
ハーレーダビッドソンの旗艦ファミリーであるツーリングモデルにおいて、市街地走行の利便性を狙ったモデルに与えられる「ストリート」の名を冠した「FLHX ストリートグライド」。その登場は2006年に遡り、ツーリングモデルの象徴である大型のツアーパックが取り外されたサドルバックのみのスタイリッシュなリアエンドに、足つきを考慮した前後サスペンションのローダウン、ショートタイプのウインドシールドやフェアリングマウントミラーなどにより、チョッパーテイストのツアラーとして新たに生み出された革新的なファクトリーカスタムであった。その後、上位モデルの「FLHXS ストリートグライドスペシャル」や「FLHXST ストリートグライドST」、「FLHXSE CVOストリートグライド」などが登場し、その人気はゆるぎないものになっている。
最新2025年式のストリートグライドに搭載されるエンジンは、油冷式シリンダーヘッドを搭載した排気量1,923ccのミルウォーキーエイト117で、最高出力107hp@5,020rpm、最大トルク175Nm@3,500rpmを発揮する。2,000ccに迫るこの排気量を考えれば、107hpという最高出力は決して突出したものではないが、わずか3,500rpmで発揮する175Nmという最大トルクのインパクトが強烈で、まさにどの回転域からも車両重量368kgという超弩級の車体をいとも簡単に加速させていく。市街地走行であれば3速までの使用で十分。半日ほどの試乗だったが、実用面を考えると4速に入れる場面(テストで6速まで使用はしたが……)は、ほぼ皆無であった。
最新のストリートグライドにはロード、レイン、スポーツという3つのライドモードが搭載されており、さらに任意で設定可能なカスタムモードも用意されている。コックピットには312mmという巨大なタッチスクリーンTFTディスプレイが取り付けられており、ナビゲーションやさまざまなインフォテインメントを表示可能。またモードの選択により3つの表示パターンを選ぶこともできる。4チャンネル200Wアンプを搭載したオーディオシステムにより、走行中もクリアなサウンドを楽しむことができる。これはツーリングモデルの特権と言えるだろう。
ペイントがまた凝っている。今回紹介するカラーのミッドナイトファイアーストームには、バットウイングフェアリングを筆頭に、フロントフェンダー、フューエルタンク、サイドカバー、サドルバッグにメタル調のゴーストフレイムスが描かれている。光の加減で表情を変える非常に洒落たペイントスキームである。
シート高は715mmで足つきは良好。包み込まれるようなシートのフィット感も抜群だ。特に尻から腰にかけてのサポートが秀逸で、長距離ライドにおいてもシートにストレスを感じることはないだろう。また手前に引き込まれたハンドルバーのグリップ位置が絶妙で、やや下方に絞り込まれていることもあり、とてもリラックスしたポジションで操作性も高い。大排気量Vツインエンジン特有の鼓動感を擁した無二の乗り味と、この超弩級の車体から、「バイクに乗っている」という感覚よりも、「ハーレーに乗っている」という意識の方が圧倒的に強い。これこそがブランディングであり、ハーレーダビッドソン製ツーリングモデル最大の魅力なのだ。
世界最高峰のワークブーツメーカーとして確固たる地位を確立している「WESCO(ウエスコ)」。1918年、アメリカのオレゴン州ポートランドで創業されたウエスコは100年を超える歴史を持ち、今もメイドインアメリカに拘り続けている。ウエスコブーツのその高い機能性は、バイク乗りが求めるニーズにも直結し、事実ハーレー乗りを中心にした感度の高いバイク乗りからも大きな支持を得ている。「いつかはウエスコ……」という憧れを抱くバイク乗りも少なくない。ウエスコの魅力は機能性だけにとどまらず、豊富なカスタムメニューにより、世界にただ一足だけのカスタムブーツを手に入れることができる点があげられる。用途に応じたモデルを選び、そして仕様を事細かに変更することで理想の一足を作り上げることができるのだ。
今回紹介するウエスコブーツはプルオンブーツの「MORRISON(モリソン)」である。バックルやストラップなどを排除したウエスタンブーツを思わせる質実剛健な作りが特徴的なモリソン。シンプルなゆえ、その耐久性は折り紙付きである。尖ったつま先やラウンド状の履き口など、カウボーイに由来する乗馬に適した仕様が見て取れる。もちろんカスタムオーダーにより、オーナーの用途に応じた仕様に変更することもできる。
使用されるレザーは定番であるブラックのオールラフアウト(スエード)で、ハイト(踵から履き口までの高さ)はスタンダードとなる12インチを採用。オーダーにより、ショートタイプの8インチから1インチ刻みでロングタイプの20インチまで選択可能。レザーに関しても単色ではなく、好みに合わせてツートーンやスリートーンを選択することもできる。
つま先の形状は足の甲からつま先にかけて低く、やや尖った印象のモーターサイクルパトロール・トウをチョイス。ステッチはアッパーレザーに使用されるライトウェイトアッパーステッチ、ソールを縫い付けるヘビーアウトソールステッチともにシンプルなブラックを選択。ブラックのオールラフアウトレザーと合わせて、とてもソリッドな印象に仕上げられている。そしてこのモデルの左足にはバイクライドを考慮したシフトパッチを、さらに右足にはアクセントとなるナイフポケットが装備されている点にも注目していただきたい。まさにバイカー仕様のモリソンと言える仕様である。さらにプラチナカラーのレザーライニングを装備し、耐久性と防水性が強化されている。
ブーツの性能を左右するソールには、高いクッション性を誇る1ピースタイプのトラクションソール、#4014 Vibram Blackが取り付けられている。スニーカー感覚で履けるため、タウンユースにも適したソールである。踵がない1ピース構造なので、ステップに対する足の置き場の自由度が高く、バイクライドにも最適だ。
今回紹介させていただいたモリソンはウエスコジャパンが2025年2月に立ち上げたセカンドハンドブーツの委託・販売を行うサービス「YOUR WESCO」で販売されているブーツとなる。セカンドハンドというだけではなく、当時の限定モデルや、現在は生産されていないレザーを使用した価値あるオールドモデルも数多くラインナップされているので、ぜひともご確認いただきたい。
超弩級の排気量2,000ccに迫るミルウォーキーエイト117を擁したハーレーダビッドソンのツーリングモデル、ストリートグライド。片やカウボーイが愛用するウエスタンブーツを源流に持つウエスコのタフなカスタムモリソン。どちらも強いアメリカを象徴する偽りのないプロダクトであり、このふたつの組み合わせが決まらないわけがない。