本場アメリカのトレンドと「金物の街」で培った金属加工技術を融合し、至極のカスタムを生み出すダイナオートインダストリーズ

掲載日/2023年11月30日
取材協力/DYNA Auto Industries
取材・文/守田二草、写真/伊勢悟
構成/バイクブロス・マガジンズ
兵庫県三木市を拠点に活躍する「DYNA Auto Industries(ダイナオートインダストリーズ)」は、ワンオフパーツの製作から、フルオーダーメイドのカスタムマシン製作まで手がける人気カスタムショップ。巧みな金属加工技術とクルマやバイクに関する豊富な知識と経験で、旧車から新型車両までオーナーが理想とするカスタムを提案する。

伝統技術を生かしてワンオフパーツから
フルカスタムまで手がける最強のふたり

古来より鍛冶技術が発展し、全国屈指の「金物の街」といわれる兵庫県三木市にファクトリーを構える「DYNA Auto Industries」。金属加工の伝統技術を生かし、二輪、四輪に関するワンオフパーツ製作からフルオーダーカスタムの製作まで幅広く手がけるプロショップだ。

製作を手掛けているのは、代表の松田敏聖さんと従兄弟の寺根英樹さん。2人とも幼い頃からの付き合いでクルマ&バイク好きで、プライベートのカスタムビルダーとして活動していたことが、現在のショップの前身になっているという。そこで、広報や営業を担当している寺根さんにお話を伺った。

「もともと松田の実家が鉄工所だったんです。主に建築関連の仕事をしていました。クルマやバイクが好きで自分でイジるようになり、昼間は建築の仕事をして夜はその工場でバイクを作っていました。その姿を見て影響を受けたのが10代の頃の私だったんです(笑)」

松田さんの6歳年下だった寺根さん。アメリカンカルチャー好きという共通項もあり、趣味のバイク仲間として関わるようになっていったという。その後、寺根さんは車の輸入販売を手がける会社に就職。お互いに働きながら趣味で、まわりのバイク仲間のカスタムを手がけるうちに口コミで広がり、カスタムの依頼が増えていった。

「自分たちで車両を用意してフルカスタムを作ってショーに出品すると、お客様が買ってくださるようになりました。2005年頃から本格的になり始めて、2年後に独立することにしました」

コンセプトバイクを製作し、「ヨコハマホットロッドカスタムショー」や「ニューオーダーチョッパーショー」などに出展すると注目を集め、カスタムバイクの専門誌などにも作品が掲載され、瞬く間に日本屈指のカスタムショップとして知られるようになった。

「飾るだけのショーバイクは作りません。きちんと車検を受けて日本の公道で走れることがこだわりです。最近はフルカスタムの依頼が増えて、自社の車両でコンセプトバイクを作ることができていませんが、おまかせでショーバイクを作って欲しいというオーダーもいただけるようになりました」

松田さんの巧みな金属加工技術に加え、寺根さんが輸入車業界で培ったメカニカルな知識や公認車検を取得するための法的な書類申請手続きに関する知見が合わさり、公道を走れるショークラスのカスタムバイクを実現可能にしている。

作品の製作に取り組む寺根英樹さん。フレームやシャシーの設計・制作・加工はもちろん、タンク、フェンダー、シートカウル、パニアケースなどほぼすべての外装を金属加工、FRP加工問わず、ワンオフ製作している。

代表の松田敏聖さんの実家はもともと鉄工所で、幼い頃から培った伝統の金属加工技術を生かして、バイクのカスタムに落とし込んでいる。

アメリカ最先端のカスタムシーンを
独自のセンスと技術で作品に昇華

鉄骨建築、溶接金物、設計施工を行っていたことがバックボーンとなっているダイナオート インダストリーズは、現在でもクルマ、バイクをはじめ、建築に関することまで幅広く手がけている。

「カスタムのジャンルにもとらわれず、さまざまなスタイルに柔軟に対応しています。得意分野はドライブトレインを変更してのワイドタイヤ加工や、旧車のチョッパー製作、メンテやレストアです。新しいハーレーのカスタムシーンではバガースタイルが流行しているので、その要点も押さえています」

ちなみに「バガー(Bagger)」とはサイドバッグを装備した大型アメリカンクルーザーモデルをベースにしたカスタムスタイルのこと。フロントの大径ホイールや流動的な外装のフォルムが生み出す迫力が特徴で、アメリカをはじめ世界中に多くの愛好家が存在している。

