取材協力/ファクション  取材・文/佐賀山敏行  写真/井上 演  構成/ストリートライド編集部

掲載日/2015年5月29日

SRや250TRなどのストリートモデルからドラッグスターなどのアメリカンまで、国産ミドルクラスをメインに取り扱うのがファクションだ。同店最大の特徴は、展示される車両すべてにフルカスタムが施されていることである。コンプリートカスタム専門のファクションが示す、新たなカスタムの世界とは?

INTERVIEW

個性的で良質なカスタムマシンが
リーズナブルな価格で並ぶ

神奈川県横浜市にショールーム、福岡県大野城市にファクトリー兼ショールームを構えるファクションは2013年5月にオープンした新進気鋭のショップである。オープン当初から2店舗を展開し、今回取材をおこなった横浜店では、展示車両のコンプリート販売をメインに行っている。取り扱うのは国産ミドルクラスが中心だ。

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最近ではカスタムといえば、ワンオフパーツやフレーム加工などが当り前となり、ユーザーそれぞれの要望にひとつずつ応えていくことが一般的となっている。しかし、同店はあえて“コンプリートカスタム”にこだわっている。その理由を、ファクション代表の江川さんに聞いた。

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「カスタム車両というのは、例えばコンプリートカスタムであれば100万円を越えることが一般的です。それだけ手が掛かっているので当り前なんですが、価格だけを見ると高く感じてしまう。つまりカスタムにはみんな興味があるけど、それを買っている人はじつはごく一部なのです。そんな、じつはコアな世界であるカスタムを、もうちょっと敷居を下げて、より多くの人に楽しんでもらいたいという思いがあるのです」

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そのためにファクションでは、コンプリートカスタムマシンをリーズナブルに製作、販売しているのだ。

店内にはオリジナルカスタムが施されたSRや250TRなどが多数並ぶ。自分が想像するカスタムマシンが実際に見られるのは嬉しいポイントだといえるだろう。

横浜店では常時10台以上の在庫車両が展示されている。分からないことはスタッフに気軽に質問しつつ、自分好みの1台をじっくりと探してほしい。

ファクション横浜店に展示されているカスタムマシンを見てみると、アメリカンモデルはもちろんのこと、SRなどのストリートモデルもチョッパースタイルにされているものが多い。そしてそれらはすべて、シートレールにドロップ加工が施され、純正とは大きくフォルムを変えている。一般的にコンプリートカスタムマシンといえば、純正フレームにボルトオンパーツを組み合わせたものが思い浮かぶが、同店のマシンは顧客のフルオーダーによって作られたかのような独自性・完成度を持っているのだ。

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「社外品として売っているパーツをただ装着しただけでは、わざわざ当店を選んで買っていただく必要はないですよね。だからフレームからカスタムして、一般的には何十万円も掛かるものをギリギリのコストに抑えて販売しています。ライトカスタムされた中古車と同じくらいの価格帯を目指しています」

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使用されるカスタムパーツも社外の専用品だけでなく、ワンオフパーツが多用されている。

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「たとえばスポーツスタータンクも専用パーツを装着したほうがラクなんですが、やっぱり価格が高くなってしまう。だから汎用品を大量に仕入れて、それを自分たちで加工して安く抑えるようにしています。同じ理由で、ペイントも自社工場で行っています」

カスタムに対する敷居を下げるため、リーズナブルなコンプリートマシン販売にこだわるという江川さん。しかしカスタムとは本来、オーナーそれぞれの個性や好みが強く反映されたものである。それらのマシンを在庫として数多く抱えるのは、外から見れば非常にリスキーにも思えるのだが……。

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「たしかにバイク雑誌などを見ると『アナタのお好みの1台を作ります』と謳っているショップさんは多い。だけど、自分の好みをしっかりとショップに伝えられるというのは、相当ニッチでコアな人たちだと思うんです。そういう人たちは『ここをこうすれば、こういう形になる』ということがイメージできますが、僕たちはそういうコアではない層にもカスタムの楽しさを知ってもらいたい。カスタムに興味はあるけれど、どうしたらいいか分からない人たちのためにやっているといっても良いですね」

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実際にファクションのマシンは高い評価を受け、ビギナーを中心に支持を得ている。「より多くの人にカスタムを楽しんでもらいたい」という江川さんの信念と、長くバイク業界にいたスタッフたちのキャリアが上手く噛み合い、カスタムマシンを望む多くのライダーたちのハートを掴む作品を多く作ることができているのだろう。

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マシン製作は自社の福岡店で行っているため、横浜でも福岡でも、実際にお店に行ってオーダーをすることももちろん可能だ。カスタムはしたいけれど、どうすればカッコ良くなるか分からない……そんな人はぜひ一度、ファクションに足を運んでみてほしい。

綺麗なショップは初心者でも安心して入れると好評。今回紹介するストリートモデル以外に、ドラッグスターやスティードなどのアメリカンモデルも多数展示している。

PICKUP PRODUCTS

コンプリートカスタムの常識を変える
個性を纏ったカスタムマシンたち

ファクションでは国産ミドルバイクを中心にラインナップを揃えているが、今回はそのなかでもSRや250TRなどのストリートモデルを中心に紹介しよう。それぞれにフレーム加工やワンオフパーツが奢られており、コンプリートとは思えない独自性を持っている。その魅力溢れるマシンたちをじっくりと見てもらいたい。(車両及びパーツ価格はすべて税込み)

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1YAMAHA SR400/648,000円 オールドレーサーを意識したボバースタイルにカスタムされたSR400。レーサー風のメガホンマフラーやアップタイプのハンドルが雰囲気を盛り上げている。

2スポーツスタータンクは同店によるワンオフ。ラップペイントを用いたグラフィックも注目すべきポイントで、個性が光るディテールだといえよう。ポップアップ式のタンクキャップも要注目だ!

