ソーダブラストの可能性!! あの「重曹」をメディアとして使い新たなる輝きに興味津々!!
掲載日/2018年04月26日
取材協力/JNIテック(EZ Blast Japan関東拠点)  記事提供元/モトメンテナンス編集部

※この記事は雑誌『モトメンテナンス』134号(2017年10月16日発売)に掲載された内容を再編集したものです。記事の内容は雑誌掲載当時のものです。

アルミナサンドやガラスビーズをメディアにしたサンドブラストジルコニアと呼ばれるメディアを使ったウエットブラストがお馴染みだが、ここで紹介するのはモト・メンテナンス誌初登場の「ソーダ=重曹(じゅうそう)」を使った新たなブラストシステムだ。

D.I.Yが楽しい!! 磨き&輝きの効率アップ!!

海外の自動車レストアシーンでは、以前から話題になり実用が進んでいたソーダブラスト。あの「重曹」をメディアにしたサンドブラストシステムである。

重曹とは、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ソーダ)の別称で、弱アルカリ性なのが性質的な特徴だ。食品への添加(パン生地やお菓子作りなど)や医薬品への添加(シュワーッとする胃薬など)で利用されている。

つまり人畜無害な性質的特徴を持っている。冷水には溶けにくい一方で、加熱したり、お湯に混ぜると炭酸ガスとなり揮発してしまうのが重曹だ。あの入浴剤の成分としても知られており、おとうさんの味方、スーパー銭湯などで人気の高濃度炭酸泉などでも重曹が活躍している。

そんな人畜無害で使い勝手が良好な重曹に注目し、開発されたのがソーダブラストである(海外ではそう呼ばれるケースが多い)。レストアシーンでは、野吹きが当たり前かつ一般的となる。

そんな商品を輸入し、実際の業務で使ってみようと考えたのがJNIテック代表の栗原さんだった。

「重曹なら優しくブラストできると思いました。四輪のカスタムホイールを輸入販売してましたが、クロームメッキホイールの洗浄やペイント前の下処理に使えるかもしれない?」と思ったのが、試験導入してみたきっかけだと栗原さん。

実は、一般的に使用されているガラスビーズやガラスパウダーのメディアを使ったブラストでは、クロームメッキの汚れが簡単に落ちる一方で、メッキの輝きが鈍くなってしまうデメリットがある。

「そんな懸念を一掃できたのが重曹メディアのブラストでした」と栗原さん。ところが、海外から購入したシステムには気になる部分が多く、納得できないこともあったので、その都度、様々な改良を施したそうだ。そして、必要として下さるユーザーさんがいるのならと、国内での販売にも注力していくことになったそうだ。

EZ Blast EZ40-SXスターターキット 10kg専用メディア付き
価格◎4万1,800円(税抜)

一見では直圧ブラストシステムに似ているが、18リットルの縦型タンクに重曹メディアを直噴するシステムが組み込まれている。現在はドライブラストとして発売されており、従来製品のユーザーを優先してウエットシステムガンを別売している。

その商品は「イージーブラスト」と名付けられシリーズ化されている。最新型のEZ40-SXは、重曹を直噴ブラストするタンクの内部部品に改良が加えられ、さらに最新仕様では、標準のドライブラストノズルを専用ノズルに交換し、水道水を導くことで、ウエットブラスト化に成功しているのだ。比重が軽い重曹は、ドライで噴射すると煙幕のようになってしまう。そのモヤモヤは水道水の同時噴射で解決できる。

「もっと使いやすく周辺を汚さないように、専用のブラストキャビネット開発も考えました。でもせっかくなので、ローコストで楽しんで頂きたいと考えてます。我々としては、最低限必要なシステムだけをお客様に提供して、ブラストキャビネットはユーザーさん自身が使いやすいようにご用意して頂ければ……」と栗原さん。

デモンストレーションを取材させて頂いた際に、我々モトメンテナンス編集スタッフとしても数多くの驚きがあった。一番驚いたのが、クロームメッキ表面のサビを一気にツルツル、ピカピカに仕上げたことである。金属磨きケミカルとボンスターを併用しても、磨き後にはスクラッチキズが残ってしまうことがあるが、重曹ブラストならメッキ面は均一の輝きになる!!

