンク

通称内プレスタンク。素材は、内外の両面共に亜鉛コーティングが施されている厚さ1mmのスチール。それをハンドTIG溶接によって製作。全品耐圧検査済みだ。

フューエルコックが付く部分は、オリジナルと同様に、リングワッシャーがスポット溶接によって取り付けられている。この部分からガソリンの漏れが生じにくいのが特色だ。

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エンブレムが付く部分は、初期型のショートピッチ(122mmピッチ)と、後期型のロングピッチ(140mmピッチ)、汎用的なダブルサイズの3種類が用意されている。

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MRS 製 Z1 無番4本出しマフラー

1本1本の合わせ面は手作業のTIG溶接によって作られており、その後にメッキ処理が施されている。取り付けに必要なパーツは別売り。

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Z1/Z2用シート

シートベースはスチール製を使用しており、シートベルトにヒンジ、ラッチも付属。座面の形状により3タイプが用意されている。

スタンダードタイプ

座面がフラットなタイプ。

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アンコ抜きタイプ

ライダー側のみをアンコ抜きしたタイプ。

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ダブルアンコ抜きタイプ

ライダー、ピリオンライダー共にアンコ抜きしたタイプ。

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【左】座面部分のアクセントともなっている凸凹は表皮だけによる物ではなく、中身のウレタンからそのような形状となっている。

【右】新たに起こしたシートベースによってテールエンド形状もオリジナルを忠実に再現。カーブによってテールカウルとの隙間を生み出す。

Z1/Z2ミラー

本体とステーはブラックとメッキの2タイプが用意されており、それぞれにステーはロングタイプとショートタイプが同梱されている。

振動によるブレやミラー面自体の落下を避けるために、ミラー部分に雌ネジが切ってあり、ステーの雄ネジで固定するよう構造だ。

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後方の確認性を向上させるために、ミラー部分はわずかに凸面鏡とされている。平面鏡と比べると、映し出される面積が広いのが特色。

Z1/Z2ヘッドライトステー(初期型タイプ)

パイプではなく、肉厚1mmのスチールの板を巻き、それをスポット溶接にて製作。ステー部分の溶接箇所は肉盛りしてバフがけ。ハードクロームメッキで仕上げられている。

金型から新たに起こして製作されており、無加工で取り付けが可能。カチオン塗装で仕上げられている。

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