
1967年式のアエルマッキ スプリントH。排気量250ccの空冷OHV4ストローク単気筒エンジンを搭載するハーレーダビッドソンの小排気量モデルである。まずはアエルマッキ社について簡単に説明しておこう。イタリアの航空機メーカーであったアエルマッキは第二次世界大戦後、三輪トラックとバイクの製造を開始。1960年から1974年にかけてアエルマッキのオートバイ部門はハーレーダビッドソンの完全子会社となったが、バイクの生産はイタリアで行われていた。その後、1978年にイタリアのカジバに買収され、ハーレーの生産は終了。以後、カジバ製バイクの基礎を築き上げることとなった。
今回紹介するスプリントHは、まるで大きなスーパーカブのような佇まいをしている。吊り下げ式の横型エンジンを筆頭に、どこかスーパーカブの姿がダブって見える。F18/R18インチのスポークホイールを装備した全体のスタイリングは非常にコンパクトで、小柄な男性や女性でも取り回しに苦労することはないだろう。ポジションもニュートラルなもので、すべてが自然な位置にあるという印象だ。
排気量250ccのOHV4ストローク単気筒エンジンは最高出力21馬力という、かなり控えめなスペックであるが、タウンユースをメインで考えるなら、必要にして十分なパフォーマンスと言える。アルミ製のクランクケースには、誇らしげに「HARLEY-DAVIDSON」の文字が配されている。キックスタートオンリーでトランスミッションは4速、シフトレバーは通常とは逆の右サイドに設置され、フットブレーキは左サイドとなる。
この車両のスタイリング最大のポイントは、間違いなくフューエルタンクだ。まるで前後逆に取り付けたような個性的なフォルムである。ステムヘッド側が緩やかにスラントし、シート側が逆に盛り上がり、さらに下方に向けて絞り込まれている。これで全体のバランスが保たれているのだから驚かされる。シートの形がまたいい。メタルパイピングをアクセントとしたシンプルなダブルシートだが、その厚み、エンド部の形状など、絶妙としか言い得ない。ショベルスポーツのカスタムなどに流用されることも多い、フリーク垂涎のシートである。
大排気量モデルのイメージが強いハーレーダビッドソンだけに、このスプリントHを見てハーレーだと気づくバイク乗りは、かなりのマニアだと思われる。現行モデルでは小排気量モデルとして350ccと500ccの水冷ツインエンジンを搭載したXファミリーがラインナップされているが、ある意味アエルマッキはその先祖とも言える存在だ。ビッグツインモデルとは明らかに違い、ラインナップの中では異質とも言えるスプリントHだが、これもまた紛れもないハーレーダビッドソンなのだ。
1918年、米国オレゴン州ポートランドで創業された「WESCO(ウエスコ)」。今もメイドインアメリカにこだわり続ける、世界最高峰のワークブーツメーカーだ。100年を超える歴史に裏付けられたウエスコブーツの高いクオリティは、他メーカーの追随を許さないもので、さまざまなハードワーカーから絶大な支持を得ている。その機能性はバイクギアとしても高いレベルで機能し、バイク乗りからの信頼も厚い。さらにウエスコの魅力は、世界にただ一足だけのカスタムブーツを製作できる点にある。加えて定期的に限定モデルがリリースされ、こちらも人気を博している。
今回紹介させていただくウエスコブーツは、2018年にウエスコ創業100周年を記念して製作されたアメリカ限定モデルの「1939's」である。オイルをたっぷり含んだチャコールドマーネレザーを使用しており、傷にも強くバイクライドには最適なモデルだと言える。デザインはウエスコのエンジニアブーツの黎明期に製作されたモデルがイメージソースとなる。最大のポイントはウエスコブーツの定番であるステッチダウン製法ではなく、ネイルドソール(NAILED SOLE)製法が用いられている点だ。
ハイト(踵から履き口までの高さ)はショートタイプの10インチで、シャフトには1940〜50年代に使用されていたデッドストックラベルが縫い付けられている。このラベルの存在感は特出すべきものがあり、前出の「NAILED SOLE」の文字も確認できる。
つま先の形状は丸みをおびたラウンドボス・トウをチョイス。ソフト・トウを採用しているので、つま先部分がかなり低い印象だ。アッパーレザーはトリプルステッチで仕上げられており、カラーはソールを縫い付けるヘビーステッチを含めてオールブラックとしている。エンジニアブーツのアクセントとなるバックルはBlack Platedを装備している。
ブーツの性能を左右するソールは、#700 Vibram Blackが取り付けられている。すっきりとしたデザインと機能性を両立した、非常にバランスのよいソールである。もちろんソール交換はウエスコジャパンにて対応していただける。
この1939'sはウエスコジャパンが立ち上げたセカンドハンドブーツの委託・販売を行う「YOUR WESCON」で販売されているブーツで、即購入できるモデルとなっている。現在は入手困難なアメリカ限定モデルである1939's。サイズが合えば幸運であろう。ちなみにサイズは8 1/2Dとなっている。
1967年式のアエルマッキ スプリントHは、もはやヴィンテージモデルといって差し支えのない車両である。なんと言っても58年前のモデルなのだから。一方、ウエスコ創業100周年を記念した1939'sも、ヴィンテージテイスト溢れるブーツである。スプリントHの外装のヤレ具合に、くすんだ発色のチャコールドマーネレザーがうまく溶け合っている。ブーツの経年変化により、さらに今後のマッチングが高まっていくに違いない。