
2021年モデルで終焉を迎えたハーレーダビッドソンの空冷スポーツスターファミリー。その系譜は排気量1,252ccの水冷60度VツインRevolution Max1250Tを搭載したニューモデル「スポーツスターS」と、排気量975ccの水冷60度VツインRevolution Max975Tを搭載した「ナイトスター」とその派生モデルに現在は受け継がれている。中古車マーケットではエボリューションエンジンを搭載した空冷スポーツスターの価格は高騰状態にあり、その人気は年々増している。
今回紹介するモデルは1991年式のスポーツスターXLH1200。比較的トラブルの少ないオールアルミ製エンジンを搭載したエボスポーツであるが、1991年式といえば、今から34年も前のモデルだ。それを考えれば、エボスポーツはもはや立派な旧車といえるだろう。カスタムペイントのようなフューエルタンクのグラフィックは当時の純正カラーで、現代のハーレーダビッドソンのラインナップではちょっと考えられないテイストといえる。このオレンジのカラーリングも然り。
純正P&AのKERKER製マフラーとショートシッシーバー以外はストックスタイルが維持された「ザ・スポーツスター」とも呼べるスタンダードな車両である。ふわふわのダブルシートに極楽ポジションのプルバックハンドル、ショートシッシーバー装着によりタンデムライドでのロングツーリングも余裕でこなす懐の深さは、1200ccのスポーツスターならではの魅力だ。
現代のバイクに比べ、絶対性能では圧倒的に劣っていると言わざるを得ない、30年以上前のスポーツスター。電子制御は一切なしのキャブレターモデルでABSさえ装備していない。もちろん灯火類はすべて電球式。それでも、まるで生き物のようなエンジンの鼓動感とその牧歌的な乗り味は、最新のバイクでは決して得られない操る楽しさとヒトの五感に訴えかける大きな魅力に満ち溢れている。
「何を選択し、何を捨てるのか?」。バイク選びの根源は、こんなひと言にあるのではないだろうか。
100年を超える歴史を従える世界最高峰のワークブーツメーカー「ウエスコ」。1918年、米国オレゴン州ポートランドで創業されたウエスコは、今も頑なにメイドインアメリカにこだわり続けるレジェンドメーカーである。職人の手により生み出される質実剛健のウエスコブーツは、さまざまなハードワーカーから絶大な信頼を勝ち取り、彼らの足元を守り続けている。そのワークブーツとしての機能性は、過酷な条件を強いられるバイクライディングギアとしても高く評価されおり、ハーレーを中心としたバイク乗りからの支持も厚い。
今回紹介するウエスコブーツは、レースアップブーツの「ウォーレン」である。ウエスコブーツのレースアップブーツといえば、まずはジョブマスターが挙げられるが、ハードな印象が強いジョブマスターに比べ、ライトウェイトステッチだけで仕上げられたアッパー部を持つウォーレンは比較的ライトな印象で、どんなファッションとも合わせやすいという利点を持っている。またバイク乗りにとってはステッチが細いため防水性が高いというメリットもある。
使用されるレザーはスタンダードなブラックレザーでハイト(踵から履き口までの高さ)はショートタイプの8インチを選択し軽快な印象に。アイレットはソリッドなブラックで、フックを使用しないオールアイレット仕様とされる。シューレースはブラックレザーレースを選択。
トウプロフィール(つま先の形状)は、つま先が丸いフォルムのボス・トウをチョイス。アウトソールを縫い付けるヘビーステッチはウエスコジャパン限定のジンジャーを採用。さらに2本ステッチとすることでその存在感が強調されている。アッパーレザーのライトウェイトステッチにはブラックが使用されている。
ソールには高いクッション性を誇る#4014 Vibramのブラックを装着。1ピース構造のトラクションソールなので、スニーカー感覚で履くことができる。ブラックの他にナチュラル(ホワイト)とブラウンもラインナップされている。
このウォーレンはウエスコジャパンが立ち上げたセカンドハンドブーツの委託・販売を行うサービス「YOUR WESCO」で販売されているブーツで、即購入できるモデルとなっている。現在は入手することができない当時の限定モデルや限定レザーを使用した価値あるオールドブーツも数多く販売されている。
旧車の域に達した空冷スポーツスターと、ファッショナブルなレースアップブーツ、ウォーレン。足を守るという根本的な機能が求められるブーツ選びは、バイク選びと共通するものが多い。まずは必要な機能を絞り込み、そして見た目を決めていくわけだが、結局は何かを捨てることが必要になり、その結果、研ぎ澄まされたシンプルな姿になっていく。それは機能美という言葉でいい換えることができるはずだ。