フルモデルチェンジを遂げたKTM EXCシリーズ、2ストロークモデルにはTBIを採用

掲載日/2023年11月27日
取材協力/KTM JAPAN
写真、文/伊井覚
構成/バイクブロス・マガジンズ
KTMのエンデューロモデルが今年、フルモデルチェンジを遂げた。2ストロークがTBIインジェクションを新採用しただけでなく、4ストロークもエンジンを刷新しており、フレームやサスペンションと相まって完成度の高い仕上がりを見せている。

エンジン、フレーム、サスペンション
全てが新しくなったEXC

KTMのEXCシリーズは欧州を中心に開催されているエンデューロ世界選手権(エンデューロGP)をメインターゲットとしており、日本でもエンデューロやクロスカントリーレースでの使用に適したモデルになっている。

しかしエンデューロGPは一般公道も使用するオープン競技となっており、競技に参加するにはナンバーの取得が必須。そのため日本に入ってくる4ストロークモデルと250cc未満の2ストロークモデルはナンバーを取得することもできる。国産のナンバー付きモデルに比べて軽量で扱いやすいため、レースだけでなく林道ツーリングに用いることもできるのだ。国産のナンバー付きモデルに比べて軽量で扱いやすいため、レースだけでなく林道ツーリングにも用いられているのだ。

昨年はモトクロスモデルであるSXシリーズがフルモデルチェンジを果たしたKTMだったが、今年はエンデューロモデルEXCシリーズがその後を追うように進化を遂げた。

エンジン

4ストロークの250EXC-Fはボア×ストロークを従来の78mm×52.3mmから81mm×48.5mmとし、旧モデルからショートストローク化。圧縮比を13.8:1から14.4:1に高めている。

350EXC-Fでも250ccエンジンをベースに排気量を拡大しており、シリンダーヘッドを再設計。不要となったハーフムーンバルブカバーガスケットを廃止している。500EXC-Fではサイドバランサーシャフトを最適化し振動を軽減、バルブカバーはデザインを変更し、シリンダーヘッドとの接続を2本のボルトで行うことでサービス性を向上させた。

また、2ストロークモデルではこれまで採用していたインジェクションシステムTPI(トランスファー・ポート・インジェクション)を廃止し、TBI(スロットル・ボディ・インジェクション)に変更。スロットルフラップの前後に2つのインジェクターを配置し、排気バルブの動きを電子制御で緻密にコントロールすることにより、限りなく均一に混合気を燃焼室に送り込めるようになっている。

150EXCに関してはキックスターターを廃止、セルスターターのみとなり軽量化を実現している。

4ストローク、2ストローク問わず、全モデル共通でエンジン搭載角度を2度後方に傾斜させ、スプロケットの位置を3mm低くすることでアンチスクワット性能を向上させている。

フレーム

フレームはステアリングヘッドの接続部を鍛造とし、ステアリングヘッドやショックマウントなど高負荷な部分はフレームの厚みを増やして強化。また、メインチューブとショックマウントの間にブリッジを設けることで、リアショックから伝わる衝撃を緩和している。

剛性は縦方向を+4%、横方向を+22%、ねじれを+33%、垂直方向を+20%と全体的に向上。また、サブフレームはポリアミドとアルミニウムのコンポジットとなっており、内部にOCUなどの電子部品を格納している。

スイングアームもフレーム同様、全ての方向に対して剛性をアップ。それに合わせてアクスルシャフト径を22mmに変更。さらに旧モデルよりも2%軽量化しており、重量は3.5kg。チェーンガードを一体型としている。

フレームのモデルチェンジに合わせてフットペグマウントの装着位置を9mm内側にシフト。フットペグ自体のサイズを長さ7mm、幅6mm拡大し、逆に厚みを6mm薄くしている。これによって深い轍に入った時などにフットペグが引っかかり辛くなり、スタンディング時のコントロール性を向上させている。

サスペンション

オフロードバイクのキモとも言えるサスペンションも大きく変更されている。フロントフォークはこれまでオープンカートリッジのWP XPLORだったものが、クローズドカートリッジのWP XACTに変更された。全長は12mm延長の940mmとなり、新型のミッドバルブピストンを採用し、減衰特性を最適化。

