
日本の中型セグメントにおいて絶大な人気を誇るホンダのロードスポーツモデル「GB350」。「人とバイクの一体感」を追求し、ストレスのない自然なライディングポジションと、バイクらしい安定感のある水平基調のデザインにより、エントリークラスのライダーからベテランに至るまで幅広い支持を集めている。GB350の派生モデルとして、リアに17インチタイヤを装着したスポーティーな「GB350 S」、さらに2024年秋には今回紹介するブリティッシュテイストを色濃く反映させたクラシカルな「GB350 C」が登場した。
開発コンセプトは、ズバリ「The Standard Classical Motorcycle」。ロー&ワイドのクラシカルなスタイリングに重厚さも併せ持ち、中型セグメントのクラスを超えた存在感を放っている。ヘッドライトハウジングを中心にクロームパーツを要所に配し、高級感も演出。フォークカバー、前後のディープフェンダー、容量15Lのワイドなフューエルタンクにはタンクパッドを装備。さらに水平に設置されたキャブトンタイプのシングルマフラーも、ブリティッシュスタイルを象徴するディテイルといえる。
その心臓部には排気量348ccの空冷4ストロークOHC単気筒エンジンを搭載し、最高出力15kW[20PS]@5,500rpm、最大トルク29N・m/3,000rpmを発揮。ボアxストロークは70.0mm×90.5mmのロングストロークタイプで、低回転域から非常に粘りのあるエンジン特性となっている。ご承知のように、GB350 Cは決して絶対スピードを追い求めるようなモデルではなく、単気筒ならではのパルシブな鼓動感と重厚なブリティッシュスタイルが相まって、操作する悦びに溢れたモデルに仕上げられている。美しいフィンが際立つブラックアウトされたエンジンの造形も、オーナーの所有欲を満たすものだ。
車両重量は186kgと同セグメントのモデルと比べても軽量モデルというわけではないが、重心が低いためか、車両の取り回しに苦労することはないだろう。シート高は800mmで足つき性は標準的なものだ。拳2個分ほど肩幅より広いハンドルバーは、適度にライダー側に引き込まれており、すっと手を伸ばしたとても自然な位置にグリップがあるイメージだ。またステップの位置が絶妙で、足を下ろした際にも邪魔にならず、操作性に関しても申し分ない。ワイドなフューエルタンクとタンクパッドによりニーグリップがしやすいところも好印象といえる。
GB350 Cは、ホンダらしい、実に優等生的なマシンである。スタイルはクラシカル、かつノスタルジックなブリティッシュテイスト。視界が広いニュートラルなライディングポジションには全くストレスがなく、今回の試乗中も、このままずっと走り続けたくなるような衝動に駆られること幾たびか。「シンプルに勝るものはない」ということなのだろう。バイク本来の魅力は決して絶対性能では語れない。
1918年、米国オレゴン州ポートランドで創業されたウエスコは、百年を超える歴史を持つ世界最高峰のワークブーツメーカーである。メイドインアメリカにこだわり、熟練した職人の手により生み出される質実剛健のウエスコブーツは、多種多様なハードワーカーから絶大な支持を得ている。またウエスコブーツのその高い機能性はバイクライディングギアとしても十分に機能し、感度の高いバイク乗りからも支持を集めている。数多くのモデルをラインナップするウエスコであるが、さらに豊富なカスタムメニューも用意されているので、世界にただ一足のオリジナルブーツを製作することができる点も大きな魅力となっている。
今回取り上げるウエスコブーツはレースアップブーツの代表的モデル「ジョブマスター」。その名の通り、過酷な職業のさまざまな現場で愛用される高い汎用性を誇るワークブーツだ。レースアップブーツ最大の特徴である、足全体が包み込まれるような抜群のホールド感は格別で、バイクライドにも適しており、事実バイク乗りのファンが多いモデルでもある。バイク乗りにとって足がしっかりと守られているという安心感は、何ものにも変え難い。
ここで今回紹介するジョブマスターの仕様を紹介しよう。ハイト(踵から履き口までの高さ)はスタンダードの10インチ。カスタムにより6インチから20インチまで1インチ刻みでオーダーすることができる。ふくらはぎまでしっかりとサポートする20インチのホールド感は特筆すべきものがある。使用されるレザーはオイルをたっぷりと含んだブラック・タイ・ドメインで足に吸い付くようなフィット感が特徴となっている。今回のモデルはすべての部位にブラック・タイ・ドメインを使用しているが、オーダーでツートーン、スリートーンといった組み合わせも可能。またラフアウト(スエード面)を使用すれば、スレやキズを目立たなくすることもできる。
つま先の形状はバブル・トウを採用。つま先が丸く盛り上がった特徴的な形状だ。レースアップブーツの顔であるレーシングパターンはレギュラー・トウをチョイス。この他、つま先近くまでアイレット(ハトメ)を装備したレース・トゥ・トウ、セミレース・トゥ・トウの2パターンが用意されている。またデザイン的なアクセントにもなる泥除けのフォルスタンを装備。アイレット&フックはニッケル、ヘビーステッチは標準的なホワイト、ライトウェイトステッチは日本限定カラーのシューグリーン、シューレースはブラックレザーレースが取り付けられている。
ブーツの性能を左右するソールは定番の#100 Vibramを選択。迫力のルックスに注目が集まりがちであるが、クッション性、耐久性、耐油性に優れた高機能ソールである。特にウェット路面でのグリップ力が抜群なので、雨天時のバイクライドでは強い味方となってくれる。消耗品のソールであるが、ウエスコジャパンでは日本国内での作業によるソール交換に対応いただけるのでご安心を。
クラシカルなブリティッシュテイストが最大の特徴となるGB350 Cに、今回組み合わせたジョブマスターはワークブーツの基本とも言えるスタンダード仕様となっている。1足目のウエスコとしても最適なモデルだ。欠点らしい欠点が見当たらないGB350 Cは、扱いやすいその排気量と車格も含め、今回のジョブマスターと同じく、はじめてのバイクとしてぜひともオススメしたいモデルである。考えてみてほしい。はじめてのバイクにはじめて手に入れたウエスコブーツを履き、はじめてのツーリングに出かける。これは一生忘れられない思い出にきっとなるはずだ。