
2023年3月に日本国内で販売が開始されたロイヤルエンフィールドのネオクラシックモデル「ハンター350」。「ピュア・モーターサイクル」を指針に、走る楽しさを内包したモーターサイクルをリリースするロイヤルエンフィールドのモデルラインナップにおいて、このハンター350の人気は特筆すべきものがある。2022年8月に先行してインド本国で発売されたハンター350は、すでに35万台以上の販売実績を持ち、ロイヤルエンフィールドの長い歴史の中でも記録的な販売台数を誇るモンスターマシンなのだ。
ロイヤルエンフィールドのモデル開発コンセプトには「扱いやすさ」「俊敏さ」「快適性」「軽量」「スタイリッシュ」「モダン」というキーファクターが存在し、ハンター350はこれらファクターを高い次元で融合させたコンセプトリーダーとも言えるモデルとなっている。その心臓部にはクラシック350やメテオ350に搭載されている「Jシリーズ」と呼ばれる排気量349ccの空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブエンジンを、シャシー開発のスペシャリストであるハリス・パフォーマンス社と共同開発した新型フレームに搭載。最高出力14.9kW(20PS)/6,100rpm、最大トルクは27Nm/4,000rpmを発生するこのパワーユニットは、特に低回転域におけるトルク特性が秀逸で、プライマリー・バランサーシャフトの採用により、単気筒特有の不快な振動が低減されている。
前後17インチのアルミキャストホイールに、フォークブーツを備えたクラシカルな正立フォーク、リアはスタンダードなツインショックで、前後ブレーキにはABSを装備。その他、ライディングモードやトラクションコントロールなどの電子制御は搭載されておらず、極めてシンプルな造りとなっている。シート高はこのカテゴリーではごく平均的な790mmなのだが、シートの股に当たる部分が絞り込まれているので数値以上に足つきはよい印象だ。
エンジンを始動し走り出すと、前出の通り低回転域から力強いトルクで車両が前へ前へと押し出される。小粒ながらも単気筒エンジン特有のパルシブな鼓動感が乗り手を高揚させる。サウンドがまたいい。とても350ccとは思えない弾けるような小気味良い音色に昂り、ついついスロットルにも力が入る。この辺りのセッティングには開発サイドの並々ならぬこだわりが見て取れる。決して絶対スピードでは語れない、レシプロエンジンの得も言われぬ魅力。「やっぱりバイクは楽しいなぁ……」と、思わずヘルメットの中で呟きたくなるような心を掻き立てる乗り味である。
過不足なく仕事をこなす前後サスペンションに、エンジンのポテンシャルに見合った必要にして十分なブレーキ、アップライトなポジションは街乗りからロングツーリングまで幅広く対応する操作性の高いものだ。ハンター350は、決して突出した個性が与えられた刺激的なマシンではないが、豊かなバイクライフをともに実現する等身大の相棒にもなり得るはずだ。ハンター350をひと言で表現するなら「すべてが手の内にあるバイク」といったところだろう。
感度の高いバイク乗りから絶大な支持を得ている世界最高峰のワークブーツメーカー「WESCO(ウエスコ)」。1918年、オレゴン州ポートランドで創業されたウエスコは100年を超える歴史を誇るアメリカでも数少ないレジェンドブランドである。熟練した職人によりハンドメイドで製作されるウエスコブーツは、本国アメリカでは様々なハードワークの現場で愛用されており、そのワークブーツとしての高い機能性がバイクギアとしての信頼性に直結していると言える。数多くのモデルラインナップを有するウエスコだが、さらに豊富なカスタムメニューも用意されていることもあり、それぞれの趣味趣向や用途に応じた理想の一足を手に入れることができる。
今回紹介するモデルは、レースアップブーツの定番である「JOBMASTER(ジョブマスター)」で、その最大の特徴は、靴紐を締め上げることにより、足全体からくるぶし、足首、ブーツの高さによってはふくらはぎに至るまで、吸い付くようなフィット感を得られる点だ。バイクライドにおいてもこのフィット感は大きな利点となり、バイクの操作性アップはもちろんのこと、足元が安定することによりバイクの取り回しや停車時の足つき性にも大きく貢献する。
ここで簡単に、今回取り上げるジョブマスターのカスタムメニューについて紹介させていただこう。使用されるレザーは赤みを帯びたブランンのレッドウッドレザー。その厚みは7オンスで、ウエスコがラインナップする他のレザーに比べても非常に耐久性が高い。履きはじめは若干硬く感じることもあるが、足に馴染んでくれば最高のフィット感とプロテクション効果を発揮してくれる。ハイト(踵から履き口までの高さ)はスタンダードの10インチ。靴紐は日本限定となるブラウンのナイロンレースを使用している。
ソールは1ピース構造のトラクションソールを装着。高いクッション性によりスニーカー感覚で履くことができるカジュアルなソールである。実はこのショブマスターはスタンダードモデルとして踵の高い定番ソールの#100 VIBRAMが取り付けられていたのだが、ソール交換により、トラクションソールへの張替えが行われている。踵の高さが違うため、そのままでは同じ木型を使うことができないのだが、ミッドソールにハーフスリップを装着することで踵の低いトラクションソールへの張替えも可能となる。
レーシングパターンは、つま先近くまでアイレットが設置されたLace-To-Toeを採用。この他、Semi Lace-To-Toe、Regular Toeの2パターンが用意されており、それらのチョイス次第でブーツの表情をガラリと変えることもできる。デザイン的なアクセントにもなる泥除けのフォルスタンに、ステッチはスタンダードのホワイト&ブラウンを選択。アイレットはレザーカラーに合わせてウエスコジャパン限定のブラウンが装着されている。
1ピース構造のトラクションソールに張り替えたことで、ステップに足を置く位置の自由度が増し、ライディングの幅を広げることができる。踵のあるソールの場合は、どうしても足を置く位置が踵の前に固定されがちになるので、シフト操作のし易さなど、若干の不自由さを感じてしまうこともある。慣れてしまえば、どうということはないのだが、気になる人にとってはちょっとした不満に繋がることもあるだろう。等身大の相棒として、気負いなく付き合うことができるハンター350に、このトラクションソールはベストな選択と言える。自らのライフスタイルにマッチしたカスタムブーツは、ハンター350と同じく人生の「相棒」という存在にもなり得るはずだ。