セッティングについては全て工具不要で行うことができる。左右それぞれ上側にコンプレッション、下側にリバウンドの調整機構を備えている。

リアショックはリンクレスのXPLOR PDS SHOCK。全長は旧モデルから12.3mm短縮されて402.7mm。新型メインピストンを採用し、380gの軽量化とフローの最適化を果たしている。低速・高速のコンプレッション、リバウンドはハンドアジャスター付き、さらにプリロードの調整が可能だ。

ライディングインプレッション

KTMのEXCシリーズは乗るたびに驚かされるのだが、今回もため息が出るほど素晴らしい乗り味だった。試乗したのは長野県ワイルドクロスパークGAIAで、モトクロスコースとエンデューロコースを擁する複合コースだ。

エンデューロモデルでありながらモトクロスコースで高速コーナーやジャンプを楽々こなせるエンジン。それをしっかり支えるシャーシとサスペンション。もちろんエンデューロコース内のウッズやヒルクライムは、それこそEXCの主戦場だ。

個人的に一番良かったのは、TBIになった2ストローク250ccの250EXCだ。TPIも年々進化を続けており、だいぶキャブレターに近いフィーリングになってきていたのだが、TBIはもう最初から何も言うことがなかった。低回転から高回転まで、どこで開けてもしっかりパワーがついてくる。それでいて出力特性がマイルドなので、初心者でも開けやすい。

もちろんパワーバンドに入れれば、2ストローク250ccなりの暴力的なまでのパワーが得られるのだが、ちゃんと緩やかに段階があるから安心してスロットルを開けることができる。

また、150EXCは旧モデルよりも高回転の伸びが増していたのが印象的だった。旧モデルならレブに当たってしまう場面でもしっかり加速し、まるでモトクロッサーの150SXかのような感覚で高回転域を楽しむことができた。それでいて低回転でノロノロ走ってもエンストしないし、軽量なため250EXCよりもライン取りが自由にでき、ファンライドだけなら150EXCが最強じゃないかと思ったくらいだ。

4ストロークで試乗できたのは250EXC-Fと、そのSIXDAYSモデルだけだったが、こちらは2ストロークモデルに比べて重心の高さに戸惑ったものの、トラクションコントロールがよく効いているおかげでスリッパリーな路面でのタイトターンが明らかにスムーズで、優位性があると感じた。また、SIXDAYSモデルにはクイックシフターが標準装備(250EXC-Fではオプション)されており、2速からのシフトアップをクラッチレスで行うことができる。

どのモデルを選ぶべきかは用途や好みによって変わってくるだろうが、レースでもツーリングでも、どのモデルを選んでも後悔しないだろうことは明白だ。

KTM
250EXC
¥1,352,000(税込)
エンジン型式:水冷2ストローク単気筒
総排気量:249cc
始動方式:セルスターター式
変速機形式:6速
車両重量:104.6kg(半乾燥)
燃料供給方式:Keihin製EFIスロットルボディΦ39mm
サスペンション前:WP製XACT 48倒立フォーク
サスペンション後:WP製XPLOR PDSモノショック
タイヤサイズ前・後:90/90-21・140/80-18

KTM
150EXC
¥1,225,000(税込)
エンジン型式:水冷2ストローク単気筒
総排気量:143.99cc
始動方式:セルスターター式
変速機形式:6速
車両重量:97.8kg(半乾燥)
燃料供給方式:Keihin製EFIスロットルボディΦ39mm
サスペンション前:WP製XACT 48倒立フォーク
サスペンション後:WP製XPLOR PDSモノショック
タイヤサイズ前・後:90/90-21・140/80-18

KTM
250EXC-F
¥1,430,000(税込)
エンジン型式:水冷4ストロークDOHC単気筒
総排気量:249.92cc
始動方式:セルスターター式
変速機形式:6速
車両重量:106.2kg(半乾燥)
燃料供給方式:Keihin製EFIスロットルボディΦ42mm
サスペンション前:WP製XACT 48倒立フォーク
サスペンション後:WP製XPLOR PDSモノショック
タイヤサイズ前・後:90/90-21・140/80-18

KTM
250EXC-F SIXDAYS
¥1,570,000(税込)
エンジン型式:水冷4ストロークDOHC単気筒
総排気量:249.92cc
始動方式:セルスターター式
変速機形式:6速
車両重量:106.5kg(半乾燥)
燃料供給方式:Keihin製EFIスロットルボディΦ42mm
サスペンション前:WP製XACT 48倒立フォーク
サスペンション後:WP製XPLOR PDSモノショック
タイヤサイズ前・後:90/90-21・140/80-18