3マシンのスポーティさをアップさせている要因が、キャストホイールの採用。純正キャストはフロント19インチで、リアは18インチ。オールド感溢れる車体に、さらに高い完成度を与えている。

4YAMAHA SR400/548,000円 チョッパースタイルながらも、このマシンはタンデムが楽しめるのが最大の特徴。「2人乗りはできないの?」というお客さんからの声に応えるためにリリースされた1台だ。

5低いスタイルながらもシートレールは長い……そのために採用されたのが16インチリアホイールだ。リアサスペンションと十分なクリアランスを保つことで、快適な乗り心地を確保している。

6シートレールを加工するのがファクション流。シートレールを落としつつもタンデムを可能にするため、試行錯誤が繰り返された。その結果生まれたのが、このスタイルなのだ!

7YAMAHA SR400/518,000円 マットブラックで統一された車体にアップマフラーとセパハン、さらに低くされた車高が、えも言われぬ迫力を醸し出している。定番のチョッパーとは異なり、走りも意識したスタイリングだ。

8ローダウンサスにローダウンキットを併用することで、リジッド化せずにここまでの低さを実現。ストレートに伸びたマフラーはエンドにゴールドを採用し、アクセントとしている。

9マシンの低さをより強調させるとともに、スピード感をも演出するのがセパレートハンドル。もちろんカラーはブラックで、レバー類やミラーステーなど、そのコダワリは徹底している。

10YAMAHA SR400/518,000円 オールド感のあるパーツチョイスとマットブラックが印象的なコンパクトチョッパー。マフラーやタンク、シートレールにリアフェンダーなど、同店でおなじみのワンオフメニューがこなされている。

11マットブラックにペイントされたスポースタータンク上面には艶有りブラックのピンストライプが描かれる。いかにも男っぽい、攻撃的なグラフィックだといえよう。

12ハンドルバーは同店オリジナル「7/8インチナローTバー(17,280円)」。純正ハンドルポストにピタリとハマりつつ、存在感を主張する人気のアイテムだ。

13SUZUKI GRASS TRACKER BIGBOY/448,000円 シンプルなオールドスクールチョッパーながらも、攻撃的なアタックバーハンドルとドラッブパイプによってヤンチャなイメージを演出。しっかりと車高を落としている点にも注目だ!

14カチ上がったドラッグパイプは同店によるワンオフ。シートレールをしっかりとダウン加工し、さらにパーツを流用するなどで、チョッパーらしい車高になっている。

15フューエルタンクやマフラーだけでなく、リアフェンダーなどもワンオフで製作。サイドナンバーなどオリジナルパーツも組み合わせ、チョッパーらしいリアビューを作り上げている。

16KAWASAKI 250TR/578,000円 250ccという排気量を活かした、乗りやすさをメインに考慮した1台。運転しやすいようにハンドルバーやシートなど、パーツ選びにもこだわった。ビギナーにオススメのマシンである。

17ネック周りをスッキリとさせ、チョッパーらしい軽快感を醸し出している。適度な高さのハンドルバーはライディングのしやすさを考慮して選ばれたとのことだ。

18電装ボックスをスイングアームの下に配置。こうすることでシート下をスッキリと見せつつも、バッテリーレスではないので電装パーツはしっかりと動く。実用性とルックスをみごとに両立させている。

19HONDA FTR223/448,000円 チョッパーベースとしてはあまり見られないFTRを大胆にカスタム! フューエルタンクにマフラー、リアフェンダーにサイドナンバー、さらにシートレール加工にバッテリーボックスを移設した良作だ。

20柔らかい純正リアサスペンションのスプリングをハードに設定し、さらにサス受けとリアフェンダーのマウント部を一体化。これによって大胆なローダウンが可能となっているのだ。

21独特の取り回しを見せるエキゾーストマフラーも注目のポイント! エキパイを抉ることによって、フレームとギリギリのクリアランスに配置することができている。

SHOP INFORMATION

FACTION 横浜店

住所/神奈川県横浜市南区前里町4-92
TEL・FAX/045-325-8393
営業時間/10:00-19:00
定休日/水曜日・第2火曜日

福岡店で製作されたコンプリートマシンの展示・販売が行われている。車両を持ち込んでのライトカスタムなどはできないが、カスタムをイチから製作することはできるので、自分だけの1台が欲しい人は要チェック!!

FACTION 福岡店

福岡県大野城市御笠川6-7-12
TEL・FAX/092-985-2372
営業時間/10:00-19:00
定休日/なし

ショールームとファクトリーが併設された福岡店は、コンプリートマシンの製作途中が見られるのが嬉しいポイント。もちろんカスタムをイチからオーダーすることもできるので、まずは足を運んでみてほしい。