深くボロい浮きサビなどでは、メッキ層ごと剥がしてしまうが、表面サビなら驚きに値する仕上がりで、輝きを復活させてくれるのだ。また、弱アルカリ性なので金属を腐食させてしまう特徴もあるが、処理後数日程度なら、なんら変化は無かったので、処理後はパーツの洗浄と周囲への気配りをすれば十分なはずだ。

ウエット化によって使い勝手がさらに向上したイージーブラスト、この処理能力を見た瞬間に思い浮かんだのが、絶版旧車のスポークホイール洗浄である。コンプリートバイクの汚れでも、簡単な養生だけで輝きが蘇るとなれば、数多くのユーザーが注目して当然だと思う。まだまだ国内では普及していない重曹ブラストなので、近々、再び試してみたいと思う。個人的に考えているのは、ひどいアルミ部品の腐食処理にはアルミナサンド+ドライブラスト。部品表面の輝きや再生にはガラスビーズのウエットブラスト。クランクケースの内部汚れやエンジン部品の汚れ落とし、燃焼室洗浄、そして、クロームメッキ部品のサビ落としには重曹ブラスト。そんな使い分けができたなら、サンメカ冥利に尽きますよね!?

何しろ重曹メディアなら、熱を加えたりお湯で洗い流せば、細い通路やオイル通路内にメディアが詰まってしまうことも無いのだ。キャブレター再生には最高の処理設備になりそうだ。(田口勝己)

AC100Vの1馬力コンプレッサーを使っても、サージタンクを利用することで処理能力は安定する。イベント(主に4輪系)会場でも1馬力コンプレッサーでデモンストレーションを行うほどだ。システムの開発はJNIテック独自のものだ。

アルミナサンドやガラスビーズとは違って圧倒的に比重が軽い重曹をメディアにしているEZブラスト。重曹メディアにも粗さ違いがあるそうだが、マジックメディアと呼ばれる専用メディアは20kgで8,640円(税込)で販売している。

地面に落ちても環境に悪影響を及ぼさないとはいえ、作業環境周辺は粉だらけになる。JNIテック代表の栗原さんは、この現状を改善するためにウエットブラストシステムを考案した。

耐熱樹脂製ボディの重曹ウエットブラストガン。本流はドライの重曹ブラストで、吹き出す直前に水道圧水を合流させることで重曹パウダーを舞飛ばさないシステムとした。ドライ、ウエット、使い分けられる。

ガンに付くレバーは水道水のバルブで、最初はチョロチョロ水が出ているが、本体の切り換えバルブを開くことで直圧重曹ブラストのメディアが吹き出すシステムだ。実に単純明快なのだ。

クロームメッキに発生したサビ落としで威力を発揮!! この状況を見て我々編集部も可能性を強く感じることができた。「モト・メンテナンスFB」では動画をアップし、数多くのフォロワーから反響があった。

スチール缶(パーツクリーナーなど)の印刷面は、極薄なのでアッと言う間に剥離処理できる。ノズルの口径が小さなドライのアルミナブラストよりも効率良く処理洗浄できるようだ。この威力も魅力的だ。

ホンダの軽自動車ビートの3 気筒エンジン。まるごと重曹ブラスト処理してこの様子。重曹はお湯で流すと溶けてしまうので、車載コンプリートエンジンやエンジンルーム洗浄にも効果的なはず。

試作部品開発用に準備した小型3Dプリンターでウエットシステム用のガンを社内で生産。現在は、すでにEZブラストを購入したユーザーに対して優先販売している。重曹ブラストの今後に期待したい。