「大口径のホイールを装着してもきちんと走るように車両を作るため、大幅な金属加工が必要となり、高い技術が求められます。本場のアメリカではさまざまなバガーカスタムが出てきているので、それらにも柔軟に対応しています」

2014年から本場のアメリカへ通い、現地企業と直接取引を開始。付き合いも今年で10年になり、コロナ禍でネット上が多くなったが直接取引をし続けている。こうしてリアルタイムにアメリカ最先端のバガーシーンを取り入れることができるが、日本人としての感覚も大切にしているという。

「本場だからといってアメリカのスタイルをそのままマネしても、日本では受け入れられないんです。日本人の感覚に合ったオリジナリティがないとダメなんです」

日本の公道を走れるのはもちろんのこと、派手さや迫力ばかりでなく、バランスや繊細さ、流麗さを追求。モノづくりの伝統を受け継いだ技術とセンスが造形の美しさに反映されている。

また、「カスタムしてみたいけれど、よくわからない……」という人のためにカスタムのフォーマット化も検討。ファットタイヤカスタムプラン、ロングフォークカスタムプランなど、わかりやすくすることでもっと楽しんでほしいという。

「お客様には『ここに来ればなんでもできる』からと。クルマやバイクだけではなく、建築に関する依頼もあります。バイクガレージの建設など、やってみたいことをなんでも相談してください!」

オーナーが言語化しにくい要望でも、プロによる確かな語術力とセンスがあれば、理想のカスタムスタイルを実現することができるのだ。

ハーレーダビッドソンの2016年式ストリートグライドをベースにバガースタイルにフルカスタム。本場アメリカのトレンドを取り入れつつ、ほぼオリジナルパーツでスタイリングしている。

ストレッチ加工されたタンクからリアの流れるようなフォルムもバガースタイルの特徴。左右のパニアケースと深いリアフェンダーのデザイン製作もワンオフで製作されている。

フロントにアメリカのメタルスポーツ製34インチホイールをセット。大径ホイールを装着するためにフレームのネック部分を加工。スタイリッシュにまとめながら迫力あるフロントビューを生み出している。メタルスポーツ社のホイール装着モデル車両として日本初で採用されている。

流線型のフォルムを生み出すストレッチタンクは自作。フレームが加工されて長くなっているので、タンクのトンネルを深く設定してロー&ロングのスタイルを演出。さらにカスタムペイントで流麗さを強調している。

ツインカムエンジンのシリンダーをブラックのリンクル塗装。フィンのエッジに切削加工を施し、ダイヤモンドをちりばめたような輝きを演出。さらにチンスポイラーとエンジンガードが重厚感をプラス。自社工場で加工できるので、フルオーダーカスタムの車両は細部まで作り込んでいるという。

ワンオフ製作した外装にはロックフォード・フォスゲート製のサウンドシステムを搭載。フロントカウル内に2スピーカー、リアのパニアケースには4スピーカーを配置し、スピーカー毎にアンプも搭載。極上の重低音サウンドが楽しめる。

超重量級ボディの取り回しに役立つマンバ製バックギアを装着。リバースをONにするとクラッチとブレーキの操作で簡単にバックさせることができる。オフセットレバーは自社で製作し、マフラーの取り回しに影響されないように加工している。

代表の松田さんの影響で18歳からバイクに乗りはじめ、自分でカスタムするようになったという寺根さん。接客営業から広報、製作も金属加工や板金など全般を担っている。

シート製作中の松田さん。フレームワークから外装、シートなどトータルでカスタムメイドが可能だ。グループ会社の松田産業では鉄骨建築、溶接金物、設計施工を手がけている。

バガースタイルの特徴といえる大径アルミホイールも30インチまでなら自社でデザインから製作。伝統の金属加工技術から生み出されるカスタム最新鋭のホイールには定評がある。

2014年からさまざまな有名ホイールブランドに金属資材を卸しているアメリカ現地の資材メーカーと直接取引を開始。本場の高品質素材を取り入れつつ、日本の公道で走行できるカスタム製作をおこなっている。

Harley-Davidson34inchBAGGERの製作の様子を動画で見る

INFORMATION

住所/兵庫県三木市志染町吉田1112
電話/0794-60-4873
営業時間/12:00-19:00
定休/日曜

DYNA Auto Industries