
1983年から1984年にかけて、わずか2年間のみ生産されたハーレーダビッドソンの「XR1000」。純ファクトリーレーサーの金字塔「XR750」のアルミ製シリンダーヘッドと、アイアンスポーツ最速モデルである「XLX61」のクランクケースを組み合わせたエンジンを搭載したXR1000は、米国フロリダ州デイトナ・スピード・ウェイで当時開催されていたレース「バトル・オブ・ザ・ツイン」のホモロゲーションモデルで、その生産台数は1,800台に満たないものであった。発売当初はあまり注目されなかった悲運のモデルだが、近年ではその価値が見直され、市場では驚くようなプライスタグが付けられている。
今回紹介するXR1000は1984年モデルで、日本で新車登録された非常に希少な車両だ。しかもフルオリジナルというから驚かされる。現在のオーナーは3代目で、走行距離はわずか7,000マイルほどいう極上のコンディションを誇っている。F19/R16のセッティングにスーパーバー、ピーナッツタンク、そら豆シートなど、「これぞスポーツスター!」と、思わず膝を叩きたくなるようなこのスタイリングには、現行モデルが失ってしまった造形美が宿っている。
その最たるものがこのパワーユニットである。丸みを帯びたシリンダー&ヘッドのフィンにXR特有のロッカーカバーはマニア垂涎のディテイルと言える。デロルト製キャブレターを右サイドにダブルで装置し、左サイドには2イン2のアップマフラーを取り回すという独自レイアウトも特出すべきディテイルだ。シンプル極まりないフューエルタンクのカラーリングにもセンスを感じる。
スピードとタコ、オド&トリップメーターという最小限のインフォメーションのみのダブルメーターであるが、純粋に走りを楽しむだけならこれで十分ではないだろうか。またメーターのデザインがなんとも洒落ている。大きめサイズの通称「ミカンウインカー」も外せないディテイルだ。
決して爆発的に速いわけではなく、カミソリのような切れ味のあるコーナリング性能も持ち合わせていない1984年式のXR1000。現在のリッタークラスのバイクに比べたら、その性能は圧倒的に劣っていると言わざるを得ない。しかし現代のバイクがその絶対的な性能と引き換えに失ってしまったものが、このXR1000には確実に息づいている。それをひと言で表現するなら、何にも迎合しないハーレーダビッドソンならではの「個性」ということに他ならない。40年以上の時を超え、その輝きは増すばかりだ。
1918年、米国オレゴン州ポートランドで創業された「ウエスコ」は100年を超える歴史を従える世界最高峰のワークブーツメーカーである。現在もメイドインアメリカにこだわり続け、熟練した職人の手により生み出されるウエスコブーツは、さまざまなハードワーカーから絶大な信頼を得ている。ウエスコ製ワークブーツ特有の高い機能性は、バイクライディングギアとしても有効に作用し、事実、ハーレーダビッドソンを中心としたバイク乗りのファンも多い。またウエスコの魅力は、それぞれの使用用途に適した世界にただ一足だけのカスタムブーツを製作できる点が挙げられる。もちろん、ファッション要素を多分に含んでカスタムすることも可能だ。
今回ご紹介させていただくウエスコブーツは、プルオンブーツの「モリソン」である。ウエスコブーツのプルオンブーツと言えば、エンジニアブーツの「ボス」がまず思い出されるが、モリソンは「ウエスタンボス」の相性で親しまれているモデルで、やや尖った形状のつま先と、金具を使用していないプルストラップなどのディテイルにより、カウボーイ御用達のモデルとなっている。
使用されるレザーは定番のブラックレザーでハイト(踵から履き口までの高さ)はショートタイプの10インチを選択。アッパーレザーのライトウェイトステッチはブラウン、アウトソールを縫い付けるヘビーステッチはホワイトが採用されている。豊富なカスタムメニューにより、使用するレザーの種類やカラーの変更、またツートーン、スリートーンの組み合わせも可能。もちろんステッチのカラーリングもお好みに合わせて変更することができる。
プルオンブーツの顔とも言えるトウプロフィール(つま先の形状)は、足の甲からつま先にかけて薄く、やや尖った形状のモーターサイクルパトロール・トウ(MPトウ)をチョイス。ソールには1ピース構造のトラクションソール、#1010 ARMORTRED(現在は廃番)が取り付けられている。かかとが低いMPトウとARMORTREDソールの組み合わせにより、フラットな履き心地を実現し、スニーカー感覚で履くことができる。
このモリソンはウエスコジャパンが立ち上げたセカンドハンドブーツの委託・販売を行う新サービス「YOUR WESCO」で販売されているブーツで、サイズさえ合えば即購入できるモデルとなっている。YOUR WESCOで取り扱われているブーツは単なるセカンドハンドブーツという意味合いではなく、現在は入手できない当時の限定モデルや限定レザーなどを使用した希少なオールドブーツも数多く販売されている。
ハーレーダビッドソン特有の個性を宿したフルオリジナルのXR1000と、シンプルなウエスタンブーツ、モリソン。純粋にバイクとしての基本性能に磨きをかけたレーサー譲りのホモロゲーションモデルであるXR1000は質実剛健、かつパワーユニットは機能美に溢れている。過度な装飾を廃したモリソンも然り。この両者、プロダクツの本質にブレはない。