取材協力/MotorRock 取材・撮影・文/高城一磨 構成/ストリートライド編集部
掲載日/2011年8月31日
よくもまあ、ここまで作り込んだものだと思う。ベース車両を考えるとスタイルはチョッパー風に変貌したと言えるが、余分なものを削ぎ落としただけではなく、創意工夫を積み重ね、オリジナルとして生まれ変わったこの世に1台きりのバイクだから、ワンオフモデルと言ったほうが正確だ。60年代のハーレーXLHのようなヘッドライトナセル、反り返るように角度をつけるフューエルタンク、ラグを使いパイプをロウづけしたかのようなフレーム、そして細やかに刻まれた空冷フィンを持つ味わいあるエンジンと、パーツ単体でも見飽きることなく、またそれらが渾然一体にまとまった全体のスタイリングもレベルが高い。
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愛知県のモーターロックが製作したこのワンオフモデルは、ヤマハTX750をベースにヘッドパイプ周辺を除くフレームをオリジナルで作った渾身の作で、代表の片桐氏が仕事の合間を縫いながら2年の歳月をかけてまとめた1台だ。こうして見ると、TX750のエンジンはこんなにも美しく存在感があったのか、と改めて見入ってしまう。見ていて飽きないのは、エンジンばかりではない。例えばハンドル周りのワイヤー関係の処理方法。スロットルにインナーケーブルタイプを採用するのは常套手段としても、ブレーキホースとクラッチケーブルは生かしたままオリジナルハンドルのライザー部から内部に隠してしまう手法や、フレームのバックボーン部分に対し浮いた状態でマウントされるタンク裏側のモールディング処理など、造形自体もそうだが、細部の仕上がりも入念だ。まさに「徹底した」という言葉が相応しい。
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もちろん、モーターロックが生み出すバイクはこのようなハードなワンオフモデルばかりではなく、車両持込によるポイントを押さえたカスタムも多い。ドラッグスター、グラストラッカー、SRにFZ-1と、アメリカンからスポーツモデルまで、オーナーの相談とともに持ち込まれる車種は多岐に渡る。その辺りの詳細は、同店ウェブサイトにこれまでのバラエティに富んだカスタム事例が掲載されているので見ていただきたいが、その基本スタンスとしては「お客が望むものを作る」というところにある。その敷居は決して高くなく、フレンドリーだ。
バイク及びパーツの製造をひとりでこなす、オーナー片桐氏。全日本ロードレースでも活躍した鈴鹿のオーヴァーレーシングで修行を積んだ。温厚な口調ながら、言葉からは芯の強さが伺える。
片桐氏の右腕で、営業から広告、パーツの管理までを一手に引き受けるマネージャーの小林氏。モーターロックではオリジナル+社外を含めパーツ点数が1000点を超える(!)ため、専任として活躍。
自分のバイクをよりクールに、さらに快適に、と思うのはオーナーの性だが、カスタムの要求レベルは人によって異なる。ノーマルフォルムが好きだから部分的に変えたい、という人もいるだろう。削る、伸ばす、曲げる、創る、内燃機加工以外のほとんどをこなす片桐氏だけに、漠然としたイメージを形にするのは得意中の得意。汎用パーツを使いコストを抑えてバランスを取る方法もあるから、まずは相談から始めるのがベストだ。「こうしたいと思っているが、どう思いますか?」、そんなシンプルな質問からでいいと思う。知らない相手には、自分の考えをどう伝えていいかビルダーだって迷う。今回紹介したTX750のような「お任せワンオフモデル」が生まれるまでには、事前にオーナーとビルダーの間に密な時間があった。ワンオフモデルはオーナーとビルダーがともに理解し合えた先にある、結晶とも言える。こだわりはじめたら、徹底的。そんな作り手の心をどれだけ刺激できるかは、あなた次第である。
特徴的なヘッドライトナセルは単品製作品。アルミ板を使いイングリッシュホイール等を駆使して描いた曲面が見事。ワンオフのハンドルにライザーも凝っている。
レーシーなデザインのシングルパネル・ドラムブレーキはSR用。そこに社外パーツを組み合わせ、まとめている。全体のスタイルに合わせたコーディネート術だ。
スイッチはモーターロックオリジナルの69スイッチ。ハンドルに沿う形状だからシンプルにまとめられる。バンテージグリップ、ポリッシュレバーとのコンビも良好。
ラグ風フレームは、最初に一回り大きいパイプを溶接前のフレームに通しておき、フレーム用パイプを溶接後ジョイント部分に先通しのパイプを持ってきて溶接。
パーツメーカーとしても人気の、
モーターロック@名古屋
カスタムファクトリーとして積極活動中のモーターロックは、名古屋港そばの港区にファクトリーを構える。国産、外車を問わない片桐氏のカスタムワークは、幅広い年齢層のファンがいる。様々な車種に使えそうなオリジナルパーツが充実した同店のウェブショップは、全国から注文がくる。必見です!
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住所:愛知県名古屋市港区油屋町4-19
電話:052-382-6260
URL:http://www.motorrock.net/