取材協力/フロックモーターサイクル  取材・文・写真/モリヤン  構成/ストリートライド編集部

掲載日/2014年5月7日

フロックモーターサイクルは、70年代テイストのチョッパー製作が得意である
歴史や時代背景まで反映させたシルエットにこだわり、ハンドメイドで仕上げて行くことが身上だ。
個性的なチョッパーは、すべてユーザーとのディスカッションから生み出されていく。

INTERVIEW

全ての作業を自分の手で
そこがフロックのこだわる部分

フロックモーターサイクルは、今年の1月で3年目を迎えたばかりという、まだ新しいカスタムバイクショップである。代表の後藤博史さんは34歳。オープンからずっと一人でこのショップを運営している。製作するのはハーレーをベースとしたチョッパーや、ホンダのCB750Kの空冷エンジンを搭載したチョッパー等。基本的にコンプリートでのバイク製作はしないで、ユーザーからのイメージを後藤さんが具体的にデザインするという方法で車両を製作。つまりこのショップから発信されるチョッパーやカスタムは、それぞれが唯一無二のシルエットということになる。

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「高校生のころからバイクばかり触っていて、その後に努めたショップもバイク屋さんでした。そこは国産の旧車が得意な店だったので、60年代から70年代の国産車に接する機会が多かったんです。僕の歳からすれば完全に旧車というわけですが、今のバイクにはまったく存在しない機械的な美しさや男っぽさがある。まぁそれは車種にもよるのですが、特に空冷OHCエンジンを搭載したホンダCB750Kは好きでしたね。それで、当時の雑誌などを読みあさっていると、アメリカでCBのチョッパーがたくさん製作されている。それがとても興味深かったです」

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後藤さんは少年時代から手先が器用で、何でも分解したり組み立てたりということが遊びだったと笑う。その器用さは大人になるまでに徹底的に磨かれ、このショップを立ち上げてからも、基本的には何でも自分で製作するという方法で、カスタムバイクは生産されている。大量生産するわけではないカスタムに、他の人手がかかることを良しとしないのだ。たとえ何か外注に出したとしても、その仕上がりに満足できない。それが理由でほとんどすべての工程を、自分自身でハンドメイドするということになっていったという。

70年代カルチャーに興味があるのは、やはりその時代のチョッパーシーンが自由奔放で、明るさに満ちていたからだろう。当時のスタイルを象徴するロングフォークやプルバックハンドルバーは、窮屈な体制からの脱却を意味していたし、サイケデリックなカラーリングやファッションも、同じ意味を持っていた。現代から見れば、そんな過去のチョッパームーブメントそのものがクラシカルなイメージとなって、若い世代には新鮮なシルエットと感じることになるだろう。しかし、チョッパーに乗るというのは、そのテイストを受け継ぐことでもある。後藤さんの製作するチョッパーは、まるで当時のモデルがタイムスリップして現代に蘇ったかのような、不思議なテイストを醸し出しているのだ。

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「無いものは作りますが、ビンテージパーツも使って表現しています。僕は当時がリアルタイムで見られた世代ではないけど、大好きなんですよ70年代のカスタムが。だからいろいろと調べて研究していますね。実はお店のカウンター裏には当時の書籍がいっぱいストックしてあるんです。これは宝物ですね」

作業スペースにはリジットフレームに乗せられたCB750Kのエンジンや、ショベルのハーレー。ビンテージガソリンタンクのストックも目に付いた。作業台には製作途中のロングスプリンガーフォークが横たわり、壁には工作機械が置かれている。サービスファクトリーの外には塗装ブースが別建てになっていて、そこもまた、後藤さんの作業スペースなのだ。本当にすべての作業を自分自身の手で行う。徹底したハンドメイドにこだわるのは、70年代のカスタムビルダーが、みな同じようにそうしてきたからなのかもしれない。

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ビルダーとしての押し売りは絶対にしないという後藤さん。基本的にはユーザーが欲しいというマインドを受けてカスタムしていくということがポリシーだと言う。しかし、それは何でもアリという意味ではない。この工房から発信して行くカスタムは、やはりチョッパー本来のイメージを壊す物は、製作されないということだろう。

