
※この記事は雑誌『モトメンテナンス』135号(2017年12月16日発売)に掲載された内容を再編集したものです。記事の内容は雑誌掲載当時のものです。
年末大掃除で大活躍!! 油汚れを分解する洗剤としても知られている、あの重曹をメディアに使っているのがEZブラストである。本誌『モトメンテナンス』やフェイスブック動画での反響が想像以上に大きかったのは、重曹ブラスト=EZブラストに対して、可能性を見いだしているサンデーメカニックが実に多いということでもある。
海外のレストアシーンでは、以前から実用化が進んでいる。ここでもう一度、重曹とは何なのか? 確認しておきたい。重曹とは、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ソーダ)の別称であり、弱アルカリ性なのが性質的な特徴である。食品への添加(パン生地やお菓子作りなど)や医薬品への添加(シュワーッとする胃薬など)で利用されることが多いそうだ。
つまり人畜無害。環境に優しい特徴を持っているのが重曹なのだ。冷水には溶けにくいが、加熱したり、お湯に混ぜたりお湯を掛けたりすると、炭酸ガスとなって揮発してしまうのも特徴である。台所の油汚れやシンクの汚れ落としに利用する例は多いが、蛇口から出てくる40度弱のお湯でも簡単に溶けてしまうことから、冷水でこそウエットブラスト効果を得られるということがわかる。ちなみに本誌ガレージで利用しているウエットブラストでは、お湯を使って部品をブラスト処理すると、その洗浄能力は極めて高まるが、この重曹ブラストの場合は、重曹が溶けないギリギリの水温で処理するのが、もっとも効果的なのでは? とも考えられる。
EZ Blast EZ40-SXスターターキット ドライ&ウエット兼用仕様 10kg専用メディア付き
価格◎6万5,628円(税抜)
直圧ブライトシステムに似ているが、重曹メディアを直噴するシステムが組み込まれた18リットルの縦型タンク。一般的な認識では、ウエット仕様では高水圧でメディアを吸い上げるが、このシステムでは噴射寸前に水道水を混ぜてウエット化している。
さて、人畜無害で使い勝手が良い重曹ブラストには、本誌スタッフも大注目!! 様々な部品でテストした中で、他のブラスト処理では得られなく、明らかに違う仕上がりを得られたのが「クロームメッキ部品」のサビ落としだった。ご存じのようにメッキのサビにも度合いがあり、メッキ層を浮き上がらせてしまうほどのコンディションから、汚れのように表面だけに発生した軽度なものまで、実に様々。地金まで浸透したサビは、クロームメッキ層を浮き上がらせてしまうが、そんな状況でもそれなりの美しさを得られた。単純な表面サビ=ツブサビなら、何事も無かったかのように、ピカピカ!! ツルツル!! の仕上がりになる。こんな作業を、あっという間に完了できるのだから素晴らしい!!
クロームメッキの表面サビを落そうと、防錆スプレーを塗布して馴染ませてから、金属タワシで知られるボンスターで磨くのが一般的なやり方である。しかし、磨いた後に細かなスクラッチキズが入ってしまうケースが多い。そんな手磨き仕上げとは大きく違い、指先が入らないような細かな部分でも重曹メディア+ジェット水流の威力で一気に洗浄除去!! しかも処理後のメッキ表面には、一切悪影響が無いのは申し分のない素晴らしさである。
今回、EZブラストの発売元であるJNIテックに持ち込んだのは、長年に渡り倉庫内にブラ下げられていた、未使用のクロームメッキマフラー。全体にサビが発生しており、特に、裏側の表面サビは全体が真っ茶色になるほどだった。あとはクロームメッキの鉄リムとクロームメッキの前後フェンダーなどなど。実作業の様子と仕上がり具合は、ビフォー&アフターの比較写真でご覧頂いている通りである。
これまでなら、防錆スプレーを大量に塗布してからしばらく放置し、浸透したであろう頃合いに細目のボンスターで磨き、仕上げていたが、このEZブラストの威力と仕上がりの美しさを知ってからは、手で磨いて仕上げるのがバカバカしくなるほど……。相当な時短と均一の輝きには、本当に大満足である!!
もしかして? スポークホイールASSYで汚れ落としすれば、ユニクロメッキスポークの黒ずみが輝くかも? なんて思って作業実践してみた。しかし、クロームメッキのサビ以上に相手は手強く、決して思い通りの美しさや輝きを得ることができなかった。過去に当企画では、ユニクロメッキの黒ずみを輝かせるためにガラスビーズの200番を使ったウエットブラスト処理にチャレンジ。そちらの方が良い結果だった。集中的にガラスビーズをぶつけなければ、ユニクロメッキ層内で輝きを取り戻すことができるのだ。
現状スーパーカブのボロボロ鉄リムを交換しようと思って調達した当時物の鉄リム。新品ではなく敢えて同じ年代の中古部品を使いたいユーザーが増えているが、そんな鉄リムでもサビ落としができれば……。
EZブラストの応用性には数多くの期待が寄せられている。自動車のレストアや仕上げにも最適で、エンジンルーム内部の洗浄には最適らしい効果があるようだ。洗浄処理後に温水洗浄機で仕上げれば、堆積した重曹メディアはキレイさっぱり洗い流すことができるのだ。(田口勝己)
アルミナサンドやガラスビーズとは違って、圧倒的に比重が軽い重曹をメディアにしているのが特長。同社が取り扱うマジックメディアと呼ばれる専用メディアは20kgで8,640円(税込)で販売。
地金まで深くサビ込んだ部分はさすがに浮き出た凸面が残るが、よっぽど酷くなければクロームメッキ層が剥離し落ちてしまうことも無かった。その他、いわゆる表面サビなら驚きの仕上がりに!! ボンスターや金属ブラシで磨き落すのと違って、重曹ブラストならスクラッチキズがほぼ皆無!! その輝きたるや素晴らしいのひと言。アルカリ系の重曹メディアなので処理と同時に油汚れも一掃しつつ、処理後に放置していても簡単に再サビ発生に至らない。
半露天での放置期間が長かった実用車の鉄リムとなればサビが気になってしまうが、磨き落すのではなく、重曹ブラストで優しく汚れ落としの感覚で処理することで、それはもう驚きの美しさと輝きに蘇った!!
環境に優しい重曹メディアなので、野吹きで作業したいときにもこのようなバリアスクリーンがあれば作業性は良好。地面に落ちて残ったメディアはスコップで集め、湧かしたお湯を掛ければスーッと溶けてガスになってしまい、その後は固形化することもない。
もともとは4輪SUVのカスタム車作りやメッキホイールの輸入販売をしていたが、必要に迫られて導入したソーダブラストの改造をきっかけに、EZブラストの取り扱いが専業になったJNIテック代表の栗原さん。