PICKUP PRODUCTS

フロックモーターサイクルの個性とは
目的のはっきりしたチョッパー製作にある

70年代からタイムスリップして現代に蘇ったかのようなオールドチョッパーには、ストックのビンテージパーツを効果的に使用しながら、独特のデザインワークで仕上げをする。70年代を象徴する日本製のCBエンジンを使ったロングフォークのチョッパーは、見事と言うべきオールドテイストに満ち溢れているのだ。それは全体のシルエットを見ても、近付いて細部を観察しても抜かりない仕上がり。荒削りでワイルドなガレージチョッパーとなっている。

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対してハーレーのエボリューションエンジン搭載のカスタムは、コンパクトなシルエットで現代的な仕上がりだ。フレームはシンプルなリジットを使用して軽快なハンドリングを演出。ツーリングにも使いやすいコミューターとしての完成度が高い。ハンドルやステップなどの変更だけで、ナロースタイルやフリスコスタイル等への変更も自在な、自由度も備え持っているのだ。

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1エンジンは1968年デビューのホンダCB750K用。息の長いエンジンゆえに正確な年代は不明である。華奢なフレームにマッチョなエンジンというのが当時のチョッパースタイルだ。

2正調セブンティーズチョッパーは、80年代の国産アメリカンスタイルに大きな影響を及ぼしたことがこのシルエットからも良く分かる。すべてのチョッパーのベーススタイルに、ホンダのマルチエンジンも存在したのだ。

3プルバックハンドルバーはワンオフ。ガソリンタンクは当時のデッドストック品。後藤さんの手でリペイントされている。スプリンガーフォークもAEEチョッパーズ製のビンテージ。スクエアのヘッドライトも当時物だ。キング&クイーンシートはベルベットの表皮で、懐かしいスタイル。

4信頼性の高いソフテイル用エボリューションエンジンを使用して製作されたチョッパーは、街乗りからロングまで幅広い使いやすさがある。ビンテージナローステムにΦ41mmのフロントフォークを使用する。

5ホイール径は、フロントが21インチでリアは18インチ。フォークのチョイスと同様、華奢なイメージを演出する細かい配慮がなされた1台である。フロントブレーキはショベル時代のピンスライドキャリパーだ。

6マフラーは、スチール製のショットガンタイプ。ワンオフ製作され、サイイレンサーも内蔵する。エンジンは1998年のソフテイル用。最後期のエボリューションエンジンだ。オープンプライマリーにスーサイドクラッチ&ハンドチェンジというハードな仕様。シートもビンテージで、短めのシッシーバーを合わす。

7ビッグツインΦ41mmフォーク用トップボルト(パイクタイプ)1949~1977年。3万円(消費税別)。オーダーでΦ33mm/Φ35mm /Φ41mm(1978~)もオーダー可能。プラス2,000円。国産車やトライアンフ用なども現物合わせにて製作可能。

8ビッグツインΦ41mmフォーク用トップボルト(スタンダード)1949~1977年。3万円(消費税別)。オーダーでΦ33mm/Φ35mm/Φ41mm(1978~)もオーダー可能。プラス2,000円。国産車やトライアンフ用なども現物合わせにて製作可能。

9スカルコフィン ガソリンタンク。容量7.5リットル。ガスコックサイズは1/4インチ。画像はサンプル塗装状態で、白ゲルコート仕上げ。3万5,000円(消費税別)

10店内の奥は大型機械や工具の置かれた作業スペース。すべて後藤さんひとりで作業を行う。

11作業台に置かれたスプリンガーフォークは、現在ワンオフ製作中。仕上げ工程で、その後メッキ加工される予定。

12訪れる人の年齢幅はとても広い。乗っているバイクの年代や種類も様々だが、カスタム熱の高い人物ばかりである。

13奥に置かれたモディファイ待ちのCB750Kが搭載されたチョッパーベース。圧倒的な存在感を放つ。

14ハーレーもオールドモデルから現行車まで幅広く扱うのがこのショップの特徴でもある。

BRAND INFORMATION

FLOCK MOTORCYCLE

住所/茨城県古河市西牛谷283-1
Tel/0280-23-1979
Fax/0280-23-1980
営業時間/11:00~20:00
定休日/毎週火曜日

起伏の少ない北関東平野に位置するカスタムバイクショップ。チョッパーを走らせるには最高の環境がここにはある。昔からチョッパー熱の熱い土地柄でもあるのだ。